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断片の短編②「えんえき」

 何が残っているのだろう――。彼女には疑問があった。あれほど飛び出すとは思っていなかったのだ。それも開いた途端に。勢いがすさまじかった。それ以来。あたりは、不幸だらけだ。疫病、戦争、災害、飢餓、差別、ストレス…。ありとあらゆる災厄を見た。急いで閉じたが、もう遅かった。

 彼女は後悔していた。ただ、大きな疑問がそのままだった。「何が残っているのだろう」。今度は明確に声になっていた。周囲を見渡してみる。苦しむ人、泣き叫ぶ人、息絶えた人、茫然とした人…。不幸が充満していた。彼らの様子からすれば。「さらなる不幸が妥当だ」。彼女はそう思った。

 本当にそうだろうか――。何か釈然としなかった。中身は知らない。だが、確かに何か残っていたのだ。「これだけの不幸が出ていったのだから…」。その時、何かが舞い降りた。確認などできるはずもなかった。だが、彼女は確信していた。「不幸以外のものだ」。それだけが彼女の希望だった。

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