教会のシンボル大集合(『カトリック生活』2013年9月号5-11頁所収)


教会に行くと、さまざまなシンボルを見かけます。その意味を知れば、それを見つめることによって霊的なインスピレーションを得ることができるでしょう。ここでは、いくつかのシンボルを紹介します。

福音記者


エゼキエルの預言(1・5〜10)やヨハネの黙示録(4・6〜8)に由来し、福音書の神学に応じてそれぞれにシンボルが与えられている。

マタイ

キリストの系図をたどり、人間性を強調することから有翼の天使(人のような姿)が描かれる。

マルコ

キリストの追うとしての威厳に伝えることから、古代のシンボルであった有翼の獅子の姿である。

ヨハネ

天の神秘を誰よりも深く見通し、神の言葉を豊かな霊感から記述したことから、鷲の姿で描かれる。

ルカ

キリストの犠牲を強調するため、古代の犠牲獣になぞらえて有翼の雄牛として描かれる。

十字架

イエス・キリストが磔刑に処されたときの刑具。キリスト用の最も重要な宗教的象徴であり、また、マルコ福音書でイエスが「わたしの後に従いたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負ってわたしに従いなさい」(8・34)といわれたことからも、イエスに従うキリスト者のシンボルともされている。

ラテン十字

キリスト教で最も頻繁に用いられる十字の一つ。


ギリシャ十字

横軸と軸木が同じ長さで構成され、赤十字等の標章に用いられる。


ケルト十字

ラテン十字と十字の交差部分を囲む環からなる。


聖ペトロ十字

逆十字とも呼ばれる。聖ペトロが処刑された十字架とされ、謙虚さの象徴。


クロス・アンキー

碇十字。碇は救世主のシンボルの一つで、希望を表す。

聖アンデレ十字

X字型の十字架で処刑されたとされる聖アンデレに由来する。


タウ(τ)十字

タウはヘブライ語のアルファベットの最後の文字。アッシジの聖フランシスコが自分の修道会にこの十字を採用した。

ラバルム

ギリシャ文字のX(キー)とP(ロー)を組み合わせた形状で、イエス・キリストの象徴となっている。

エルサレム十字
中心の大きなギリシャ十字に四つの小さな十字がつく。

数字

1

すべてのものの始まり、一致、唯一の神を表す。「聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である」(申命記6・4)

3

父と子と聖霊という「三位一体」を表すもっとも重要な数。旧約でも三人の太祖(アブラハム、イサク、ヤコブ)、ノアの息子(セム、ハム、ヤフェト)などが登場し、新約ではイエスは三回誘惑を受け、3日目によみがえるなど、神の世界を表す数字とされている。

6

完成を表す7に一つ足りない数字。神が天地創造のみ業をなされた日数。イエスはカナの結婚式で6つのかめに入った水を全部ぶどう酒に変え(ヨハネ2・6)、受難の予告から六日の後に変貌された(マルコ9・2)。

7

神による宇宙の創造と神の休息の数であり、完成や全体を表す。「黙示録」でも大事な数で、「七つの封印」「七つのラッパ」「七つの鉢」「七つの角」「七つの目」など全体やすべてを象徴している。教会の七つの秘跡(洗礼、堅信、聖体、ゆるし、結婚、叙階、病者の塗油)、七つの大罪(傲慢、嫉妬、暴食、色欲、怠惰、どん欲、憤怒)、聖霊の七つの賜物(知恵、理解、判断、勇気、知識、孝愛、畏敬)もある。

12

ヤコブの十二の息子、イスラエルの十二部族、エルサレムの十二の門、そして十二使徒。聖書の中では大切な数の一つである。

40

聖書では一世代を表す。モーセに率いられたイスラエルの民は四十年間荒れ野を放浪し、(民数記)

666

「反キリストの獣」(黙示録13・18)を意味する。人々を惑わし、獣の像を礼拝しないものを皆殺しにし、この獣の知るしをもたない者を経済的に統制・管理して迫害するとされる。この獣は人間であるともいわれ、一般にはキリスト教の最初の迫害者「皇帝ネロ」と解釈されることが多い。

持ち物

勝利者へ与えられる栄誉のしるしである冠は、王としてのキリストの権威を示す。マリアは被昇天後、キリストによって天の元后として冠を与えられた。冠をつけた聖母子像の姿も多くみられる。

