父とギャンブル
父が亡くなった後、ある人から父の秘密のブログの存在を教えてもらいました。
父は表向きにはFacebookを活用していたようでしたが、父を最期まで気にかけ看取ってくださった友人には一切見せなかった一面がそのブログにはありました。
私の知る限り硬く面白みのない文章を書く人で、Facebookの投稿も案の定でしたが、秘密のブログでは“!”を多用したテンション高めの文章でした。(とはいえおもしろくはないのですが)
ブログの内容は主に競馬の予想と結果で、他に宝くじとお年玉付き年賀はがきの結果も。
文面から滲み出る競馬を楽しんでいる様子は私のよく知る父で、そんな父に呆れかえる感覚にも懐かしさを感じました。
亡くなる1年前に自分が学生時代を過ごした街を旅したようで、
初めて一人暮らしをしたアパートやよく通ったお店などを回顧している様子とあわせて、
パチンコ屋の写真と旅先でも競馬を楽しむ様子がありました。
父のギャンブルのルーツはこの街からはじまったのだろうと思いました。
学生時代にお金が足りなくなったと連絡が何度も来て、そのたびに近所の郵便局に駆け込んだものだと祖母が言っていましたが、
祖母が下宿を取って稼いだ仕送りはこのパチンコ屋やこの競馬場で使われていたのか、と何とも言えない気持ちで眺めていました。
“1年で最も好きな日だ!”
この一言で始まる日本ダービーの日のブログは特別高揚感に満ちたもので、現地に行けない日も、以前に訪れた際に1日どのように過ごしたかをなぞるように記しながらダービーの高揚感を自ら追体験しているようでした。
「この人は本当に競馬が好きなんだ」と感じるのと同時に
「この人からは絶対に競馬を奪えない」とも感じました。