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エアモビリティを新たなスタンダードへ!京急電鉄とAirXが資本提携で見据える未来の交通網とは

陸の交通の要衝を担う京急電鉄と、ヘリコプターでの遊覧飛行や空の交通網を開拓するAirX、2つの企業がタッグを組んでエアモビリティに新たな時代を作ろうとしています。京急電鉄が主催する第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMでの出会いを始まりとして、現在では資本提携も結ぶほどに関係を強めています。第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMを通じて陸と空という異なる分野に強みを持つ2社は、どのようにして未来の交通網のビジョンを共有するに至ったのでしょうか。

京急電鉄からはKEIKYU ACCELERATOR PROGRAM担当の野元さん、AirXからは代表取締役の手塚さんにそれぞれインタビューしました。

京急電鉄の第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMがきっかけ

——— まずはAirXの手塚さんにお訊きします。手塚さんが起業するまでのことを教えていただけますか。

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手塚さん:私は学生の頃から交通分野のオペレーションズリサーチに興味がありました。学生時代に足の怪我で移動の不自由さを感じる時期もあり、自分の中で輸送分野への関心が強くなったのです。

しかしすぐそういう分野に入ったわけではなく、学生時代から参加していたマーケティングソフトウェア開発を行うベンチャー企業で、ウェブにおけるプラットフォーム作りやデジタルマーケティングなどを行っていました。
一方で事業家としては、ライフスタイルを変えるため、特に移動領域に力を入れていく中で空の移動という可能性を感じるようになったのです。

そして当時勤めていた会社で、仕事に一つの区切りがついたタイミングで創業を思い立ちました。創業した2015年当時は、空の移動手段としてヘリコプターの予約が自動化されていませんでしたから、私の経験を生かして集客や飛行時間の拡大、将来的には自動化も視野に入るという期待感を持っていたのです。

そうした中で、サムライインキュベートに声を掛けて頂いた第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMに参加して、三浦半島での共同プログラムに取り組ませてもらいました。現在でも三浦COCOONに参画し、地域活性化を共に目指しています。

——— 京急電鉄とAirXは第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMを通じて知り合ったそうですが、それぞれどのような役割や取り組みをされていたのでしょうか。

野元さん:私が担当していたのは出資にかかる書類の作成や手続き、社内向けの会議資料の作成などです。他にもAirXとの事業内容の取りまとめや事業プランの作成も行いました。

第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMでは三浦半島でのエアモビリティの活用と地域活性化を目指し、ヘリコプターでの遊覧飛行や実証実験、ヘリ移動を含めたリゾートプランの販売なども共同で取り組みました。

手塚さん:第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMに参加するきっかけをくれたのは、サムライインキュベートからの声掛けのおかげでした。
私達は三浦半島を空から楽しむプロジェクトを提案し、中長期的な目線でも京急電鉄と取り組めればと思ってました。
将来的にはeVTOL(空飛ぶクルマ)や鉄道、船というモビリティとも連携しながら三浦半島一帯のポートを増やし、都心や横浜とのアクセスも計画しています。

協業によってお互いに見え始めたビジョンとは

——— AirXはeVTOLをメインに今後活躍をお考えだそうですが、京急電鉄はAirXさんとの協業によってどういうビジョンを見据えていたのでしょうか。

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野元さん:京急電鉄ではeVTOLの活用を視野に入れており、AirXをパートナーとした中長期的な計画を考えています。第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMを通してAirXはレスポンスが早く、対応も誠実だとわかった点は大きいです。協業という形から資本提携という関係にステップアップしたのも、そうしたAirXへの信頼があり、共同で事業検討・推進をしていくビジョンが見えたからです。AirXは良い意味でスタートアップらしくなくて、長期的にパートナーを組んでいける相手だとわかるきっかけでした。

——— AirXとしてはプロジェクトから今に至るまで、京急電鉄との共同事業はどのような経験になったのでしょうか。

手塚さん:第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMでは京急電鉄に発着地の設定をかなり助けてもらい、その結果発着地が決定したことでその後も多くの応募がありました。

1つの成功モデルを体感することができ、さらには他の企業主導のプロジェクトや再開発に向けての話し合いにも参加させてもらっています。
おかげさまで中長期的にエアモビリティが伸びていく未来を描くことが出来ました。

京急電鉄の三浦半島への愛の強さやスタッフさんの推進力にも助けられて、自治体の方とスムーズに進めることが出来ました。

AirXが想定するエアモビリティのスタンダード化とオペレーションの課題

——— 今回の資金調達をきっかけにAirXは京急電鉄と資本提携で強い関係を結びましたが、投資家への資金調達回りでAirXが設定したテーマはありますか。

手塚さん:明確なテーマとは違うかもしれませんが見たい未来、エリアを重点的に捉えて、いかにエアモビリティを実装するか、そしてライフスタイルにも組み込まれていくかという点を中長期的に作り上げていく資本提携と体制づくりを希望していました。

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——— その点で京急電鉄との資本提携はAirXにどのような未来を描くきっかけになるでしょうか。

