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ホリエモン新党と東京都知事選挙 ①

2020年05月25日、新型ウィルス対策での緊急事態宣言が東京を含む首都圏の1都3県と北海道で解除されるとの報が流れた。そのすぐ後、N国党 立花氏が新しい政治団体「ホリエモン新党」を設立したと発表した。
翌26日、東京都庁では「NHKから国民を守る党」党首である立花孝志氏の記者会見が開かれた。その会見は、「NHKから国民を守る党」ではなく、「ホリエモン新党」の代表としてであった。

一週間ほど前の05月19日には、「ホリエモン」こと堀江貴文氏が著書「東京改造計画」を、東京都への提言だとして発売を発表していた。
堀江貴文氏の著書「東京改造計画」の発売、ホリエモン新党の設立、めぐる東京都知事選挙。一連の出来事に秘められた堀江氏の思惑と立花氏の戦略とは。25日にの会見には、堀江氏の姿は無かった。

本記事は、モンキーポッドで別途進行している「N国党・立花孝志と東京都知事選挙」のシリーズとは違い、時事ニュースに関する記事としてご覧いただきたい。

ホリエモン新党 代表 立花孝志氏の主張

会見の席に弁士として着いたのは、NHKから国民を守る党 党首 立花孝志氏と、HIU(堀江貴文イノベーション大学校)関係者の柏井茂達氏であった。
柏井茂達氏は、このとき東京都港区長選挙への立候補を表明した。柏井茂達氏と港区長選挙についての詳細は後述する。

会見冒頭から立花氏は、「ホリエモン新党」の設立についての経緯から説明を始めた。先週金曜、柏井茂達氏との港区長選挙の話をする中で、堀江貴文氏の意見も含めて決定したという。そして週明けの25日(月)に届出を行い新党は設立された。
立花氏は、「NHKから国民を守る党」と「ホリエモン新党」の両党の代表を兼任するという。

会見の中で立花氏は、
「堀江貴文氏の都知事選挙出馬の可能性は極めて高い。その合法的な都知事選挙の応援策・宣伝活動として港区長選挙を利用する」
と発言した。これは立花氏の今までの戦略である「選挙のための選挙」と変わらぬ手法と言っていいだろう。港区長選挙と、東京都知事選挙に出馬する立花氏自身においても、(立候補するであろう)堀江貴文氏の応援が目的なのだ。全ては、堀江貴文氏を当選させることが目的だと立花氏は語った。

続けて立花氏は、堀江氏の了承は厳密にはいらないと思うが、公職選挙法に抵触しないのであればOKとの返事を貰っているとし、「ホリエモン新党」の「ホリエモン」とは堀江貴文氏を指すものであると明言した。
そして、ややこしいのはここからである。

新しく設立された党(政治団体)名は「ホリエモン新党」であるが、堀江貴文氏がこの「ホリエモン新党」から立候補をすると公職選挙法違反になる怖れがあるという。従って、堀江貴文氏が立候補をする場合は、「ホリエモン新党」以外の党から、もしくは無所属ということなる。そして、東京都知事選挙に「ホリエモン新党」から出馬するのは、立花孝志氏の予定だ。

立花氏は自身の東京都知事選挙への立候補にも言及し、
「以前話した(告示日以降の選挙期間中)投票日前の取り下げは法律上できないようなので、取り下げはしない。あくまで最後まで堀江氏を応援する」
とした。また、記者から「堀江氏が出馬しなかった場合は」との質問に、
「それは想定していない」
と返答した。

自身の選挙運動について、
「前回同様にやろうとは思っている」
(2016年の東京都知事選挙に立花氏は出馬している)
と話した立花氏だが、
「ホリエモン新党の政策は著書に準じたもの。大きな改革になると思う」
「堀江貴文という人物を信用して投票してほしいということ」
「堀江貴文氏が出ないとなれば、著書の宣伝でしかなかったと言われかねないので、ここまでしておいて出ないということはないと思っている」
「著書が出ること自体が、堀江氏が本気であると思った」

