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安く楽しめる世界とお金で見える景色

 私は情報を発信する上で気を付けていることがある。それは誰でも楽しめるものとお金がないと出来ないことの両方を出すことだ。たいがいこの二つは相反し、どちらかに重きを置いた主張になるが、なるべく偏らないように意識している。

 基本的にお茶の世界はハマればハマるほどお金が必要になる。

 365日、毎日茶畑にてできうる限りの管理をし、春になって霜注意報が出たら夜中に畑を温め、茶摘みになれば数十人の茶摘みさんにとにかく丁寧に摘んでもらい、ミスのない製茶をする品評会のお茶が安いわけはない。急須のカタログを見ると、美術工芸品のような美しい、いろんな茶器から「買ってちょうだい」と言う声が聞こえてくる。それぞれのストーリーを知るとどうしても手に入れたくなるし、一つ買ったら満足するかというと、もちろんそうではない。この世界、お金がいくらあっても足りないというのが普通なのである。確かにお金がないと手に入らない最高級のお茶は平凡な人生を狂わすほどのパワーを持つ。

 そういうと、「お金がないとお茶は楽しめないか?」と感じるかもしれない。いやそれは違う。むしろお金がない方がより楽しさに貪欲になる。安いからとスーパーの特売で買ってきたお茶が死ぬほど不味かった。よくある話だが、このお茶をいかに美味しく淹れられるか、試行錯誤という名のゲームが始まる。熱湯でさっと淹れてみたり、氷水で淹れてみたり、煮たり焼いたりお菓子にしたり、そういう過程で気づく新しい視点がまた楽しくなってくる。お茶を金持ちの道楽にしない。これが私のモットーである。

 ただ、お金がなければ出会えない世界もある。その両方の世界を自由に行き来する、そういう人に私はなりたい。

 

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