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『SiCKO』―マイケル・ムーア監督のためになる映画3選<第1弾>
こんにちは。みむとです。
今回は、「じゃねーよ!!」でおなじみマイケル・ムーア監督の作品を紹介していきます。
彼の映画にはアメリカを皮肉たっぷりに描く作品が多いですが、実は「はて、日本も中人ごとではないな」と観ていて背筋が凍るものばかりです!しかも、エンターテインメントとしてとても楽しめます。
『シッコ SiCKO』(2007)
数回にわたって紹介していきますが、まずは医療問題をテーマにしたものから。
先進国で唯一、“国民健康保険”が存在しないアメリカでは、国民の6人に1人が無保険。毎年1.8万人が、医療費を払えないために治療を受けられず死んでいく。しかし『シッコ』は保険に入っている人々についての映画である。
え?なら何の問題があるの?それは、アメリカの医療保険システム!この問題のシステムにより人々は高い保険料を払っていても、一度大病を患えば治療費が支払えずに病死か破産を迎えるしかないのだ。「こんな医療制度はビョーキ(Sicko)だ!!」マイケル・ムーアがほえると、医療業界はたちまち厳戒態勢に!! (DVD説明より)
中指、薬指をけが。
治すのにそれぞれ600万円、120万円!?
日本では考えられませんが、国民皆保険制度が導入されていないためにアメリカで実際に起きている問題が取り上げられています。
2014年に導入された「オバマケア」(医療保険改革法)で、新たに2000万人が保険に加入できるようになったと言われ、この医療問題は「緩和」されたと言われています。
しかし、実は凄惨な事件は起こり続けています。
たとえば、堤未果『沈みゆく大国アメリカ』では、オバマケアによってメディケイド(低所得者向け公的医療保障)の門戸が開かれたことで家を失うリスクが増大したと指摘されています。
「オバマケアが基準を緩めたことで、メディケイド受給者は大量に増えたけれど、今まで受給できなかった中流の下あたりの人々は、一九九三年に成立した資産回収(Estate Recovery)法の対象になる」とアリゾナ州在住の内科医ジェーン・オリエント医師と言います。資産回収法とは、55歳以上でメディケアを受給している場合、死亡した時点で州に自宅などの資産を没収され、それまで払った医療費を回収するというものです。
「オバマケアは資産チェックを廃止して収入条件をゆるめ、回収する費用の対象を、介護施設からすべての医療費にまで拡大しました。次々にメディケイドへ送りこまれる中流の人々に、本当のことを知らせるべきです。中には単純に、医療費が無料になるといって喜んでいる人もいますが、メディケイドは<福祉>じゃない、新しい形の<借金>ですよ」(堤同書より、筆者改編)
そして、リーマンショック以降「貧困大国」となっているアメリカで、自己破産理由のトップはなんと「医療費」なんだそうです。
さらに、最近では「オバマケア」は巨額の財政負担を強いるもので、保険に加入するかしないかを決める個人の自由も奪うことになるなどとして、トランプ大統領がその撤廃を訴えています。まだ完全な撤廃には至っていませんが、今年の大統領選での争点になることは必至です...!!
と、映画紹介から話がそれてしまいましたが、ともあれ「先進国」を掲げる国の医療体制は悲惨なものです。このコロナ禍でアメリカに限らず、日本でもこの矛盾は顕在となっています。
ではなぜ、ここまでひどい医療になっているのでしょうか。
作中でマイケル・ムーアは患者を見捨て(本当に点滴チューブをつけたままの患者を路上に放置することも!)、莫大な利益を生み出している保険業界、政府もろもろを批判。つまり、人間の強欲な一面も糾弾しているのです。
私たちを支える医療がどんなものであるべきなのかとても考えさせられます。
“アポなし突撃男”が医療を描いた映画『シッコSiCKO』はドキュメンタリーとして、なによりエンターテインメントとしておうち時間にぴったりです。医療保険について知る一歩としてご覧になってはいかがでしょうか。
PN みむと