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小さなカヤックを漕ぐように

大変化時代の1年間

人が集まることを封じられたコロナ時代。凍った雪が一気にコロナ終息と共に溶けていくような、このあまりにも大きな変化の時代。私達SALTは、2023年7月末に21期目の決算を迎えた。

人と人のつながりを創ることが仕事でありながら、それが物理的に仕掛けていくことが出来ないもどかしさ。コミュニティとは一体何なのか?を内省しながら、スタッフと対話する日々。衛生面に配慮し、オンラインも含めた様々な工夫を凝らしながら、物理的なつながりだけではない、目に見えない小さな人と人のつながりの価値を創出してきた。しかし、「資本主義ベースの運営事業」としての結果としては、当然ながら苦戦もあった。コロナ前に創った拠点の企画収支のずれ込みから、我々が運営する拠点のビルオーナーや、ビジネスオーナーとの意見や立場の相違も顕在化した。特に今期前半は、精神的にも辛い場面は多々あった。しかしそれも、今思えばすべて学びであった。SALTの強いノウハウとして血肉になった。

結果としてコロナ終息と共に、我々の直営拠点である、SALTや、古賀市と協働している快生館のニーズが顕在化していった。

自然の中でアイディアを創造することやチームを創っていくというコロナ前ではごく一部の企業だけが実施していたカルチャーは、現在、様々な企業が取り入れ始めている。

結果、21期目のSALTは過去最高の利益率を出して決算日を迎えることになった。

開業から7年目を迎えたSALT。コロナ禍を経て様々な企業が入居。
日々企業合宿を受け入れている。海の前で対話するというSALTのカルチャーを、
様々な企業に提供している。
コロナ禍にスタートした快生館。森と温泉という環境を活かし、狩猟ワーケーションを
はじめ自然の中で構想したり対話する場として活用が進んでいる。
オフィスとしての入居企業も15社近くに成長した。

激動の1年を終えて、昨日は、SALTのメンバーとの合宿だった。メンバーが、各担当してきたことを振り返る姿を見ながら、苦戦の中で工夫してきたメンバーの成長を感じたし、ここからが改めてスタート地点に立ったような感覚だ。

この後世界はさらに大きく変化する。

このコロナの終息後、抑圧されていた欲求の開放により、人が集い・動くスピードの加速と共に、価値観の細分化と生活様式や行動の変化は更に進んでいくだろう。結果、これまで通りのやり方や、古い価値観は通用しなくなっていくだろう。本質的で豊かな働き方やヴィジョンを提供できる企業に優秀な人材が集まると思うし、企業や個人には、社会の変化に対して柔軟に素早く反応し、対応していくレスポンスが求められていくに違いない。そのためには、目に見える経済価値を追い求めるだけでなく、目に見えないつながりや自然と共につながって生きているという真の循環を感じ取る力をベースにした企業活動が重要になってくるに違い無い。そんな変化に向けて、私達はこれからどんな準備や企業活動を日々していくべきだろうか。コロナ終息と共に、社会が一気に加速していく中、全てを忘れたように、果たして本当にお祭り騒ぎのように動きだすだけで良いのだろうか?コロナでの学びを活かして、よりよく社会を再編集していくにはどうしたらよいだろうか。

パタゴニア創設者のイヴォンの数年前の著書「レスポンシブル・カンパニー」を改めて読み返したい。

コロナ終息後の国内各地のエリアリノベーションと変化の兆し

2023年の正月明けの仕事の始まりは、沖縄に居た。なぜか今年は何かが変化していくような予感しかなかった。コロナで、足元を見つめてばかりいたので近視眼的になっていたと思うし、これまでの価値観ではおそらく会社としても個人としてもダメだということだけは確信していた。そこで、コロナ前に行けていなかった各エリアがどんな変化をしているのか?何を目指そうとしているのか?リサーチを兼ねて毎月1週間程度、半年連続でリモートワークをしながら国内各地のエリアリノベーションを回る旅をした。
<視察してきた11エリア>
北陸新幹線の開業する福井エリア
・not a hotelが開業した那須エリア
・鎌倉、箱根、真鶴、伊豆の神奈川エリア
・常石造船のlog、U2、湊の宿を含む尾道エリアとしまなみ海道
・sanuが開業した軽井沢エリア
・rebuilding center JAPANが手掛ける諏訪エリア
・自遊人が手掛けるエリアリノベーションプロジェクト松本十帖エリア
・同じく自遊人の本拠地である里山十帖のある南魚沼エリア
・再開発が著しい沖縄中部・北部エリア
・世界一の建築デザイン賞を受賞したsumuがある屋久島
・bonus trackを中心とする下北沢のエリアリノベーション

全く新しい不動産活用のスキームとして注目が集まり、勢いがあるnot a hotelに幸運にも滞在することができた。那須の1号master peaceは滞在価値と時間の豊かさについて強い刺激を受けた
サブスクリプション型のサードプレイスとして、自然で過ごす滞在価値を問い直すsanu。
キャビン=不便でチープという価値を一変させ、「小さくて豊か×他拠点」というコロナ禍で変化した社会価値観を各エリアにインストールしている。
雑誌編集社から、ホテル運営業9年目を迎えた自遊人のフラッグシップ里山十帖。里山×本質的なラグジュアリの進化系を見ることが出来た。写真では伝わらないこの景色は息をのむものがあったし、日本の里山は誇りを持って世界にプレゼンテーションすることが出来ると感じた

