11.魂のカタルシス〜渡辺さんとまなみ編〜②
渡辺さんはまたイメージを見せてくれた。
奥さんも娘さんも笑っていて
休みの日はみんなで買い物へいき
奥さんと2人で夜はお茶を飲みながら
テレビをみてゆっくりしている。
山笠に浴衣で妻と娘が見にきてくれて、
帰りはみんなで、屋台を回って帰る。
もっというと、
娘が結婚して孫ができて、
山笠の半被を着せて、肩車をする。
【そんな普通の家族になりたかった。】
私は言った。
「次に生まれ変わったら、
笑顔溢れる家族に恵まれて
幸せな毎日を過ごせるといいですね。」
【ありがとう】
渡辺さんは私に頭を下げて消えた。
妹の背後の2体目に意識を向ける。
今度は若い女性だ。
頭から血を流している。
その時、イメージがみえてきた。
また亡くなった時の映像だ。
【助けて、、、子供が、、、】
女性は事故に遭い、車体に体が挟まれていた。
【赤ちゃん、ごめんね、、、】
車から体を出そうとしている。
【後ろに子供が、、、助けて、、、助けて、、!】
声が出ない。
【ごめんなさい、、、助けて、、、!】
そのまま意識を失い亡くなった。
その事故現場にずっと、彼女の無念が残されていて、
その場所を通った、私の妹に憑いたようだ。
理由は、妹と彼女自身の環境が似ていて助けを求めたようだ。
私の妹も子供がいて、更に妊娠中だった。
私は彼女に聞いた。
「本当はどう生きたかったの?」
彼女は答えた。
【2歳の子が後ろに乗ってたの。
チャイルドシートに乗せてて、泣き出したから
振り返って声をかけてた。
まさか、ぶつかるなんて。】
泣きながら話す。
【お腹に赤ちゃんがいた。】
手をお腹に当てて言った。
【赤ちゃん、ごめんね。
生まれてこれなくてごめんね、、、。
パパとお兄ちゃんに合わせてあげられなくてごめんね、、、。
私が事故したせいで。】
私は寄り添い、彼女の背中をさすった。
彼女に触れた瞬間、場面が変わる。
彼女が住んでいる団地。
2歳の子の食事の片付けをしている。
テーブルの下に食べこぼしたカケラを拾い、
こぼれた、麦茶をふく。
結婚して子供ができて、仕事を辞めた。
結婚したらお金が足りなくなるのは
わかってた。
貯金もなくなって、旦那さんのお給料では
ギリギリの生活だったから、保育園が見つかったら早く仕事をしたかった。
だけど、2人目の妊娠がわかって嬉しいような複雑な気持ちだった。
【毎月、生活費が足りなくて親に貸してもらって
自分の欲しいものも買えないし、
美容院にも行けなくて、
友達の誘いも、子供が病気したってことにして
断ること多くて。
旦那さんは働いてくれてるから、それ以上言えなくて。
毎日、お金が欲しいな、生活が苦しいなって
思ってた。
だけど、本当は結婚して子供がいて赤ちゃんもできて、幸せなんだってこともわかってた。
旦那さんにも子供にも、赤ちゃんにも謝りたい、、、。】
「じゃぁ、旦那さんと子供さんと赤ちゃんに謝りに行こう。」
私がそう言った時、また場面が変わる。
彼女の葬儀だ。笑顔の素敵な遺影が飾られている。
つづく
#創作大賞2024 #ホラー小説部門
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