本好きではないけれど… 「失敗図鑑」
著者：大野正人
世に聞こえた偉人たち 23人+1組 が、いかに失敗をして、その失敗と向き合ってきたかを面白おかしくまとめた「裏・偉人伝」です。
やたらと教訓めいた編集になっているのが邪魔くさいですが、もともと私のようなオッサンに向けて編集されているわけはありませんから、子どもたちには良い塩梅なのでしょう。
いずれも歴史的な偉人達のエピソードですから、内容的に目新しいことはありません。
ポイントはタイトルの通り、彼らの成し遂げた偉業ではなく、その裏にあった負の部分にスポットを当てているところです。
人は、偉人の功績を称えて尊敬の念を抱くことはあっても、そこに共感はしにくいものです。
一方で、弱さや失敗には親近感を覚えたり、好意度が上がったりすることがあります。
こうした面を伝えることで、偉人と言えど同じ人間なのだと思えることは、子どもたちがその人についてより深く知りたくなるきっかけになることでしょう。
この本で紹介される偉人たちとは別に、狂言回し的な役割で「失敗王」と呼ばれたエジソンが登場するのですが、彼がまたいい味を出しています。
彼は
たとえ、1000回失敗しても、それは「1000回の上手くいかない方法を発明した」だけのことじゃ！
と言い、「もっと失敗せよ」と発破をかけてきます。
（1万回じゃなかったかな、というのはさておいて、）この開き直りは素晴らしいです。
この本は、「失敗を恐れずに、どんどん失敗から学べ」ということをメッセージにしています。
つまり、「失敗の経験を活かして成功せよ」と言うわけです。
「たとえ失敗続きで偉大な成果を残せなかったとしても、あなたの人間的な価値や魅力とは別の話しですよ」という方向ではありません。
メッセージは明確で、読ませる工夫や遊び心に溢れた本でした。
この本が面白くなったのは、著者だけでなく、デザインを担当された方など、スタッフの協力によるところが大きいと思えます。
イラスト：死後くん
AD/デザイン：佐藤亜沙美
本文デザイン：守屋めぐみ
私は本を読むのが苦手なので、こういうデザインは読みやすく感じましたが、内容としては、帯に「10歳から読める」と書いてあるように、まさに子供向けです。
著者の道徳観や教訓めいたメッセージを、偉人の体験に無理やり結び付けて伝えようとしているように感じるところもあり、いい年をしたオヤジがお金を出して買ったのは失敗だったかもしれません。
でも、これも気に入る本と巡り合うための過程とすれば良いのだと、この本が教えてくれています。
Top Photo by Fahrul Azmi