反張膝と内反尖足について②
https://nou-reha-sanin.com/rehabilitation-back-knee/
から引用
内反尖足に対して、Tストラップ!
【内反尖足:歩容は立脚期に足底の外側部で接地し、内側部は浮いている】
両側支柱付きAFOで内反足矯正Tストラップをつける
反張膝(Back knee)の原因とリハビリについて
脳梗塞 リハビリ
2022.09.24
脳卒中後の異常歩行として良く見られる症状で、反張膝(Back knee:バックニー)があります。
歩行中に反張膝になることで日常生活に支障が出る方も多くおられるため、リハビリテーション介入においても改善対象になるケースが多いです。
今回は、脳卒中後の反張膝(Back knee)について、原因と対処・リハビリについてご説明していきます。
まずは、原因を知る事から始め、ご自身で解決するためのきっかけにしていきましょう。
目次
反張膝(Back knee)が与える影響
反張膝(Back knee)とは、立位や歩行時に支える時期「立脚期」に膝が過伸展してしまう現象のことをいいます。
脳卒中後では麻痺側の足で良く見られる現象で、麻痺の影響で膝を骨・靭帯性のロックをかけ固定して体重を支える状態となります。
本来は起こらない角度まで膝関節を過剰に伸展させているので、長期的に歩行をすると膝関節への痛みだけでなく、股関節や腰痛など各部位への影響が出ることもあります。
また、バランス低下にもつながり転倒のリスクも高まる症状です。
反張膝が与える影響
膝関節だけでなく、股関節や腰部への痛みの助長
バランス能力の低下(転倒リスク増大)
下肢筋力の低下 など
反張膝(Back knee)とは
反張膝(Back knee)の原因は大きく2つあります。
反張膝の主な原因
足関節機能による下腿前方移動の欠如
ハムストリングス代償による膝関節伸展モーメント
1.足関節機能による下腿前方移動の欠如
反張膝(Back knee)立脚初期〜中期にかけて起こることがほとんどです。(歩行周期について詳しく知りたい方はこちらから)
一般的に、立脚初期〜中期にどのような運動が行われているかというと『踵接地をきっかけに(踵が軸となり)下腿が前方に移動する』です。
一般的な歩行時の立脚初期〜中期にかけての下腿の動き
脳卒中の麻痺の影響で、踵接地をするための前脛骨筋の出力低下、下腿三頭筋の筋緊張異常、足関節可動域制限などが影響し、足底接地以降で起こる下腿の前方移動が起こらず反張膝になります。
反張膝での下腿の動きと原因
2.ハムストリングスの代償による膝関節伸展モーメントの増加
膝関節への影響は、大腿四頭筋(膝の前方の筋肉)とハムストリングス(太ももの後面の筋肉)とのバランスがとても重要になります。
どちらか一方が過剰に活動した場合に、この均衡が崩れ反張膝(Back knee)といった現象が起こるのです。
ハムストによる反張膝になる流れ
麻痺によって大腿四頭筋の筋出力低下とハムストリングスの異常な筋活動が生じる
ハムストリングスの影響で股関節伸展活動の低下が生じる(骨盤の後傾・後退)
膝関節が代償的に過伸展となり反張膝(Back knee)の完成
反張膝(Back knee)に対するリハビリ介入方法について
反張膝(Back knee)への介入方法として、装具療法、ボツリヌス療法、電気刺激療法、筋力増強、反復した歩行練習や立位バランスや荷重練習など様々あります。
反張膝のリハビリ方法
装具療法
ボツリヌス療法
電気刺激療法
筋力訓練
反復した歩行や立位バランス、荷重練習
ボツリヌス療法や電気刺激療法については、クロートゥ(Craw toe)の記事で記載していますのでそちらを参照ください。(目的とする部位は異なるので、概要のみ参照ください)
装具療法
反張膝の原因である、足関節機能を装具で補助し下腿前方移動を促す目的で使用されます。
装具の種類として麻痺の程度にはよるが、AFO(短下肢装具)を使用するケースが多くあります。
また、軽度の麻痺の方で反張膝(Back knee)の方へ弾性バンド型のAFO(短下肢装具)を使用した研究では、弾性バンド型AFOにて背屈角度が上昇し、膝関節の最大伸展角度が減少し、最大屈曲角度が増加したという報告もあります。
引用:Kinematic on Ankle and Knee Joint of Post-Stroke Elderly Patients by Wearing Newly Elastic Band-Type Ankle-Foot Orthosis in Gait
筋力増強訓練
反張膝は膝関節の筋肉単体の影響ではなく、足関節と股関節を動かす筋肉が影響していることをまず理解してください。
リハビリ現場で良く見る、膝の下にタオルを置いて膝を伸ばして押し付ける(パテラセッティング)や座ったまま膝を「1・2・3・4・5」と伸ばす膝伸ばしなどを繰り返せば反張膝が良くなる可能性は少ないです。
