もうマイナーとは呼ばせない。

二次創作BL(ボーイズラブ)の方の活動の話。
白玖の話だけ聞きたい人は、無理に読まなくても大丈夫。


別の名義ハンドルネームで二次創作BLの活動もしているけれど、気づくと二次創作の即売会イベントに初サークル参加して四年が経っていた。

四年前、コロナの大流行パンデミックが起きる直前のこと。
大手ジャンルにいながら、そしていわゆる『人気の高い』キャラクターを推していながら、私の推していたカップリング(CP)は当時はドがつくマイナーだった(し、もう一人の方の新刊はどうやら特にカップリング作品ではなかった)。
当時映画化から間もなく、人気が沸騰していて同じジャンル(原作)全体で数百のサークルが参加していたが、その中でたったの二つしか、そのカップリングのサークルはいなかった(ちなみに左右逆は数十サークルの参加があった)。
二つのサークルのうち、一つが私だった。

この辺りの状況に明るくない人のために簡単な補足。
キャラクターAとキャラクターBのカップリング組み合わせには、A×BB×Aの2パターンがある。
左右が入れ替わると受け攻め、分かりやすく言うと「男役」×「女役」の立ち位置が変わってしまうため、A×BとB×Aは基本的には違うものと見なされる。

また「A×Bは好きだがB×Aは嫌い」もしくはその逆という人も非常に多い。
ジャンルやキャラクターの組み合わせによっては「A×Bは王道(愛好者が多い)、B×Aはマイナー(愛好者が少ない)」ということも珍しくはない。
これに当てはめると私の書いているカップリングA×Bは当時マイナーで、逆に同じキャラクターだが立ち位置が逆のB×Aを創作するサークルは非常に多かった。

当時、二次創作においての小説サークルの地位は、今より格段に低かった。
小説を書いて参加する人も少なかった。
漫画を描いて出している人は漫画というだけで買ってもらえたりするのに、小説を書いて本にして出している人は「ただ文字を書いただけ」「活字なんて読みたくない」と見向きもされないことがほとんどだった。
私が初めて書いた小説の同人誌を、わざわざ立ち止まって見本誌を数ページめくり「小説ならいらない」と笑いながら投げ捨てていった人もいた。
(これについては本当に許していない。今からでも直接謝罪に来てほしいくらい許していない。そもそも小説だろうが漫画だろうが許される行為ではない)

それでも、初めて参加した即売会イベントで、ドがつくマイナーカップリングで、無名の小説サークルでも、両手の指では足りない数の新刊を手に取ってもらえた。
お世辞かもしれないが「次も楽しみにしています」と声をかけられることもあった。
イベントが終わってから、読者の方から感想をいただくこともあった。

逆風の中にあって、私が腐らずに(腐女子的な意味ではなく)創作を続けられたのは、この時本を買ってくださった方、感想をくださった方のお陰だと思う。

それから間もなく、日本全体がコロナ禍の真っ只中に入り、同人誌即売会は不要不急としてたびたび開催を見送られた。
私が申し込んだイベントも流れた。
イベントが開催されても、参加者は激減した。
もはやマイナーCPとか、小説書きがマイナーとかいうレベルの問題ではなかった。
そもそも人がいなかった。

コロナ禍がやや落ち着いてきた、一昨年の秋頃。
とある方から声を掛けられ、当時ドのつくマイナーだった例のカップリングのアンソロジーに参加することになった。
別のコンテンツに流れたり靡いたりして、そのカップリングはしばらく書いていなかった。
漫画が全盛だった、初参加の同人誌即売会イベントのことを思い出して、少し二の足を踏んだ。
「あなたの書いた、あのときの作品が大好きです」
それでも、初めて出した同人誌の名前を告げられて、心が動いた。
書いた。
書かずにはいられなかった。

翌年六月、つまり昨年の六月。
そのカップリングで、新しく小説同人誌を書いた。
当初、即売会イベントには参加せず通販のみの取り扱いにしたが、初めて同人誌を出したときの比ではないくらいに、同人誌は多くの読者の手に渡った。
最初に印刷した分では部数が足りず、再版した。

コロナ禍を経て、二次創作の界隈も変わった。
小説を書く二次創作者も増えた。
小説書きが冷遇される風潮は、いくらか薄くなった。

そして今年の六月末。
四年前にはごく少数のサークルしかいなかったあのカップリングは、東京の同人誌即売会でCPオンリー(そのCPだけを集めた企画)が開催される。
六月末に開催だというのに、今日そのイベントの参加申し込みが上限に達し、サークル参加が締め切られた。

私も参加する。
遠征費とか印刷費とか〆切とか、あとはパソコンが壊れたとか、心配事はいろいろあるけど。

かつて孤独だった、四年前の私へ。
もうマイナーじゃないぞ。

良ければサポートお願いします。お茶代とか文房具代に使わせていただきます。