【最近読んで面白かった本】広告の作り手こそ踏まえておきたい「怖さ」
「プロパガンダ」と聞くとなんとなく政治色の強いものや、その中でも戦時中のポスター、標語などが思い浮かぶかもしれない。
でも実際はそれに限らず、何気なく目にしている広告だって、普段行くお店の人のセールストークだって、かかってきた営業電話だって、そこらじゅうにプロパガンダ的なものがいくらでも転がっていて、毎日のように目にしている。
使い方や目的が異なるだけであって、「人を説得する」ことはとてもプロパガンダ的なものなのだ…
そういった切り口から宣伝の手法について解説した本を読んだ。それがこちら。
「プロパガンダ:広告・政治宣伝のからくりを見抜く」
アンソニー プラトカニス (著), エリオット アロンソン (著), 社会行動研究会 (翻訳)
ゴールデンウィークからこの本をちょっとずつ読んできたが、とても面白かった。
面白かったというと語弊があるかもしれないのだけれど、へぇボタンを乱打するかの如く、ブックダーツをつけまくりながら読んでいたくらいにはinterestingだった。
帯にも「あやつられてはいけない!」とのコピーがあるように、様々な手法を解説しながら、「こういった手法があるので気をつけよう。」というニュアンスの本である。
著者自身が、セールスマンが使う手法を逆手にとって相手を説得し返している体験談にも引き込まれた。(あくまでそれを研究している側だからこそできることなんだろうと思うけど)
なぜ「からくりを見抜く」と題した本を広告界隈のアカウントで紹介するんだ、と言われるかもしれないけれど、読めば読むほど、「視覚や言語によって人の感情を左右すること」は「人を説得する」という意味合いにおいてやはりプロパガンダ的性格を持つ行為であり、それゆえに作り手側もこの事を認識しておく必要があると考えさせられたからだ。
「ペンは剣よりも強し」という言葉は肯定的なニュアンスで捉えられやすい印象を持っているが、それと同時に、実は相当恐ろしい技術と隣り合わせのものでもある。
ただポジティブな面だけを見るのではなく、その「恐ろしさ」も踏まえた上で自分がどのようなものを作っていくか、どのような線引きをするか、そしてどのような道を歩んでいくべきかという視点も重要だと思うので、大雑把にでも感想を残しておくことにしたのだった。
挙げられている事例の多くはアメリカのちょっと昔の事例(一般的な広告や大統領選挙、宗教活動)だが、自分の興味のある広告や事柄、最近買い物中に目にした販促物などを思い出しながら読んでいると非常に腹落ちする。
様々な手法が紹介されているが、サブリミナル効果の事例として有名な「ポップコーンとコーラ」の話も載っている。自分は「そういう実験があった」ところまでしか覚えていなかったのだが、実は意外な展開だったのが印象的だった。
そこそこボリューミーだが、刺さる人には非常に刺さる本だと思う。
ところでへぇボタンって、まだ通じるのかな…