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USスチールどうなる

日本製鉄のUSスチール買収の件。残念ですね。でも驚きではありません。
これが9月の時点で調べた時の記事です。

というわけで、また勉強がてらのノートです。

そもそもなぜ、
あのペンシルベニア州の古い製鉄所の労働組合&経営陣
VS
全米鉄鋼労働組合&ライバルのクリーブランド・クリフス(Cleveland Cliffs)みたいな構図になっているのか。

製鉄技術や産業の変化、環境対策基準の変化で、国内だけでも後からきて一気に抜き去ったライバル企業がいくつもあるのに、なぜ古い企業同士の争いのようになっているのか。

上の記事に書いた通り、今は製鉄は電炉が主流になりつつあるんです。
古い高炉は大量に作れる利点はありますが、環境に優しくない、鉄の需要にかかわらず止められないという問題があります。電炉はリサイクル鉄、もしくはDRI (Direct Reduced Iron, 直接還元鉄)という環境負荷が従来よりも低く高品質な原料を使える、需要に合わせて製造を調整しやすいという利点があります。

それで古い高炉の会社は新しい電炉中心の会社にシェアを奪われ、このような状態になっているようです。もちろんクリーブランド・クリフスもUSスチールも最新技術を取り入れた電炉の製鉄所はありますし、DRIは高炉で使うこともできるのでその製造もしているようですが、老朽化した高炉の運用自体が大変なんでしょうね。

じゃあ高炉が全く必要ないかというと、高炉でしか作られない製品もあるようで。

調べたところ、USスチール以外で米国で古いタイプの高炉を持っているのは、クリーブランド・クリフスとアルセロール・ミッタル(ArcelorMittal 本社ルクセンブルク)だけのようです。

となると日本製鉄がUSスチールを買収すれば、もう米国企業の高炉はクリーブランド・クリフスしかなくなります。なるほど抵抗するわけです。

そのリスクを承知で日本製鉄が踏み切ったのは、USスチールのブランドやネットワークもありますでしょうし、USスチールはミネソタに鉄鉱石鉱山持っていますからね。これが大きいのではと思っています。

ちなみにアルセロール・ミッタルの北米鉄鉱石は主にカナダから来るようです。

ということは、もしクリーブランド・クリフスがUSスチールを買収したら、米国産の鉄鉱石のシェアをかなり占めることになってしまいます。独占禁止法などに引っかからないのでしょうか?

ああ、そういうことか。こういう事情で日本製鉄くらいしか買える会社がなかったのかもしれません。

調べてみると、製鉄会社運営でない鉱物採掘、加工会社もあることにはあるようです。少ないですが。またできたばかりのメサビ・メタリックス(Mesabi Metallics)社というのがあるようですね。破産した会社の古い鉱山を復活させているようです。

ところがすでにクリーブランド・クリフスと揉めているようで…クリフス、どうやらこういう問題初めてでは無さそうです。

このメサビ・メタリックスを調べてみました。インドのエッサール・グループ(Essar Group)の一部で、エッサールの鉄鋼事業はアルセロール・ミッタルと日本が2022年に共同買収していると。つまり全部外国企業。

そしてこちらが、メサビ・メタリックスのCEOの事業計画です。

Joe Broking, CEO of Mesabi Metallics, said the company will first sell DR-grade pellets on the open market, which could include North American and seaborne customers as far away as Europe, North Africa and the Middle East. But their long term goal remains the construction of as many as two DRI plants, and eventually a steel mill.

“We hope to clean up the steel industry — either moving away from blast furnaces or giving them time to adjust,” said Broking.

グーグル訳:
メサビ・メタリックス社の CEO であるジョー・ブロキング氏は、同社はまず DR グレードのペレットをオープン マーケットで販売する予定であり、その対象には北米や、ヨーロッパ、北アフリカ、中東といった遠く離れた海上輸送の顧客も含まれる可能性があると述べた。しかし、同社の長期的な目標は、最大 2 つの DRI プラントを建設し、最終的には製鉄所を建設することだ。

「当社は鉄鋼業界をクリーンアップしたいと考えています。高炉から撤退するか、調整する時間を与えるかのいずれかです」とブロキング氏は述べた。

引用:Aaron Brown https://minnesotareformer.com

だんだんと見えてきました。

USスチールが日本製鉄になって鉱山を保有し、古い高炉を復活させ、このメサビ・メタリックスも自社で製鉄を始めたら、もうクリーブランド・クリフスは外国資本企業に包囲された状態になります。全米鉄鋼労働組合が焦りだしているのもなんとなくわかってきました。

上のCEOの言い分を聞いても、なんか高炉鉄鋼業界ドロドロっぽいですし、もう産業としてオワコンなんですかね?全部電炉になるのでしょうか?

もうさ。いいんじゃない?USスチール助けなくて。笑

私は鉱山は土木の方で関わることはあるのですが、鉱山でも製造でもエネルギー産業でも、環境汚染拡大防止と除去の仕事だらけですよ。
工場直すのもクリーンアップも外国人。

アメリカ人たちよ。諦めろ。笑

追加!

なんとアルセロール・ミッタルのUSA事業は、クリーブランド・クリフスが2020年に買収しているようです。その時に日本製鉄もアルセロール・ミッタルとの合併会社を保有していたので売却。それがこの記事:

日本製鉄も一回クリフスに奪われている。

面白すぎる。あれみたい。モノポリー。笑

ということは、米国の高炉は結局USスチールとクリーブランド・クリフスしかない。USスチールどうするんだろう?バラ売り?

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