そもそも「裁判員制度」は無理筋ではなかったか
かつての小泉政権下に鳴り物入りで始まった「裁判員制度」であるが、本当かどうかはともかく、本一件によれば辞退者は7割に達しようと言う。
でしょうね。
法的根拠だとか実際に司法現場においてどう言った問題が有って、とかちゃんとした話をするつもりはない。なぜなら私は法律関係には強くないからであり、その点において誤った知識で書き殴るのは無筋としたものだ。その上で、私が思う「裁判員制度が無理筋な理由」は3つ有る。1つ目。
素人に量刑を決めさせること自体が無理筋。
素人と言うのは法の適用と言うより情で動いてしまうものである。ゆえに凄惨な事件であれば極刑に傾くし、でも生育歴に問題があることがわかればやっぱ無期かな、みたいな情で動く。そして自分の中で線引きを終えて、決着を付けるまでに多大な苦労を背負い、悩みを抱え、しかもそのことは誰にも死ぬまで話せない。これはもう完全に拷問だ。それだけ苦悩した末に下した決断が控訴審や上告審でひっくり返ったら「私達の存在意義とはなんだったのか」と天を仰ぐよりない。
そもそも「人を裁く」と言う行為、人の人生を左右する行為と言うものを、その職能を持たない人間にさせるのは正直酷だ。しかも英米の「陪審制度」と異なり、日本の裁判員制度は量刑まで関わってくる。いくら専門家との合同チームだと言っても、人の心理としては酷な話だと思う。2つ目。
対象となる事件がエグい。
基本的には重大事件が裁判員裁判の対象となっており、言うなればだいたいの事件は死体の1つや2つ存在するタイプの事件である。対象事件見たけど、やだよ俺。以下Wikipediaから引用。
対象事件
1. 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件(法2条1項1号)
2. 法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの(同項2号)
お亡くなりになられてますやん。
しかも「故意の犯罪行為」と来てるから、これはもう業務上過失致死傷とかそういうヤツじゃないわけ。いや業務上過失致死がエグくないと言ってるわけじゃないですよ、場合によっては下手な殺人よりずっとエグいですけど。まぁともかくそういう重大事件の審理に素人を連れて来て、提示される証拠品や写真の検分、場合によっては音声まで聞かされ、被告や証人とも質疑を設けさせられて、負担が小さいわけがないだろうよ、と言う話だ。
実際、裁判員裁判に出廷したことで精神障害を訴えるようになった元裁判員も実際に居られるし、国を相手取って賠償訴訟を起こした方もいる。もちろんその人たちだけがセンシティブだったと言う可能性も否定はできないが、だったらそもそもの問題として裁判員として合議体に参加する用意がある、あるいは参加したいと言う意志のある人間だけにしたほうがまだマシだ。それを平たく言えば成人有権者から適当に抽籤した人で賄うと言うのは、ちょっとそれは乱暴すぎるのではないだろうか。3つ目。
日当が安い。
勝手にくじ引きで選んでおきながら出廷義務が有るから出廷しろ、会社も休めと言って来るくせに日当は激安。アメリカは片道の交通費しか出さないだと? 馬鹿言ってんじゃねぇ、日本の会社は労働時間にカネ払ってんだってこないだ言っただろ。むしろ半年休職しても食って行けて多少遊べるくらいのカネを出してから呼べ。どうだ、無理筋だろう。国の税金をそんなことに使うだなんてと思うだろう。じゃあ言うけどさ。
昔の形でやりゃあ良いじゃん。
それこそ高度プロフェッショナルを地で行く法曹関係の世界、ましてやその中でも検察官・弁護人・裁判官と三職揃い踏みの現場に、のこのこと素人連れて来てさ、エグい写真見せてゲロ吐かせてさ、聞きたくもない悲しい過去も聞かされてさ、挙句の果てに死ぬまでこのことは喋るなよと来たもんだ。やめようよ、もう。無茶だよ、素人目にも明らかに想定された通りの無理筋なんですよぉ、現行の裁判員制度と言うものはぁ!
ああ、ちなみに日当の他に旅費と宿泊費は出るそうです。