もちろん、何千、何万回繰り返せば筋力はつくかもしれませんが、膝関節の大腿四頭筋ばかり鍛えていても、反張膝の原因となっている足関節や股関節も問題を解決しないと意味がありません。
なので、筋力増強訓練で考えると、足関節(前脛骨筋)への電気療法や、股関節伸展筋(お尻の筋肉)を鍛えるためのスクワット横になってできるお尻上げなどを意識的に行う方がまだ有効になる可能性があります。
筋力訓練の注意点
膝伸ばしやパテラセッティングなどは反張膝の直接的なアプローチにはなりにくい
足関節(前脛骨筋)への電気療法、殿筋の筋トレの方が効果は高い可能性あり
反張膝(Back knee)へ ひとりでできるリハビリ方法
反張膝(Back knee)は立脚初期〜中期にかけて起こる症状になり、立脚初期〜中期にかけての体重移動を意識することが非常に大切になります。
これから説明する意識する歩行練習と何も意識せずただ繰り返しているだけの歩行練習では反張膝(Back knee)が改善する可能性も大きく違います。
脳カラリハビリのポイント
『感覚』を意識すること
動作は『ゆっくり』行うこと
立脚初期〜中期にかけての体重移動のコツ
歩行中の反張膝(Back knee)で意識するコツは足裏の体重移動です。
そして、体重移動の手順が重要になります。
手順
立脚初期:踵を感じる
加重応答期:踵から足裏全体へ体重移動を感じる
立脚中期:足裏全体を感じる
1.立脚初期:踵を感じる
立脚期でとても重要な場面は足底接地する場面です。
反張膝(Back knee)は足関節機能の欠如によって下腿が前方移動できないことが原因となっており、下腿が前方に移動するためには、踵を感じるがとても重要になります。
2.荷重応答期:踵から足裏全体へ体重移動を感じる
踵を感じてから重心を前の方向に移動させる時期です。(体重を体の真上まで一直線に乗せるまでのせる)
踵を感じた後、そのまま踵に残ったままになると反張膝(Back knee)が起こってしまいます。
この荷重応答期で大切なポイントは踵から足裏全体へ体重移動を感じることがポイントとなります。
そして、ただ感じるのではなく、上半身(肩ー骨盤)が真っ直ぐな状態で上半身の前方移動に合わせて、足裏の体重移動を感じることが大切です。
この時期は上半身と足裏の体重移動を連動させて感じないといけないのでより慎重にゆっくり動作を行いましょう。
3.立脚中期:足裏全体を感じる
体重を支える時に体が一直線になり重心が一番高くなる時期です。ここでは、足裏全体で安定して感じれることが重要です。
足裏全体については、踵ー母趾球ー小趾球で均等に支えることがポイントになります。
反張膝(Back knee)でお悩みの方は特に立脚初期〜中期にかけての体重移動を意識して立位や歩行練習をゆっくり意識しながら練習していきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
反張膝(Back knee)は脳卒中当事者の方がリハビリで悩まれる一つの現象です。
今行っているリハビリ方法で何ヶ月も何年も変化を感じていない方は、今のリハビリ内容を検討していくことが重要ですし、反張膝はリハビリのやり方次第で変化が出ます。
ひとりで悩んでいる時間がもったいないので、解決したい、良くなりたいという方はお気軽にコメント、お問合せください。
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参考
・国分 貴徳:理学療法における臨床と研究の接点.理学療法学.2015
・Blaimont P, Klein M, et al.: The Function of Hamstrings: A Pathogenic hypothesis of Femoropatellar Osteoarthritis. In: Surgery and Arthroscory of the Knee. Springer-Verlag, Berlin, 1986, pp56‒58
・Kinematic on Ankle and Knee Joint of Post-Stroke Elderly Patients by Wearing Newly Elastic Band-Type Ankle-Foot Orthosis in Gait
プロフィール
脳梗塞リハビリセラピスト
石飛拓朗
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脳梗塞リハビリを専門としています。
当事者の方とのリハビリを通して、当事者の方でしかできない仕事づくりや活躍できる場所を作るため活動しております。
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