滞在日誌 2024年1月28日-31日(8-11日目)
2月4日(日)の上演に向けて本格的に創作を進めていきます。次第に見えてきた大きな流れや方針を、少しずつ具体的なシーンや動きに落とし込んでいきます。
1月28日(8日目)
枝と共存する
前日の滞在で、技術のない自分達が短期間で人の形を目指そうとすると、今回の上演で使用したい媒体としての人形にはならない、と感じた藤原さんと坂口さん。そこで砧公園に出かけ、落ちていた木の枝を採集。この枝を上演で使うことにしました。
今日は枝に処理を施して、講堂で使える状態にするところからスタートしました。会場となる空間でこの枝と坂口さんがどう共存できるのか、あらゆる可能性を試しながら目指す状況を少しずつ探っていきます。
枝を床の上に直接置くとどうしても唐突な印象になってしまうため、世田谷美術館の創作室で見つけたタオルをもらい枝の下に敷いてみたところ、舞台空間が立ち現れるようで、これが良さそうだということに。創作室にあった他の数枚のタオルと縫い合わせ、枝が収まる大きさにしていきます。
この日はカメラマンの加藤甫さんにも来て頂き、藤原さんと坂口さんお二人のポートレートも撮影。合わせて、滞在の様子も撮影していただきました。
1月29日(9日目)
どうやって動かす?
人形遣い・人形美術・人形劇作演出家の長井望美さんに再び来ていただき、枝と坂口さんが共演するにあたってのアドバイスをいただく日となりました。
前回長井さんにお越しいただいた時は、具体的な人形を作ることを想定していたため、それが1本の枝になったことに少し驚きつつも、シンプルな形だからこそ、物を動かすことによってある表現を立ち上げるという試みの根源に迫るようなアドバイスをたくさんいただきました。
人形やオブジェクトを用いたパフォーマンスの技術を習得するメソッドとして、ただの棒や球体を動かすことから始めていくというものが実際にあるそう。今回の藤原さん達の狙いが的を射ていたと言えるかもしれません。
1月30日(10日目)
ニコライ堂、向井潤吉アトリエ館へ
この日藤原さんと坂口さんは、内井昭蔵が手がけたニコライ堂や世田谷美術館の分館である向井潤吉アトリエ館を訪れました。
上演の大まかな方向性が定まってきた中で、改めて内井の建築や美術館に目をむける時間となりました。
1月31日(11日目)
シーンを作っていく
次第に具体的な方針が固まり、この日は本格的にシーンを組み立てていきます。上演時のアクティングエリアやお客さんはどこに座ってもらうかなど、上演の状況をイメージしながら少しずつシーンの流れを作っていきます。
少し流れが見えてきたところで、「ただそこに居る」とはどういう状態なのかを確認するため、砧公園に出かけました。周りに木がある場所に身を置いて、感覚を探ります。徒歩1分ですぐに木に囲まれることができるのも世田美ならでは。
どんなこともまずは試してみるという進め方が印象的な藤原さんと坂口さん。そこにある可能性を思い込みによって見過ごさないよう、一つ一つを試してから吟味し検討する姿勢は、上演によって立ち上げようとしている場と世田谷美術館の関係性を丁寧に探ろうとする気持ちが現れているのだと思います。
次回の更新をお楽しみに!
テキスト:武田侑子(NPO法人アートネットワーク・ジャパン)
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