手塚さん:短期的には収益化できるエリアの発着地の増加で、企業としての規模が大きくなっている手応えを感じています。
今後は三浦半島にもっと拠点を設けて、事業の規模を大きくできると期待しています。

中長期的には再開発を通して、京急沿線の主要駅でも発着できるようになれば、そこを起点に沿線以外のエリアにもアクセスが広がるのではないかと考えているところです。

——— 現状でAirXのようなヘリコプターのチャーターという事業を展開している他社はあるのでしょうか。

手塚さん:海外ではエアモビリティの活用やオペレーション開発を行っている企業もありますが、国内では当社しかありません。
各旅行会社や航空会社が単独で部分的に行っているところもあるので、当社とパートナーシップを結びつつあるという段階です。

0からのスタートではすぐに飛び込める分野ではないため、そこが大きな参入障壁になっていると感じます。
当社のネットワークと利用の簡単さを武器にして、国内で多くのフライトを創出していきたいと考えているところです。

——— 将来的には空の旅の第一選択にAirXが出てくる未来が訪れそうですね。AirXとしては新しい移動手段やスタンダード化を実現するにあたって、どういうポジションを目指しているのでしょうか。

手塚さん:短期的には今言われたように第一選択として名前が出てくるようになりたいと思っています。中長期的には各拠点にスカイポートを設定し、運航頻度や密度を増やしていくことを想定しています。

日本の鉄道は高密度で運行していても滞りなく動いているので、空の領域でも同じようにオペレーションを回していけばフライト数を確保できるはずです。ただ、スタンダード化するにはAirXをユーザーに最も使ってもらえるプラットフォームにして、ボリュームを広げていく必要があります。

必要なのは2つのポイントで、1つは新しく航空事業に参入したいと考える企業やエリアが出てきた時、AirX側で空の交通網を利用しやすいようにサービス提供をすることです。
もう1つは運航面でヘリコプターやeVTOLのオペレーションを熟知した人材が限られるので、人力による部分を減らしつつ、運航管理やオペレーションの品質を確保することです。

京急電鉄が資本提携を選んだ背景とAirXとのパートナーシップで描く構想

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——— 京急電鉄がAirXと資本提携を結ぶにあたって、ターニングポイントになった出来事はありますか。

野元さん:第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMという大きなプログラムから始まったことで、役員の理解があったことが大きかったと思います。
出資の基準は長期的な事業化が見込めるかという点と、企業全体へのシナジーがあるかという点でした。その点においてAirXはポートの状況やエリア毎に当社にはどういったシナジーや収益が見込めるかを細かく想定したうえで、中長期的な事業化の話をすることができました。

当社としても将来的なエアモビリティ事業への参入を想定していたため、出資にあたっては協業していて社風や誠実性などの内面もわかるAirXがパートナーとして適していると判断したのです。

——— 今やドローンでの配達やプラントなどの危険エリアへの保守点検、eVTOLなど空のエリアは人気ですが、京急電鉄としても今後は空のエリアを開拓していく予定ですか。

野元さん:三浦半島だけでなく、当社が成長トライアングルと位置付けている品川、羽田、横浜エリアでも、将来的にはeVTOLを活用できればという思いがあります。ただその前にエアモビリティの知見等を蓄積するためにも、ヘリポートの設置・運営等を行っていきたいと考えているため、AirXさんとは今後も良い関係で協力を続けていきたいと考えているところです。

京急電鉄とAirX双方にとって大きな転機になった

——— 最後に京急電鉄からみたAirXの印象と社内で重視した部分をお聞かせください。

野元さん:まず第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMでAirXと関わり始めた当初から、AirXは他のスタートアップにはない熱意や紳士さを感じましたし、社内でも評価が高かったです。

資本提携の話が出てきた時は、当社としてもエアモビリティ活用を視野に入れていて、社内でも強固な関係を結ぶべきという意見がありました。
資本をAirXに提供することで、一緒にエアモビリティ事業の未来を作っていければと思います。

——— AirXの熱意や誠実さが響いたということですね。AirXにとって第2回KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMからの京急電鉄との協業、サムライインキュベートの伴走はどのような転機だったのかお聴かせください。

手塚さん:我々のようなスタートアップでは構想こそあっても大手企業の役員の方とお話しする機会はなかなかありませんから、大変貴重な機会になりました。

なにより京急電鉄は大手企業独特のやりづらさを感じることもなく、他愛もない会話もできる良い雰囲気で仕事ができたので、当社のメンバーにとっても良い機会を頂きました。

また声を掛けてもらい、いつもフォローを入れてくださったサムライインキュベートには、本当に助けてもらう場面が多かったです。
当社の弱い部分を補完する形で伴走してもらったので、申し訳ないと思いつつ今でも助けてもらっています。

——— ありがとうございます。サムライインキュベートとしては今後も三位一体でゴールに向けてフォローしていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。


サムライインキュベートでは、日本のイノベーションをスタートアップと共に切り拓いてきた実績をもとに、大手企業や自治体・行政が主導するイノベーション支援事業を提供しています。単なるコンサルティングやアドバイスに止まらず、ビジョンを共有し変革に向けて共に挑戦と試行錯誤して、成果が出るまで伴走します。興味のある方はこちらへお問い合わせください。