便通異常症診療ガイドライン2023(後編)
日内会誌の記事を噛み砕くマガジン。
日内会誌の診療ガイドライン at a glanceシリーズ、10月号は便通異常症。
at a glanceをサンがさらにキュッとする!後半は下痢症にfocus!
慢性下痢症
やはり飲んでいる薬をレビューするのは大事ですよね。
抗菌薬の場合は、単に抗菌薬関連下痢症という場合もあるが、
クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎(CD腸炎)の可能性も考えてトキシンチェックをした方がいい。
この薬で下痢...?!
今回初めて知ったのだが、
”オルメサルタン 下痢”で検索してみると、
日内会誌の症例報告が落ちていたので、興味があれば読んでみてほしい。
この症例では、
下痢が始まる1年半前にオルメサルタン開始
体重減少を伴うような重症水様下痢
上部消化管内視鏡検査→小腸絨毛の萎縮あり
セリアック病のような臨床像だが、グルテンフリーで改善しない
中止したその日のうちから劇的な改善を認めた
ということらしい。
考察部分も、olmesartan associated enteropathyが端的にまとまっており、とても良い症例報告です!
研修医時代の思い出 Whipple病
サンは、研修医2年目の秋くらいに、ウィップル病の患者さんを担当したことがある。
市外から紹介されてきた、主訴 慢性下痢症の患者さん。
病歴聴取をしたとき「サンドイッチを食べても下痢するんです」って言っていたのを覚えている。
上部消化管内視鏡検査をして、十二指腸の絨毛萎縮(白っぽくなってた)があって、ダブルバルーン小腸内視鏡検査をした。
いやぁー…ダブルバルーン内視鏡の介助に入ったのだが、きつかったなぁ…。
同期の女医2人は内視鏡検査をやるのがすごく楽しかったらしくて、消化器内科志望になっていったのだけど、サンはどうしても内視鏡苦手だった…。
中心静脈栄養をしながら、抗菌薬治療(セフトリアキソン点滴 2週間→ST合剤内服 1年!)を開始。
少しずつ体重が増えていって、食事もできるようになって、ひとまず退院するところまで見届けられてよかったなぁ。
稀な病気だからもう二度と出会えないかもしれない。
でも、treatableな病気なので、絶対見逃してはいけない!
Whipple病の症例報告が落ちていたので、興味があればこちらも読んでみてほしい。
治療
第一に、食事指導と生活習慣の改善。そりゃそうだよね。
食事起因性なら絶対。
牛乳でお腹下すなぁ…は、もしかしたら、患者さん自身が自然と気づいているかもしれないが、カフェインがまさか下痢の原因だなんて!はアリエル。
最近はガムより、グミ市場が拡大しているっていうじゃないですか。
サンもグミ大好き(特にピュレグミ)
無心に食べちゃう。
ソルビトール摂取過多に注意です。
FODMAP
下痢に低FODMAP食が効くらしい。
FODMAPとは、
F:fermentable 発酵性の
O:oligosaccharides オリゴ糖
D:disaccharides 二糖類
M:monosaccharides 単糖類
And
P:polyols ポリオール(糖アルコール)
の頭文字をとったもの。
勧められる、低FODMAP食がこちら
避けるべき、高FODMAP食がこちら
次に、プロバイオティクスと止瀉剤
プロバイオティクスも止瀉剤も、
推奨の強さ:推奨なし
エビデンスレベル:C
である。
みんな整腸剤はどれをよく使ってる?
サンは、ミヤBM(no COI)
今の所、どう使い分けるべきかというエビデンスはない。
止瀉剤としてよく使われるのはロペラミド。
下痢型過敏性腸症候群にはコレスチミドが有効だが…
終末回腸で吸収された胆汁酸は、肝細胞における胆汁酸合成を抑制する。
下痢型過敏性腸症候群は、
この負のフィードバックが障害されている
→腸内の胆汁酸濃度⤴️
→腸管運動亢進
→慢性下痢
という病態なので、便中胆汁酸排出薬が有効というわけだ。
便中胆汁酸排出薬が何かというと、
コレスチミド(コレバイン®)
残念ながら、IBSには適応がなく、高コレステロール血症の薬だ。
脂質異常症に対してはスタチンが1st choiceだから、それでもまだコントロール不良で機能性下痢症や下痢型IBSを合併してるなら、コレスチミドを出してみるのもいいかぁ…?(ピンポイントすぎる)
IBSに対するコレスチミドについてはこちらの記事にも書かれているのでぜひ読んでみてね。