コワーキングスペースを中心としたエリアリノベーションの終息

この各地のエリアを視察しながら、地方創生以来、さらにここ数年で一気に増えたコワーキングスペースを中心とするエリアづくりは完全に終息したと感じた(金太郎飴のようなこのブームは終息してよかったと思うが。)。not a hotelやsanuをはじめ、少人数や、身近なグループでより豊かに過ごし働ける一棟貸しの他拠点型パーソナルスペースの台頭が著しい。これはコロナ禍で定着した人々の感覚をうまくとらえた場づくりとサービスであると思うし、新しいラグジュアリーにも通じる知性型の学習アクティビティや滞在に最適な施設だ。また、下北沢や、諏訪、那須の黒磯、小田原のように、魅力的な小型店舗を、編集し、集約できているエリアの改めての強さを感じた。商業資本主義型の集客のためのエリアマネジメントではなく、主体性ある意志と編集力をもったエリアマネジメント。もはや利便性の高い都市部よりも、不便でも魅力的な人や店舗、ヴィジョンが集まる地域の方が競争力があるし移住者も集まっていくのではないだろうか?

それではコワーキングを中心とした事業や街づくりを提案してきたSALTは今後どうしていくべきだろうか?大きな問いと課題に直面した旅でもあったが、各地で見たもの、出会った人々、食べた食事含めて多くの刺激と視野の広がりを得ることができ、新しいビジョンを得ることが出来た。

変化し続けるメンバーと共に。

これからの変化を乗り越えていくためには、おそらく、一人が全体を染め上げるようなリーダーシップではなく、個の力を伸ばし、信じること。そしてこの多様な力を集合体とし、フォーメーションをその時々で柔軟に生き物のように変えていくことが大切だと思う。

SALTのメンバーは、この変化の中で、対話しながら、互いの価値を尊重し、支えあいながらプロジェクトを進行していくことができる、メンバーが集っている。不動産やIT、映画や、教育、デザイン、女優業など様々なバックグラウンドを持ったメンバー。プライべートでは狩猟免許を取得したりと、A面とB面を行ったり来たりしながら、時にシンクロしながら、仕事と人生を思い切り楽しんでいる。このメンバーと共に、22期目も、変化させながら、私達が目指すヴィジョンに向かって進んでいこうと思う。

多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まるからこそ、多岐にわたる複雑な業務を
チームワークでこなしていくことができ、変化に強い組織になった。

SALTのメンバーの考え方と実践、今を伝える、salt.campを開設しました。

狩猟免許を持つ女性社員が2名もいる会社も珍しい。鹿の解体を先日レクチャーを受けたが、
彼女たちの強さや推進力から刺激を受けることも多い。

コワーキングから、エリアづくりへ。

コワーキングスペースを運営してきたのではないとずっと思ってやってきた。ただ机を貸し出すだけのワークスペースではない。そこで働く人々の人生や空気感の円が重なり、共有されながら、進行していくエネルギー体のような場を目指してやってきた。まだまだ、そこに到達はできていないが、拠点の中にあるエネルギーが、地域(エリア)に滲んでいくように、これらから改めてチャレンジャーとしてやっていこうと思う。小さな拠点を持つ小さなエリアマネジメント主体同士がつながっていくようなネットワーク型の街づくりに希望を見出している。そのためには、ファイナンスや、不動産共同特定事業、飲食や商業店舗をプロデュースするようなことを含めてさらなるプロデュース力をつけていかなければならない。今期は、自らの学びもかねて、各地のエリアをつくる人々をゲストに福岡で学び型のトークイベントを開催して行こうと思うので興味がある人は是非参加してもらいたい。

小さなカヤックを漕ぐように

最後に、私のB面は、今期、これまでの登山に加えて、海というフィールドに圧倒的に向き合った。風と波と、潮と。刻々と変化する環境を捉えながら、美しい朝日と夕日を見て、多くの魚と触れ合った。ビジョンを整理するのに、登山は素晴らしい効果を与えてくれるし、変化を乗り越えて生き抜いていく力を、カヤックが養ってくれた。

変化する時代の波を、大きな客船に身をゆだねるのではなく、小さなカヤックを自らの力で漕いで生き抜いていく。しんどさやリスクも楽しみながら。そんな感覚がとても大切だと感じている。

今期は、この野生を養うという感覚を共有して行きたいし、ワークショップも同時に開催していくつもりだ。

21期を支えて頂いた皆様に心から感謝致します。
22期目のSALTも改めてよろしくお願い申し上げます。

須賀 大介

金色の豊穣の海。言葉にならないほど美しい。自然をダイレクトに感じるシーカヤック
は、学びや哲学を生み出してくれる。


(現在)SALTが運営する小さな拠点11拠点
今期は、SALTと連携していただける拠点を増やして行きます。

SALT
HOOD
快生館
mol.t
今宿6拠点の宿泊施設


夜明の宿(柳川)


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