7.魂のカタルシス〜美沙編〜②
※登場する人物や団体は架空のものであり、実際の個人や集団を指すものではありません。
2人だけ(私1人しかいないように見えるかも知れないけれど)になった式場で彼女に話しかけた。
「あなたはどうしてここにいるの?」
【約束したのよ。結婚しようって。】
「できなかったの?」
彼女は答えなかった。
【どうしてここへきたの?まぁ、わかってるけど、、、。私を浄霊しにきたのよね。
実は私、もう少しで現象を起こすつもりだったの。
よくゆう、ドアが勝手に開いたり、
モノが突然飛んだりするやつ。
あれ。いわく付きに更に輪をかけるような現象であからさまに、いるよ、って
アピールしようかと思ってた。】
「どうして?」
【ここの支店長ね、社内不倫してるのよ。
神聖なこの場所で若い社員の子とコソコソと。
そんな式場でこれからってカップルに
一生に一回の結婚式を
あげてほしくないでしょ。
だから、悪い噂を流して警告しようと思ったの。
そしたら、ちゃんと本人の耳に入った。
だけど、自分で責任取る形を選んだから
私ももうそろそろいいかな、浄仏しようって思ったの。
あなたに依頼するって流れにすれば、
なぜ私がこんなことをしたかもちゃんと本人に伝わるでしょ。
だから、あなたに来てもらうために事務の子に話がいくように仕組んだの。
支店長が浄霊代をしっかり払って、反省して
くれたら許してあげようと思ったのよね。
あ、だから、とりあえず、浄仏はするけど、
その後の事によっては
なんとでもできるのよって伝えといて。】
「わかりました。それで、、、
あなたは本当はどう生きたかったの?」
浄霊開始
【本当は相手なんていないの。ずっと独身だった。
だけど、結婚ってことに憧れるでしょ。
ドレスとかだって着てみたいし、女の憧れよね。
結婚と結婚式って。
昔ね、ここで友達が挙式したの。
で、ブーケをもらったの。相手もいないのに。笑】
久しぶりに会った友人と溜まっていたネタを吐き出すように、彼女は淡々と話し続けた。
【仕事ばかりしてたから、出会いもなかったし。
でもね、実は私が支店長を
許せないのも理由があるの。
実は、私も会社の上司と不倫してたの。】
少し遠い目をした。
【先がない事もわかってた。
でも、1人じゃないって事の方が大事だった。
誰かと繋がりがないと、今、
自分の生きてる意味とか考えちゃって、
何やってるのか、
なんで仕事してるのか、
何がこの先楽しみなのか、
何のために生きてるのか、
よくわからなくなるのよね。
深いの愛とか、愛されたいとか
真実の愛とか、運命の人、とか
憧れているくせに、
現実はこんなもんなんだって思っちゃうのよね。】
私の知っている式場にいる花嫁さんは
笑顔が素敵で、見ているこっちまで
幸せな気持ちになるものばかりだったのに、
今見ている女性は綺麗なドレス姿で
とても切ない悲しい顔をしている。
あ、そうだ、この方は亡くなってたんだ。
ふと我に返る。
そんな感覚を忘れさせるほど、彼女の話に入り込んでしまう。
【子供の頃ね、将来の夢は綺麗な奥さんだったの。
私の母はすごく家庭的で、いつも綺麗にしてて
家も綺麗で、料理も上手で、お菓子やスイーツも手作りしてくれてた。
母のようになりたかったし、
なれると思ってた。
だけど、私が学生になった頃にうつ病になって
その後は、癌まで見つかって、亡くなったの。
亡くなる直前、私に言ったの。
それが私にかけた最後の言葉。
つづく
#創作大賞2024 #ホラー小説部門
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?