各種音ゲーの表現力について
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こんにちは。五月雨です。
突然ですが皆さん、「文字押し」や「振り再現」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
前者は譜面の形で文字などを表現すること、後者はノーツ配置による動きの誘導で振り付けなどを表現することです。
今回とある考えのもとに、現行AC音楽ゲームの「表現力」を評価してみました。何言ってるかわからんという方は記事中の画像で「おもしろい配置◯選」としてお楽しみください。
(記事本文を常態で書いちゃって直すのめんどくさいので区切ります)
評価基準
音楽ゲームは「曲に合わせてリズムを刻む」ゲームなので、曲とタイミング指示の要素(ノート)の2要素があれば成立すると考えられる。しかし、実際のゲームセンターには多種多様な音楽ゲームが存在し、我々は当然それらを異なるゲームとして認識する。今回は各種ゲームのアイデンティティ確立の一助となっているであろう「曲の周辺情報(アーティスト、歌詞、振り付け、MVなど)をゲーム内で表現する力」を以下の三つの指標で評価する。
一次元視覚表現
「色」。ノーツそのものや周辺領域のカラーリングで色を表現する力。
二次元視覚表現
「形」。ノーツの形状やノーツの配置で形を表現する力。
運動表現
「動き」。ノーツ配置によってプレイヤーの動作を表現する力。ゲームコンセプトの再現度もこの指標で評価する(コンセプトの再現に重きをおいたゲームでは上二指標が重視されていないと考えられるので、その補正)。
各機種の評価
beatmaniaIIDX
ノーツの色は白、青、赤、紫、オレンジなど意外とバリエーションがあるものの、配置やノーツ種別に依存していることやノーツスキンの存在も考えるとこれらを用いた表現は重要視されていないと考えられる。
(Innocent Wallsは譜面のアイデアが先にあってタイトルを付けていそう)
キー音を持つ故かノーツ配置は音階に強く影響を受けており、配置による曲の表現も難しい。その点Tatshの楽曲で生み出された(皿付き)全押しやX階段はIIDXでも無理なくできる楽曲表現といえる。
運動の誘導はこれまた無いが、DJシミュレーションゲームという題材のもとサンプラーとスクラッチを操作しているので再現性があるといえるだろう。
SOUND VOLTEX
ノーツの色は白とオレンジしかなくシンプルなものだが、アナログデバイスの赤と青はかなり表現に用いられている。ヒメヒナ曲のパート分けなどが顕著な例である。
また、アナログデバイスは横方向に2点までの図形を描ける。文字から旧Twitterのロゴマークに至るまで自由自在である。いわゆるEXCEEDつまみの実装に伴って一層表現力を増したといえるだろう。
振り付けとは無縁な楽曲がほとんどのこの機種でも、She is my wife すーぱーアイドル☆ミツル子Remixちゃん[VVD]やFollow Tomorrow[MXM]など一部の曲ではノーツを処理する動作が振り付けのようになる誘導が存在する。
DanceDanceRevolution
DANCERUSH STARDOM/DANCE aROUND/テトテコネクトなどのダンスゲーミュは「踊る」コンセプト以外の表現力をあまり持ち合わせていない。そもそもダンスゲームのノーツは「プレイヤーの動き」の情報を持ち合わせているからだ。DDRは例外で、単体のノーツに動きの情報が無いという点においてはダンスゲームでなく足運びを使うリズムゲームだと言える。
とはいえカラーリングは設定と拍に依存し、4レーンの同時押し上限2レーンではノーツによるお絵かきも難しい。足の構造を利用した誘導やショックアローを組み合わせた振り付け再現はできるが、女々しくて[CDP]やsmooooch・∀・[CSP]のレベルで再現した譜面はそうそう無い。ダンスゲームなのに振り付け再現という概念があるのは面白い。
pop'n music
基本的にはIIDXと似た評価だが、ゲームデザインにモチーフとなるものがない点で運動表現の点を落としている。レーンが広い分二次元視覚表現力は強化されているかもしれないが、レッスン(H/EX)以外にあまり思いつかなかった。やはり譜面難易度との両立が難しいのだろう。
GITADORA
BEMANI現行機種のコンセプトゲーム枠。ギターもドラムもかなりクオリティの高いシミュレーションを楽しめるが、基本的にキー音がレーンに対応している(というかDr/GtBa以外の音を演奏しない)以上、ノーツ配置で何かを表現するというのがどだい無理な話である。ノーツ色はカラフルなので配置の束縛があってもポテンシャルはあるか…?と考察。あまりやっていないゲームなので譜面の例を知らない。
jubeat
BEMANI機種での「文字押し」といえばやはりjubeatで使われることが多いだろう。譜面製作者は4x4盤面をうまいこと使って数々の配置を生み出している。関連記事として一昨年の当ブログリレーに寄稿された記事を貼る。
一方で同時押しを正確にとる必要があるこのゲームでは、プレー体験を損なわないように過剰な動きの表現が自重されているようにも感じた。YONA YONA DANCE[EXT]なんかは手ぶりが中心のダンスと相まって綺麗に動きが表現されている。
ノスタルジア
