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17.魂のカタルシス〜白い女編〜②

【結局、私は母親にはなりきれない。

ほしくて産んだわけでもないし。

でも、おろしたりできなかった。

妊娠したのわかった時、1人じゃないって
優しい気持ちになった。

その時、初めて満たされた。】

「じゃぁもう一度、子供のために生きる人生を体験してみようか」

彼女がうなずくと、その瞬間場面が変わる。

彼女はクリーニング屋さんでパートしていた。

マンションは親に買ってもらって

食費だけを自分のお給料から出す。

子供を保育園にお迎えにいき、
帰宅してご飯を作って食べる。

何げない光景だが、亡くなってしまった彼女にはもう訪れない。

子供の目を見て、話しかけて
彼女は一瞬一瞬を噛み締めていた。


【あたし、勘違いしてた。好きなことしていんだ。

しちゃいけないって

思っててできなかった。

結果的には

好きなこと、でたらめなことやって、からまわり
になってた。

それは、満たされてなかったから、
何やってもその瞬間を生きてなかった。

本当に好きなことしていんだ。

選んでいんだって思ったら、

逆に大切なものがわかって

心が満たされた。常にみたされてる。

あたしは何にもわかってなかった。】

いい子でいようとして、自分を押さえて、

年頃になって好きなことしようと思っても

どこか満たされなくて。

「寂しかったんだね。悲しかったんだね。」

私は声をかけた。

彼女は子供を抱きしめて泣いた。

【ごめんね、こんなママでごめんね、

ちゃんと愛してあげられなくて、ちゃんと見てあげられなくてごめんね。】

母と娘の親子連鎖は繰り返される。

自分が感じた母からの影響や環境は

似たような状況を生きる。

彼女は、母親に自分を見てほしかった。

関心を持って接して欲しかった。

その気持ちが満たされないままだったから、

何をやっても満たされない。

彼女が落ち着いた時、イメージが消える。

白い女は、若くかわいい本来の姿になっていた。

【ありがとうございます】

頭を下げた。

私は気になっていた事を聞いた。

「どうして夫が私の旦那さんってわかったの?
なぜ、浄仏できるって思ったの?」

【真っ暗な世界に、うっすらと光がみえたの。

あぁ、これで浄仏できる、って思った。

その光に近づいて行ったら、ロウソクの火だった。

そのロウソクを手に取ったら、あなたが目の前にいて言ったの。

『たぶん、女の人ついてるよ。』って。

よかった、この人私が見えてる。私を浄仏させてくれる。
やっと苦しみから抜け出せる。って。】

彼女の話だと、私の夫ってわかって憑いてきたわけではなかった。

そういえばマンホールに捨てられたって言ってた。

「どこのマンホール?」

【山道の中に駐車場があるの、そこのマンホール。

ありがとう、旦那さんによろしくね】

浄霊終了


翌朝、夫に聞いた。

「昨日、山道の途中に駐車場とかある場所に行った?!」

夫は目を大きく開いた。

「行った!!そこから憑いてきてた!?
やっぱり変な感じしてたんだよねー」

取引先の人とカブトムシの話になり、
いい場所がある、と仕事途中に偵察に行ったらしい。
昨夜の浄霊の話をした。

「もう、そこ行くのやめよ。」

いいカブトムシスポットだったようで、
残念そうにした。

「大丈夫、もう、浄仏したから」

笑顔で私が言った。

白い目で夫は答えた。

「そうゆう問題じゃない。」


つづく

魂のカタルシス〜白い女編〜完


#創作大賞2024 #ホラー小説部門

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