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【インドネシア映画】27 Steps of May

強姦の被害にあった娘(メイ)とその父の話、2019年公開のインドネシア映画“27 Steps of May”がNetflixで公開されたので、さっそく観てみました。


【あらすじ】
高校生の時に複数の男に強姦されたメイは、部屋に籠り無口になる。口を閉ざしたことから強姦の事実も明るみに出ることはなく、同居する父は困惑する。娘と向き合うこともままならず、父は非合法的ボクシングの大会に出ては憂さ晴らしをするようになる。そんな中、隣に住むマジシャンとの出会いから、メイの心境に変化が現れるのだが…


この映画は、スハルト体制末期に起こった、華人に対する人種差別暴動「1998年5月暴動(“Kerusuhan Mei 1998”)」におけるレイプ事件の被害者に焦点を当てた物語となっています。

スハルト体制期のインドネシア経済は華人企業家との結びつきが強く、政府は華人がいなくなると経済が回らなくなることを危惧し、華人に対して融資を与えるなど、経済面では優遇し、また、華人の財産は豊かであったことから、開発事業では手を組んでいました。そのことから、彼らは常にプリブミ(インドネシア原住民)から嫉妬心、反感を抱かれていました。

しかし、スハルトは華人に対して抑圧的でもあり、中国語表記(漢字)を禁止するなど、あらゆる分野において華人の活動を禁止していました。

そんな背景から、華人に対する差別は悪化し、1998年5月に暴動へと繋がりました。

映画では、レイプ事件の被害者に焦点が当てられているため、人種差別やスハルト政権については物語られていませんでしたが、台詞の少なさや無音に近いほどの静けさからレイプ被害のトラウマ、陰鬱さ、焦燥感が緻密に映し出されされ、観る者を圧倒するような映画でした。

メイ役をつとめたライハアヌンのインタビューによると、この役を演じるにあたって、あたかも自分が経験したことのあるように物語の流れを大切にしたそうです。レイプシーンは撮影初日でなくてもよかったそうですが、監督と話して、撮影初日にしたとか。
そして、複数の男に強姦され、立ち直れるか?どう立ち直るか?と考えた時、自分もメイと同じ様に塞ぎ込み、前進できても少しずつだっただろう、と。そのため、父親役のルクマン・サルディにはメイになりきり、我が儘に接したそうです。

Netflixにて公開されているので、是非ご覧下さい。


“27 Steps of May” official trailer

ライハアヌンのインタビュー(インドネシア語)


『傷とトラウマ、27 Steps of Mayのあらすじ』 (インドネシア語-kompas.com)

【スハルトについてのnote】
久恒啓一さん『「名言との対話」6月8日。スハルト「安定と開発」』


追記

インドネシアの日刊紙『コンパス』にて掲載された女性に対する性暴力の調査記事(インドネシア語)
“Masih Adakah Ruang Aman bagi Perempuan?”


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