『華氏119』―マイケル・ムーア監督のためになる映画3選<第3弾>
こんにちは。みむとです。
マイケル・ムーア監督の作品紹介第3弾!これが今シリーズ最後の投稿です。
『華氏119』(2018)
今回はトランプ大統領選が就任した後叫ばれた“トランプ・ショック”に関する作品です。
これを初めてみたのは大学1年の頃でした。近所の小さな老舗映画館にサークルのメンバーが集まるというので雨の中自転車をこいで観に行った記憶があります。普段は滅多に映画館を利用しないうえ、内容自体がとてもとても衝撃的でしたから、この『華氏119』は私にとって指折りの印象的な映画となっています。
「2016年11月9日、アメリカはもちろん世界中の人々が、何かの間違いか、大掛かりなジョークかと驚いた。ドナルド・トランプがアメリカ大統領選の勝利を宣言したのだ。それからというもの、メキシコ国境間のフェンス建設や、パリ協定離脱などトランプは当時の公約を果たしつつ、常に世界を動揺させている。
一方で、銃乱射事件で生き残った高校生の銃規制強化への涙の訴えや、汚染水問題に抗議する住民、教師による賃上げ要求ストライキなど、巨悪に立ち向かう個人の勇気ある行動が、全米へと広がっていくムーブメントも追いかける。必要なのは甘っちょろい“希望”ではなく、即座の “行動”だ 」(作品パンフレットより、筆者改編)
事態がどれだけ深刻で、人々が団結して喫緊に対処しなくてはならないかがパンフレットからも伝わってきます。
3つの事件
この作品で、ムーア監督は主に次の3つの事件を追っています。
・水道水汚染問題(ミシガン州フリント)
2010年、大富豪で共和党のリック・スナイダー州知事に。スナイダーは、2014年4月、新パイプライン建設のため、フリントの水源をヒューロン湖から汚染されたフリント川に変更。市民に鉛中毒などの健康被害が広がった。しかし、抗議に対し、当局は汚染の事実を示す調査結果を隠蔽および改ざん。
さらに国防総省はフリントを陸軍演習場に利用した。
・教員ストライキ(ウェストヴァージニア州)
全米50州中48位の低賃金で過重な労働を強いられていた公立学校の教師たちが、健康保険料の倍増などで追い討ちをかけられ、2018年2月下旬から3月初めにかけてストライキを敢行。
公務員のストライキは違法のため解雇や投獄の恐れもあったが、全55郡の教師が立ち上がり、バス運転手と学校職員も参加。全員が賃上げを勝ち取った。教員のストライキはオクラホマ、ケンタッキー、アリゾナなど他州にも波及し拡大した。
・高校銃乱射事件(フロリダ州パークランド)
2018年2月14日午後、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で銃乱射事件が起こり、生徒や教職員17人の命が奪われた。犯人は退学処分になった19歳の元生徒で、凶器は殺傷能力の高いAR-15のライフル銃だった。事件の1カ月余り後の3月24日、同校の生徒たちが中心となって企画した銃規制強化を求める「(我らの)命のための行進」が、首都ワシントンD.C.をはじめ全米700箇所以上、世界でも100箇所で行われた。
――どれもこれも凄惨な事件である一方で、その後人々が安全な生活、大切な人の命の保障を勝ち取るために立ち上がっているところに共通点があります。
気候変動や、現代農業の過度な化学・資本集積的な開発などを通して。全世界的に水資源は枯渇してきています。また、教員はその重要な職務である教材研究に割く時間すらとれない。そんな過酷な状況で働かされていました。日本でも同じような状況が広がっています。
立ち上がる高校生
『華氏119』はエマ・ゴンザレスさんの演説で終わります。ゴンザレスさんは高校銃乱射事件を生き延びた学生(当時17歳)で、ワシントンの「(我らの)命のための行進」にて、銃撃が続いた6分20秒と同じ時間、演説をし、犠牲者を追悼しました。
https://www.youtube.com/watch?v=2yixXYbIsow
行進した高校生らはVote Them Out(銃を規制しない議員たちを落選させよう)と訴えた。上とはまた別の演説でゴンザレスさんはNRA(全米ライフル協会)から3000万ドルもの献金を受け取るトランプ大統領を糾弾しています。
あれから2年がたち、当時の高校生の多くが選挙権を獲得し大統領選を迎えます。コロナや気候変動で混迷する世界ですが、もう一度2016年11月9日を振り返ってみるのもいいかもしれませんね。そんな折、観るにはぴったりな作品です。
PN みむと