と、堀江貴文氏の出馬は確信していることを強調した。

確かに、この会見の段階のおいても堀江貴文氏の出馬ついて、まだ本人の口からは明言されてはいないが、ここまでのお膳立てがありながら、「出るなんて言っていません」ではさすがに通らないと思われる。それは堀江貴文氏自身も理解されていることだろう。(それでも彼なら言いかねないが)

会見終盤、記者から「選挙運動でNHK撃退シールを使うのか」との質問が飛んだ。立花氏は想定外だった様子で、
「NHK撃退シールをそのまま掲示板とかに貼ろうと思っていたけど、きちんとポスター作ったほうがいいかな」
と、語った。

先の自身の選挙運動についての話しの中で立花氏は、
「前回同様にやろうとは思っている」
「前もNHK撃退シールをあちこちの掲示板に貼って回ったから、同じようにやろうと思っている」

と、話していたのだ。

つまり、「ホリエモン新党」で出馬するはずの立花氏は、ポスター代わりにNHK撃退シールを使おうとしていたのである。NHK撃退シールには、「NHKから国民を守る党」と明記されていたのではなかったか。そこを記者に指摘され、「ポスター作った方がいいかな」と誤魔化したのだ。

そして、「ホリエモン」は商標登録されていないのか。という記者の質問に対して立花氏は回答を持ち合わせていなかったが、会見終了後に商標登録が行われていたことが判明した。

すでに会見が終了し、慌しい会場の片隅から立花氏が大きめの声で説明を会場に残る記者たちへ伝えようとしたところで、実況配信の映像は途切れた。

東京都 港区長選挙、立候補者 柏井茂達氏

会見で立花氏と同席していた柏井茂達(しげたつ)氏は、05月31日告示で行われる港区長選挙の立候補者であった。
柏井茂達氏は、N国党に協力的と見られているHIUの関係者であり、以前から 立花氏とも親しい関係にあったという。

自己紹介も含めて話し出した柏井茂達氏は、東京都港区長選挙への立候補の切欠をこう語った。
「堀江貴文氏からのすすめもあり、立花氏との協議もあり、ホリエモン新党から出ることになった。かなり厳しい選挙になることは自覚している、歴史をつくりたい」

また、公約としては、
「港区でネット選挙の実施をしたい。本人認証やセキュリティの部署の部署に務めているので、そのあたりの知識はある」
とした。また、
「港区は投票率が低い、ネット選挙で改善したい。投票率を2~3倍の70%程までに引き上げたい」
「区民は港区長選挙の存在をしらないのではないか」

と続けて語った。

ところが、記者からインターネット選挙の組織票の問題などについて問われると言葉に詰まりはじめてしまったのである。
「データを取って不正を防ぐ仕組みを走りながら作っていく」
と返答するにとどまった。
それまでの自己紹介などが饒舌に語れていたことを考えると、記者会見に慣れていないための言葉の詰まりではないことは容易に察することができた。

記者から続けて、「運用しながら手探りでは問題が出る」との指摘に対しても、明らかに想定していなかったように見受けられ、明確な返答は最後まで得られなかった。

そんなやり取りの最中、立花氏が割って入った。本人確認のずさんさを例に出し、現行の制度も同様であると主張したが立花氏も問題視されている事の本質を理解できていない様子であった。
記者の質問の要点は、「組織的な票の取りまとめや誘導が簡単に行われてしまう可能性が考えられるが、対策はあるのか」ということだった。
(参考:ネット選挙とインターネットの普及:ネット選挙の賛否
立花氏の返答は、「現行の制度でも十分に取り締まれていない」であった。だから新しい制度でも見逃せとでも言うつもりだったのだろうか。

さらに、柏井茂達氏は学校教育のオンライン化も掲げている。これは、インターネット選挙同様、堀江貴文氏の提言の中にもあることだが、この点に関しても記者からは質問が飛ぶ。「設備や機材に不慣れな者への対処はどうするのか」という質問に対しても、柏井茂達氏の返答はちぐはぐであった。

