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【障害児教育④】ノーマライゼーションとは

こんにちは、Samoakiです。

「学びのアウトプット」障害児教育編、第4回の今回は「ノーマライゼーション」について解説していきます。

障害について語られる際、よく耳にするこの「ノーマライゼーション」。

「何となくわかるけど、うまく言葉にできない」
「バリアフリーやインクルーシブとの違いがよく分からない」

今回は、そんな方にぜひ読んでいただきたい記事となっています。

前回の記事をまだご覧いただいていない方は、下のリンクからどうぞ。

障害者福祉の基本理念「ノーマライゼーション」とは

ノーマライゼーションとは、障害のある人をノーマルにすることが目的ではなく、障害をともに受容し、彼らにノーマルな生活条件を提供することを目的とする考え方

ノーマライゼーションは、現在の障害者福祉を考える上で、重要な理念となっています。

これを提唱したのがデンマークのバンク・ミケルセン、1950年代のことでした。

彼は、当時、知的障害児が施設で隔離されている状態に疑問を感じ、

「障害がある人も一人の人間。差別するのではなく、障害がない人と同じように生活する権利がある」

と訴えました。

これをきっかけに、デンマークではノーマライゼーションの理念に則った法律が制定され、他のヨーロッパ諸国にもその考えがじわじわと広まっていきます。

そして、1982年に国連が「障害者に関する世界行動計画」を採択し、翌年からの10年間を「国連・障害者の10年」としたことで、ノーマライゼーションが全世界に普及していくことになります。

バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

バリアフリーは障害のある人を対象にした考えであるのに対し、ユニバーサルデザインは、障害の有無は関係なく、全ての人を対象にした考えであると言えます。

ノーマライゼーションという言葉は広まる中で、この理念を実現するための手段として「バリアフリー」という考え方が登場します。

バリアフリーとは、障害者や高齢者が都市空間で安全に生活しやすくするため、物理的な障壁のみならず、社会的、制度的、心理的なすべての障壁を取り除くこと

バリアフリーは、もともとは建築用語として使われていた言葉でした。

しかし、この言葉が広まるにつれ、社会的な障壁や人種差別、性的差別を取り除くという意味でも使われるようになり、いまやハード面だけでなく人々の心理的な面についても使われています。

一方で、「バリアフリー」という言葉自体が障害のある人を特別扱いしており、ノーマライゼーションの理念に反しているのでは?という意見も挙がるようになりました。

そこで登場したのが「ユニバーサルデザイン」という考え方でした。

ユニバーサルデザインとは、年齢や障害の有無、体格、性別、国籍などにかかわらず、できるだけ多くの人にわかりやすく、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインのこと

バリアフリーに加え、ユニバーサルデザインの考え方が取り入れられた施設も最近は増えています。

自動ドアや多機能トイレ、硬貨投入口の広い自動販売機などは、ユニバーサルデザインの代表的なものです。

インクルーシブ教育とは

ノーマライゼーションの理念は、障害児教育の分野にも強く影響を与えました。

その中で生まれた教育理念の一つにインクルージョンという考えがあります。

インクルージョンとは、障害のある子ども、ない子ども、どちらも元々は同じ一つの社会の中に「含まれ」(include)ているため、障害を特別なものではなく、一つの個性として捉えるべきと考えること

現在では、「インクルーシブ教育」「インクルージョン教育」とも呼ばれており、

障害の有無にかかわらず、一緒に同じ場で学ぶことは、障害のある子どもたちだけではなく、障害のない子どもたちにとっても有意義であり、有益であるという立場に立っています。

世界では現在、このインクルーシブ教育の考えが主流となっており、教育政策の中心的課題となっています。

日本でもインクルーシブ教育の影響を受けており、文部科学省では、「インクルーシブ教育システム構築事業」を平成25年から特別支援教育の一環として推進しています。

今日のまとめ

・ノーマライゼーションとは、障害のある人にノーマルな生活条件を提供することを目的とする考え方
バリアフリーとは、障害者や高齢者が安全に生活しやすくするため、物理的、社会的、制度的、心理的な障壁を取り除くこと
ユニバーサルデザインとは、年齢や障害の有無、体格、性別、国籍などにかかわらず、多くの人にわかりやすく、利用可能なデザインのこと
インクルーシブ教育とは、障害の有無にかかわらず、一緒に同じ場で学ぶこと教育のこと

<参考・引用文献>
・井澤信三,小島道生 障害児心理入門[第2版],ミネルヴァ書房,2013年
・内閣府HP「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」
https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/20barrier_html/20html/youkou.html (最終閲覧日:2020年4月28日)
・郡山市HP「ユニバーサルデザインを知る」
https://www.city.koriyama.lg.jp/kurashi/universaldesign/universaldesign/9221.html (最終閲覧日:2020年4月28日)
・文部科学省HP「資料1 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325881.htm (最終閲覧日:2020年4月28日)

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