キリストの受難を表し、磔刑図に描かれることが多い。受難に用いられた釘は、ゴルゴダに巡礼したヘレナがキリストがつけられた十字架と共に発見したという。そのためヘレナの持ち物として描かれる。

鍵は管理や権威の意味がある。ペトロが持つ鍵は、イエスから与えられた天の国の鍵である(マタイ16・19)。金と銀の日本の場合は1本が開ける鍵、1本が閉じる鍵と考えられる。

武器そのものとしてだけでなく、正義、康平、勝利などの抽象的なイメージとしても表される。パウロは、信仰を盾とし、霊的な剣である神の言葉を身につけるようにと語る(エフェソ6・16〜17)

旧約聖書では、モーセやアロンの杖が知られる。また巡礼者が用いることから巡礼地として知られる大ヤコブや、長旅をしたと伝えられるフィリポの持ち物。司教はキリストの牧者としての権威を示すため先端が渦巻き状の司牧杖(バクルス)を持つ。

動植物

パンの原料となる麦は穂の形で表現され、キリストの聖体を象徴するもっとも重要なシンボルである。「一粒の麦」(ヨハネ12・24)や「わたしは天から降って来たパンである」(同6・41)などキリストの受肉を示唆する。

パン

聖書にたびたび記されるようにイエスの時代の主食であるが、霊的な意味が含まれる。特に聖体を意味する。五つのパンは、二匹の魚と共に、五千人を満腹にさせた(マルコ6・30〜44)。

ぶどう

ぶどうの房、ぶどう酒はキリストの血を象徴し、永遠の生命を表す。イエスと教会を意味するぶどうの木は、「わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である」(ヨハネ15・5)というイエス自身のことばに基づく。枝・葉・果実をもった生きた木として表される「生命の木」の十字架には、ぶどうによって表現されることが多い。

白い鳩は、聖霊が表す最も伝統的なシンボル。「聖霊が鳩のように見える姿でイエスの上に降って来た」(ルカ3・22)

勝利の旗を持った神の子羊

旧約時代の生け贄である子羊は、自らを最高の生け贄としてささげたキリスト自身を意味する。洗礼者ヨハネはイエスに洗礼を授け、「見よ、世の罪を取り除く神の子羊だ」(ヨハネ1・29)と言った。本を封じる七つの封印は、「力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、そして賛美」(黙示録5・12)とされ、神の子羊だけが与えられるにふさわしい。

鹿

水を飲む鹿の姿は、真理の水を求めて生命の泉にいたる信者の姿であり、神を求める渇いた魂を象徴する(詩編42・2)。

創世記三章ではエバを欺いたことから神によって呪われたものとされた。無現在の聖母などにみられる蛇の頭を踏みつける姿は、悪への勝利を表す。他方、蛇を善きものとする見方もあり、脱皮をする蛇は復活の象徴でもある。「モーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられねばならない」(ヨハネ3・14)とされ、キリストの十字架の受難と復活を意味する。
茨 イエスの受難の象徴であり、苦痛、罪、試練などを意味する。ローマ皇帝のバラの冠をもとに、イエスをユダヤ人の王として茨の冠をかぶせ侮辱した(マタイ27・29)。

オリーブ

地中海地方原産のオリーブは平和や調和の象徴であり、国連のマークにも描かれる。ノアが放した鳩はオリーブの枝をくわえて戻ってきたので、ノアは水が引いたことを知った(創世記8・11)ことから、神が人との間に平和を結んだことの象徴とされる。

バラ

愛の象徴とされ、紅バラは殉教、白バラは純血を表す。マリアを代表する花の一つ。ロザリオの語源は、「バラの花冠rosarium」であり、葉の緑が喜び、トゲが悲しみ、花が栄光を意味し、聖母にささげるロザリオの祈りを表す。

白百合

純血の象徴として用いられ、処女聖人、とくにマリアの持ち物である。マリアのそばに飾られるか、マリアに受胎告知を行った天使であることを示すしるしとして、大天使ガブリエルは百合の花を携えて描かれることが多い。


