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滞在日誌 2023年12月22日-24日(3-5日目)

藤原佳奈さんの12月の滞在(全5日間)も後半に入っていきます。インタビューを続けながらオープンデーも実施し、「世田谷美術館を戯曲だと捉え、それをいま、上演するとしたら?」という問いについて具体的に迫っていきます。

12月22日(3日目)

インタビュー:遠藤望さん

遠藤望さん(左)

世田谷美術館の特色のひとつである”素朴派”の作品を特集したものをはじめ、同館にて数多くの展覧会を手がけてきた学芸員OGの遠藤望さんにお話を伺いました。インタビューを終えて「学芸員という仕事は本当にすごい仕事だ…」と呟いた藤原さん。美術館において学芸員がどのように展覧会を構想し、どのような準備を経て実現されているのか、具体的にイメージすることができたようでした。

インタビューのあとは、翌日に控えたオープンデーや滞在報告会の内容について、スタッフとディスカッションを交わし、活動が終了となりました。

日々のインタビューや、美術館に毎日通ってくるという体験も通じて、滞在のテーマとして掲げた問いに対して、藤原さんが点と点の繋がりのようなものを見つけはじめているようです。また私たち運営チームにも丁寧に共有してくれるので、この滞在がどこへ向かい始めているのか、朧げながら何かが見えてくるような感覚があります。


12月23日(4日目)

オープンデー「世田谷美術館をひとつの戯曲として考えてみるオープンラボ」①

滞在の場を開きながら多様な方と様々なことを試すとても重要な機会、オープンデーがやってきました。12月23日(土)と24日(日)の計2回行われました。この日はその1回目です。

参加者の皆さんに与えられたテーマは「世田谷美術館にあなた(の存在)を展示するとしたら?」というもの。世田谷美術館を設計した内井昭蔵について、さらに内井の仕事の中でも「装飾」という点に、藤原さんは今回の滞在で考えたいこととの繋がりを見出していることなどが話されました。その上で、この美術館のどこにあなたを展示するか?という問いを与えられた参加者は、まず1時間各自で館内外を散策しました。その後、それぞれが決めた展示場所を全員でひとつひとつ回りながら、実際に”展示”を行い、それを互いに見てみるというツアーを行いました。

それぞれの展示場所を地図に記していきます
展示中の様子を参加者全員で鑑賞。何を見つめているのでしょうか?

空間からどのような情報を受け取ったのか、そこに自分をどう配置するか、というシンプルでありながら奥の深いお題に対して、それぞれが興味深い応答をしてくれました。

藤原さんは、このオープンデーを通して、見られる身体と見る身体の関係性について改めて着目したようで、さらに舞台芸術を見る時と展示を見る時の鑑賞者の身体の違いなど、「世田谷美術館を戯曲だと捉え、それをいま、上演するとしたら?」という問いに向き合うにあたり、かなり重要なポイントを見出したようでした。
世田美チャンネル撮影
オープンデーの後は吉田絵美学芸員と米原晶子ディレクター、藤原さんの3人が出演する世田谷美術館公式YouTubeのコンテンツのひとつである”世田美チャンネル”の動画撮影を行いました。アップは年明けの予定です。お楽しみに!

左から吉田学芸員、米原プログラムディレクター、藤原さん。動画撮影は木暮絵理学芸員。

12月24日(5日目)

インタビュー:橋本善八副館長

美術館開館当時から現在まで在籍する最後の学芸員であり、コロナ禍の2020年に開催され話題を呼んだ「作品のない展示室」の担当者のひとりでもある橋本副館長にお話を伺いました。美術館準備室のアルバイトとして関わり始めた当時のお話から、2009年に担当された企画展「内井昭蔵の思想と建築 自然と秩序を建築に」展を含む近年の仕事まで、そして世田谷美術館の分館である向井潤吉アトリエ館、清川泰次記念ギャラリー、宮本三郎記念美術館の立ち上げについてもお話しいただきました。「世田谷美術館を戯曲だと捉え、それをいま、上演するとしたら?」という藤原さんの問いには、「それは人間ドラマですね」と迷いなくお答えいただいた姿が印象的でした。インタビューの中で橋本さんが「内井の建築はおしゃべりな建築なんですよ」と話していたことが印象的だったそうで、これまで考え続けていた世田谷美術館の建築を形容する言葉としてひとつの新しい捉え方を得られたようでした。

橋本副館長

オープンデー「世田谷美術館をひとつの戯曲として考えてみるオープンラボ」②

前日に続き、2回目の開催となったオープンデー。今日の参加者の方はほとんどが、以前世田谷美術館に来たことがある方々でした。参加者の方により伝わりやすくなるよう、昨日とはお題を少し変え「世田谷美術館にわたしの<存在>を展示する」とし、実施しました。全員の展示をみて、藤原さんは「昨日考えた、舞台芸術と展示を見る時の身体の違いという点について、また少しわからなくなってしまった。生きている人間を見ている限り、それは展示を見る身体にはならないのではないかと思った」とのこと。

皆さんとの実践を繰り返しながら、その度に思考を進めていく藤原さんの様子をみて、ここから先もまた新しい展開が起きていくのだろうと楽しみになりました。

世田谷美術館にわたしの<存在>を展示する
参加者全員の展示を終えて、それぞれから感想を聞きました


前半の滞在は、この日が最終日。インタビューやオープンデーを通じて、「世田谷美術館という戯曲を読む」という体験をコツコツと積み重ねていたとも言えるこの5日間で、藤原さんの中でどのようなイメージが立ち上がっているのでしょうか。

後半の滞在が始まるまでの数週間で藤原さんの中で思考がさらに醸成され、「世田谷美術館を戯曲だと捉え、それをいま、上演するとしたら?」という問いに対する応答がさらに見えてくるはずです。

次回の更新もお楽しみに!

テキスト:武田侑子(NPO法人アートネットワーク・ジャパン)

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