BEMANI現行機種のコンセプトゲーム枠その2。KEYBOARDMANIAの問題点を改善し、ピアノ演奏の華麗さと音ゲーの操作感のバランスを上手く調整した機種であるが、今回の評価基準においてはピアノ演奏以外の表現力には乏しいと言わざるを得ない。ノーツは音階に忠実なため配置で遊ぶことは難しく、色味も左右識別の二色のみである。
ポラリスコード
おといろはと彩響DJアニクラゲを追い越して稼働したKONAMI音ゲー最新作(BEMANIシリーズではないという説あり)。歴史が浅いため譜面制作の造形も発達しているわけではないが、プロジェクトセカイと同程度の表現力があると予想している。
太鼓の達人
タイトルが示すそのゲーム性はまさに太鼓の演奏であり、コンセプト再現どころかそのままと言ってもいい再現度である。一方、システム上ノーツが流れるレーンは1レーンなので二次元視覚表現は不可能。ノーツの色を使った表現の例としては全て面(ドン)のみで構成されている炎(全難易度)などが挙げられるが、多くて3色までのこのゲームではいつでも使える手法というわけではない。
オンゲキ
正直この記事はゲキチュウマイのそれについて語るために筆を執ったといっても過言ではない。まずオンゲキの場合はレーン(正式名称不明)。主にTAPノーツの下に同色のものが引かれているため一見初代pop'n musicのようなものかと思うがなんとカラバリ無限である。おそらくRGB範囲の1677万色はいけるのではないだろうか。
そのうえ形も自由自在なため比喩表現抜きにお絵かきができてしまう。ここまでやっても譜面難易度には影響しない(視認性は除く)という夢の仕様である。
CHUNITHM
CHUNITHMの評価値はNEW以降のものであるが、初代の時点でチルノのパーフェクトさんすう教室[MAS]などのSLIDEを用いた文字押しがあった。STAR PLUS以降は同一スライドが中間点無しに幅を変える「イカすSLIDE(正式名称)」が実装されたことで表現力が強化された。CHUNITHM特有のAIR領域で作られるY軸は振り再現のポテンシャルもあり、旧筐体時代から相応の表現力を持っていたといえる。
CHUNITHM NEWの新要素の一つにAIRノーツの拡充があり、AIR-CRUSHにより他の音ゲーではみられない軸に二次元表現をすることができるようになった。しかし真に注目すべきはAIR-CRUSHの予告線だ。あくまで予告線であるのでAIR-HOLDと違い判定が存在せず、NEW PLUSでカラバリを得てレインボーンと命名されたことで、先述のオンゲキにおけるレーンと同様に自由なお絵描き能力を得たのだ。
maimai
先に述べると、現在のmaimai最新作でもオンゲキやCHUNITHMのような自由色によるお絵かき表現の手段は実装されていない。ただそれが無くとも本ゲームはいくつかの点で表現の強みを持っている。
まずCHUNITHMやSDVX以上に上半身全体を大きく動かすゲームデザインであること。筐体のサイズ感だけでSLIDEひとつも身体の動きを表現する要素になっている。もう一つはプレー背景で映像が流れていること。DDRやGITADORAのようにプレー領域の真後ろで流れているのだが、その中でもタッチ操作のあるmaimaiがこの特徴を有することでトレースする動作の由来がリアルタイムでわかるという唯一無二の価値へと進化したのだ。
これが存外重要で、プレイヤーに伝わりづらい再現配置がただの変な配置とみなされかねないリスクを低減している。その環境だからこそ譜面制作者も心置きなく再現配置を作れる、という見方もできるかもしれない。
考察
今回取り扱った15のゲームについて、稼働開始が早い順に並べると以下のようになる。
想定より特徴量に乏しい結果となってしまったが、少なくとも
最初期に出たゲームは表現力に劣る
2012年以降、表現力で優位を持つセガ産のゲームが出現している
などのことはわかる。2000年代リリースのゲームが現行機種に少ないのは単にサ終しているからである。
データを通して、あるいはこの記事を通して発信したいことは「現代で新たな音ゲーが新規に稼働していくには少なからず表現力があるべきではないか」というものである。
beatmaniaIIDXやpop'n musicが現在も遊ばれているのは長い歴史の影響が小さくなく、現代にプリミティブな音楽ゲームを稼働させたところで客付きが期待できるとは言えない。また今回取り上げていないスマホ音ゲーも、独占ブランドの楽曲プールを持たないアプリでは特にこの表現力や操作感で差別化を図っているように見える(スマホ音ゲーの表現力のポテンシャルはエイプリルフール譜面などを見るとわかりやすい)。
現代のエンタメは可処分時間の奪い合いで、ましてやゲームセンターでの稼働ともなれば求心力を生むための要素が不可欠であり、その一つがリズムゲームの遊戯性を担保した上での表現力ではないだろうか。
サークルとは直接関係のない内容となってしまいましたが、無理やり結ぶなら「趣味を根詰めると運営側にまで興味が行くよ」ということです(結ばってる?)。入学入サーしたての時点では想像しにくいかもしれませんが、大学生活を終えた先は社会人です。さまざまなことに触れて見識を広げることも大切ですが、自分の興味を追求し続けても芸が身につくことでしょう。少なくとも本サークルはそんな興味を尊んでくれます。
っていう記事をその業界に就職決まってから書けたらかっこよかったんだけどな~~~~~~~~~~~~~~~~~~ オチはありません
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