自然 

風を意味する「プネウマ」は「聖霊」とも訳され、「息を吹く」ことは神が霊の力を与える意味になる。ヨハネ福音書には、イエスが弟子たちに「聖霊を受けなさい」(ヨハネ20・22)と息を吹きかける姿が記されている。

古くから占星術は人々の生活と結びついた重要なものであった。キリスト教もキリストを明けの明星、聖母マリアを海の星と呼び、この考えを継承した。なかでも象徴的意味とされたのはイエスとの関係であり、東方オ博士たちをイエスのもとに導く重要な役割を有した(マタイ2・1〜12)。

ノアの大洪水の後、神はすべてのものがよいものだと宣言した。神の和解のしるし、契約のしるしとして天にかけられた虹は、神自身と人間、天と地を結ぶシンボルとされる(創世記9・13)。

光と闇

光は、天使と天国と結びつけられ、特にキリストの象徴として描かれる。対して闇は、悪魔や地獄、神の救済の届かない悪の支配を表す。
火・炎 聖霊降臨や最後の審判の場面に描かれ、神の出現や聖霊の働きを表す。また生命力や愛、熱意の象徴でもある。

悲しみや慎みの色。償い、回心、死者の贖罪と冥福を祈ることを表す。紫のストラは待降節、四旬節、死者のための典礼にも使用される。

火、愛、殉教の血を表す。赤いストラは受難の主日、聖霊降臨の主日、神にささげられた尊い聖人(殉教者)のための祝日に着用。

希望、歩みの堅実さを表す、緑のストラは年間の典礼に用いられる。

神の栄光、清らかさ、喜びを表す色。「クリスマス」、「復活祭」に着用するが、受難の非以外の主の祭日、聖母マリア、天使、殉教者でない聖人の祝祭日等にも用いる。

他に、聖母マリアを表す青、喜びを表すばら色(ピンク)などがある。

文字

ΑとΩ(アルファとオメガ)

ギリシャ文字の最初の「Α」と最後「Ω」。そこから完全を表す字とされる。黙示録では神が「私はアルファでありオメガである」と名乗る場面が三回(1・8・21・6・22・13)出てくる。

INRI

十字架上のイエスの頭上の横木にこの文字が書かれていることがある。これは罪状を記した板で「Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum」の頭文字。「ナザレの人イエス、ユダヤ人の王」という意味。

AMDG

「より大いなる神の栄光のために」(Ad Majorem Dei Gloriam)の略称。イエズス会のモットーとしても知られている。AMDGは福者ヨハネ・パウロ二世や作曲家J・B・バッハのサインにも添えられている。

ἸΧΘΥΣ

ギリシャ語で「魚」を意味する言葉。同時にΙΗΣΟΥΣ ΧΡΙΣΤΟΣ ΘΕΟΥ ΥΙΟΣ ΣΩΤΗΡ(イエス、キリスト、神の、子、救世主)の頭文字を並べたもので、「魚」はイエスのシンボルとされた。

IHS

ギリシア語のイエス・キリスト(Ίησοῦς Χριστός)をラテン文字に直すと、Ίησοῦς Χριστός(Ihsouz Xristoz)となり、その最初の3つの文字IHSをとったもの。そのほかラテン語の「人類の救い主イエス」(Iesus Hominum Salvator)の頭文字や、「イエスは我らとともにあり」(Iesum Habemus Socium)の頭文字とも言われ、イエスを表す文字。コンスタンティヌス帝はこのしるしを夢で見て戦いに勝ち、それがキリスト教に改宗するきっかけとなったという。

その他諸々

心臓

全人類に対する神の愛の象徴としてイエスのみ心を表し、燃え上がる心臓として描かれること蛾多い。み心の信心は十七世紀、聖マルガリタ・マリア・アラコクが受けた啓示によってフランスで広まった。み心に表される神の愛を思い起こし、無限の愛のしるしであるみ心をたたえる。

羊飼い

「わたしは良き羊飼いである」(ヨハネ10・11)とイエスは語る。羊飼いと羊の交わりがイエスと人々との交わりにたとえられる。
船 信仰年のシンボルマークにも描かれる船は、キリスト教のなかで、古くから教会を象徴するものの一つ。

※本記事はドン・ボスコ社の許可をいただき、『カトリック生活』の過去の記事を掲載しております。


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