上記で示した参考のリンクの記事でも述べているが、「技術的に可能だから」という理由でやろうとしているだけではないのか。という疑念が浮かんでしまう。この「技術的に可能だから」という思考は、IT系技術者やその関係者などではしばしば見られる傾向である。
自分自身が「実現するまでの技術的・物理的なプロセスを知っている」(詳しく知っている)が故に、自分以外の人間も自分同様に扱えると思い込んでしまう。逆に言えば、知識や経験が無い人間がどれくらい利用できるのかを想像できないのだ。

記者からのN国党との関係について問われ、
「NHK関連の問題はわからない」
と答えているが、HIUは以前からN国党に協力的関係で近しい存在ではなかったのだろうか。聞くところによれば、政見放送の制作を手伝ったり、N国党からの立候補予定者も複数人存在するらしいが。N国党の政策や公約についての話などはHIUではされていないのだろうか。

柏井茂達氏は、自身の話しの終盤でこう語っている。
「一年前は堀江氏は応援すると言ってくれていたが、最近はそういった声はかけてくれない」

NHKから国民を守る党 と ホリエモン新党

インターネットの一部界隈では、「ホリエモン新党はN国党のサブ垢(サブアカウント)である」と言われている。

この言葉の真偽はともかくとして、「ホリエモン新党」には様々な見解や憶測が溢れている。「政治資金を迂回させてN国党から金を移すための党だ」「堀江貴文氏を担ぎ上げただけの、低迷したN国党の代わりの党だ」など、その多くは、N国党の支持率低下からの苦肉の策だという見方だ。

では、中身はどうだろう。まず外部から見えるところだけで判断すると、今のところ公表されている「ホリエモン新党」の所属は、立花孝志氏と柏井茂達氏のみと見られる。公約は堀江貴文氏の著書「東京改造計画」の提言をそのまま掲げると立花氏は言っている。公職選挙法の都合上、堀江貴文氏自身はこのままの党名「ホリエモン新党」からは出馬できない。
現在わかっていることをざっと並べてみると、これはN国党の何かというより、(堀江貴文氏を含まない)HIUのための政党であるように見える。そして、それを利用するために立花氏が先導している。そんなカタチではないだろうか。

立花氏の視点で考えてみると、このところ立花氏自身もよく口にする「N国党では選挙に勝てない」「人気が無い」などの理由から、その解決策として別団体に手を出すのは自然な成り行きだろう。さらに、立花氏自身が刑事裁判の被告人(不正競争防止法違反・威力業務妨害罪)であり、今後裁判が長引くことや余罪・訴追の可能性までを考えるならば、人気や信用回復はまず見込めない。さすれば、今回の新党立ち上げにも合点が行く。
(参考:N国党・立花孝志 vs モラリスト ①

堀江貴文氏の思惑は、現時点では東京都知事選挙への出馬が名言されていないため、その是非がわからぬうちはなんとも言い難い。しかし、今回の東京都知事選挙では「ホリエモン新党」から立候補できなくとも、今後の(国政含む)選挙のときには党名を変えてしまえばその問題もすぐに解決される。
そして、選挙の出馬がどうあれ、著書「東京改造計画」のマーケティングとしては大成功だろう。これは、今後の彼のビジネスにおいても好材料となりそうだ。

さて、1つ気になる点がある。
立花氏がN国党内のお金関係の詳しい話をしなくなって数ヶ月が経つ。噂ではお金問題は解決できないとまで言われているが、もし万が一、お金問題でN国党が立ち行かなくなってしまったとき、所属する議員たちは一斉に「ホリエモン新党」へ移籍するのだろうか。
問題がお金でなかったとしても、立花氏が裁判で実刑を受けた場合や、その後の余罪などで収監されてしまうようなことがあったならば、残された関係者たちはどうするのだろう。

N国党の所属議員や立候補予定者、関係者には、「ホリエモン新党」の存在意義は、東京都知事選挙だけに限らないのかもしれない。
新型ウィルス感染対策の緊急事態宣言も解除され、延期されていた裁判も、止まっていた捜査も進みはじめるのだから。


ホリエモン新党と東京都知事選挙 ①(終)
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