半分じょうぎ
小学生2人が下校してくると、ダイニングテーブルが宿題デスクと化す。
わたしも、お手紙や宿題チェックのためダイニングテーブルにいると、三男もぬり絵や折り紙を持ってやってくるので、けっこうわちゃわちゃした空間となる。
長男は算数ドリル、次男は漢字ドリルをしていた。
漢字ドリルの途中で、次男が
「ママ、半分じょうぎってオレのもある?」と聞いてきたが、連絡帳や音読カードのサインのためのボールペンを探していたので、とりあえず漢字ドリルに集中するようにと言った。
もう、ほんとに、ボールペンは2日に1回は行方不明になる。
あるときは色鉛筆をいれているお菓子箱から、
あるときは耳かきを入れている引き出しから、
あるときは、トートバックの内ポケットから、
過去に見つかった場所を順に探すと、やはり耳かきを入れている引き出しにあった。
「で?なんだって? 何がオレのもあるかって?」
さっきの問いかけについて確認すると
「半分じょうぎ。はんぶんじょうぎ。」と言った。
わたしの耳が悪いのか、認識が足りないのか何を求めているのかわからない。聞き返そうとすると家の電話が鳴った。
保険屋さんの営業電話だった。
声の印象や話し方の印象と打って変わって、美しい文字で確認書類を送って来たので、ちょっとだけ一目置いている彼女だ。
しかし、毎度タイミングといい話し方といい、申し訳ないがいつもマイナス感情を持たずには居られない。営業さんというお仕事は大変だな。
「で?何?はんぶんじょうぎって言った?」
わたしが、そんなものあるかい!のニュアンスで聞いたからか
「え?これ、半分じょうぎじゃない? なんていうやつ?」と長男に聞いている。
「これ?分度器」と長男が答えた。
「ぶんじょうきか! ママ、ぶんじょうき!はんぶんの!」
なるほど。
もう、お分かりであろう。
“分度器” が半円の形をしていることから “半分じょうぎ” という名であると認識していたのだ。
おそらく “ぶんどき” という音をかすかに耳にしていて、それも “半分じょうぎ” という言葉のもとになっているだろう。
“ぶんどき” と教えてくれていても “ぶんじょうき” と聞き取るほど、ゆるぎなくそれを “じょうぎ” と認識している。
次男の、オリジナリティあふれ、失敗を恐れない、というか失敗を失敗としないところは大好きだ。
「分度器のことね、あるある、あるよ。」と言うと
「また、あとで出してほしい。ここの丸いところ何cmか測ってみたいの。」とおやつに食べたチップスターの筒を指でなぞった。
わたしが渾身の白目でお返事すると、長男が失笑しながら分度器を貸した。
円周をうまく測れないでいる次男に、これは角度を測るものだと教えていた。
それから、円周は自分もまだ習っていないけど、測らなくても分かる計算があってたぶんもうすぐ習うから、そしたら教えてあげると伝えていた。
そして、
「どうでもいいけど、はやく漢字ドリルやっちゃえよ!」とツッコミを入れてから、自分の荷物をさっさと片付けた。
わたしの渾身の白目は、長男をオトナにする。
「あぁ、おれも早く “ぶんじょうき” 使いたいわー」
、、、まだ言うか。
がんばれ、次男。
わたしは、渾身の寄り目も特訓の必要がありそうだ。