「予算制限よりもマシン購入の方が良い By クリスチャン・ホーナー」を考察
GWになって、久々にF1関連のニュースを読んでみたのでニュースに対する感想を。
今回はこのニュースに対する感想と考察をしてみようと思います。
F1-GATE『レッドブル・ホンダF1 「コストを抑えたければ我々のマシンを買えばいい」』によると
レッドブルのクリスティアン・ホーナー代表は、中団以降のチームによる、現在約190億円で設定されている予算の108~160億円への引き下げ主張に対して
「上位3チームはより多くのコストを費やしているが、それは我々が小規模なチームのために部品を製造および開発しているためでもある。したがって、同じ予算上限を設定することはできない。小規模チームが年末に我々のマシンを購入することができれば、開発と生産のコストをすべて削減できる。大幅に節約され、より激しい競争の場になるだろう」
こう発言したとされています。
ホーナー代表の主張について考察してみたいと思います。
主張1:上位3チームはより多くのコストを費やしているから同じ制限は不公平
改めて予算上限を振り返ってみたのですが、フェラーリ、メルセデス、レッドブル、ルノーの4チームはコンストラクターなのでパワーユニットの開発からギアボックスやサスペンションなどを独自に開発しています。
研究開発を行い、いくつもの試作品を作りテストの上、製品化にこぎつけています。当然研究開発費用が掛かっています。一方でカスタマーチームはそれらのパーツを購入してマシンの開発を行う事が出来るわけですから。不公平という主張は正当性があります。
特に今年のレーシングポイントは明らかなリバースエンジニアリング。
開発した結果形が似たのではなくて、メルセデスの写真を3Dモデリングに落とし込み、全く似た形のマシンを作れてしまっている。
多額の研究開発の結果出来上がったマシンを、写真からパクれてしまうのだから研究開発費を使ったチームは正直ばかばかしいと思うはず。
パクったほうは研究開発に使っていない部分の予算を別に回すことができるのだから。
主張2:小規模チームは年末に我々のマシンを購入する事を可能にすればいい
これも、今のF1は参戦する全てのチームは「モノコックや空力パーツなど(リスト化されている特定のパーツ)は独自に開発しないといけない」という決まりがあり、それゆえに各チームが独自のマシンで参戦することが求められています。つまり同じマシンが複製されて走るようなことの無いよう制限されています。
かつてのF1は、ウィリアムズなどプライベーターはメーカーのマシンを購入して、独自にチューンアップして参戦していました。
なので、特に新しいことをしようというわけでもないですよね。
このホーナー代表の主張のポイントは「年末に」というところ。
シーズンが始まった瞬間に色の違う、メルセデスが6台、レッドブルが4台、フェラーリが6台、ルノーが2台と、マクラーレンが2台。という状態にはならない。
最新のメルセデス、レッドブル、フェラーリ、ルノー、そして昨年型のメルセデスが4台、レッドブルが2台、フェラーリが4台という具合。
■良い面1:4チーム以下が混戦になる
このことから良い面としては、コンストラクターは通常進化したマシンなので強くなっているものですが、昨年型のマシンを購入しながら独自の進化をさせた第2集団は今以上に混戦になると予想されます。
また、今年のフェラーリがそうであるように、新車開発の方向を明らかにミスした場合、もしかすると昨年型マシンを使うチームがコースによっては上回るなんてことも見られるかもしれません。
■良い面2:マシンがきちんとしかんしながコストが圧倒的に抑えられる
マシン自体はきちんと進化しながら、全体の予算は削減される=各チームの満足度は高まる。
メルセデス、フェラーリ、レッドブル(ホンダ)、ルノーなどのコンストラクターは技術的な進化、新しいソリューションの開発など今と同じレベルのコストを欠けながらテクノロジーを進化させることに邁進出来るようになります。
勝つという事だけではなく、「テクノロジーの最高峰であるF1で勝つ」事こそがマーケティング効果においても参戦の意義であるので、コストを抑えたところで、進化しない、最高峰でないシリーズに参戦することは意義を失うことになってしまいます。
彼らのニーズを満たしつつ、後方チームは彼らが主張している開発費160億円の内例えば100億円でそれらチームからマシンを買ってしまえば、恐らく自分たちで開発するよりも競争力のあるマシンを手にすることが出来るはず。良いことしかないように思います。
■悪い面1:4チーム以外に勝つ可能性が無くなる
こんな主張もあると思いますが、既にトップ3以外が勝つ可能性(単独のGPでは不可能ではないが)はほぼない。パワーユニットを購入している以上、パワーユニットと一体でボディワークを開発している3チームと、パワーユニットありきでボディワークを開発しなくてはいけないカスタマーは絶対的に埋められない差がある。
※というと、ルノーがしょぼいのか、マクラーレンが凄いのかという話題になってしまうが。
なのでこの主張はほぼそもそも存在しない可能性を懸念しているに過ぎないので無視して良いレベル。
買うことも出来るし、買わないこともできるので、優勝を目指すチームは引き続き独自開発を選択すればよいだけで、そこには予算制限は無いのだから。
■悪い面2:開発能力の後退
これは懸念すべきことだと思っている。
というのは、昨年型のマシンを購入してしまう場合カスタマーチームにいるエンジニアや開発スタッフは基本的に、買ってきたもののカスタマイズしかしなくなるので、その数は大幅に減らされることになる。当然一から開発するのではないのだからその能力も下がっていくと思われる。
将来的にフォーミュラー1にかかわるエンジニア人材の育成が不活性化される可能背もあり、その受け皿がフォーミュラーEになった場合、最先端の技術力や能力がフォーミュラーEに流れてしまい、前述した通りF1に参戦する意義が無くなってしまう可能性もある。
■まとめ
ホーナー代表はこのメリットもリスクも両方理解した上で、発言をされているはず。ただ、これは単純な不満でも批判でもなく。
現状の枠組みから出ようとしない考え方へ警鐘をならし、新しい方向性の一つをテーブルに上げるための非常に前向きな発言。
こういう議題があちこちから出され、それをしっかり議論できるからこそF1は間違った方向に進まないと、信じることが出来る。
そして、それがホーナー代表からというところがやはりミソで、こうやってイノベーションを起こし続けてきたからこそ今のレッドブルレーシングが存在するだと思う。
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