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国王の占い師

男はその重大な事柄にタロットを読み間違えてしまったと、のちに後悔する。


「よし!では、その国へ行こう」


王は張り切って100人ほどの家来を連れ出発した。

数日前、

南にあるその国は評判が良くなかったが、
今後の国の繁栄を考えて、協定を結ぶのに良いかどうかを決めかねていた。

側近の家来が、もう少し様子をみてみるほうが良いと言ったこともあり、

王はいつもの占い師に相談することにした。

占い師はタロットを広げて読む。

「みんなで会議している。
未来のところでは、ゆっくりではあるが、お互いの価値観を認め合い、これまでこの国にはなかった新しい繁栄に向けて
とっても良い結果となるでしょう。」

王はその結果を聞くと、
側近の言葉も頭をよぎったが

「よし!ではその国へ行こう!」

と言った。

出発の朝、占い師はもう一度タロットを引いた。

戦車、タワー、が逆位置、最後に死のカードが
正位置ででた。

「ゆっくりではあるが、国の考えや価値観が
崩され、しかし、必要な変化である事が後からわかる。」か。

そう読むと、カードを集める。

ヒラっと一枚カードが落ちた。

拾ってみると、

ラバーズのカードが逆位置。

「双方の意見が食い違うのかもしれないな。

何かを一緒にやるというよりは、

まずは新しい気持ちで寄り添う事がたいせつかもしれないな。」

それを王に伝えておこう。

王は側近と家来を連れて出発した。


そして、その時はきた。

その国の城の手前が長い崖道になっていた。

列の真ん中を歩いていた王の馬の足元が

カランっと小石を蹴った。

その瞬間、

雪崩れるように右側の崖が崩れ始めた。

王を含め数十人の家来が巻き込まれ一瞬で

崖の下に見えなくなった。

先頭を歩いていた2名の家来を残して。




牢獄に入れられた男。

裸で両腕が鉄で繋がれている。

あの、戦車とタワーの逆位置は

崩れ落ちる崖、そして本当に死を表していた。

出たカードは真実を教えてくれていたのに

私が読み間違えた。

男は後悔と絶望の牢獄いた。


絶望の中、眩しい光がどこからともなく差し込んだ。

不思議な光景を目にする。

目の前に色白のアジア人女性が現れた。

「私を迎えにきてくれた天使か。」

女性は、体罰を与えられた体をギュッと抱きしめた。

「辛かったですね。悔しかったですね。。。」

「うう、、、」

男は涙が溢れた。

「しかし、あなたの読みは間違ってなどいません。

この結果は、将来この国にとって良い結果となります。

あなたは使命を全うしただけのこと。

あなたはきちんと自分の役目を果たしました。

ご自分を許してください。

私は前世のあなたの御霊です。

さぁ、口に出して言ってください。

私は私を許します。」


「わたしは、わたしを、ゆるします、、、」

「私は使命を全うしその役割を果たしました。

私は私を許します。」

「わたしはしめいをまっとうし、そのやくわりをはたしました。わたしは、わたしをゆるします。」

男は泣きながら言い続けた。

前世の自分が癒しに来てくれたとわかると
男の心は暖かく優しい気持ちなった。

ゆるされるのではない。
自分で自分を許すのだ。

やれることはやった。

そして、女ははどうしてこうなったのかを教えてくれた。

あの時、王がいけなかったのは占い師に依存していた事です。

側近の意見を聞いて、占い師の見解を聞いて、

自分を信じて答えを導き出せばよかったのに。


あの時、「会議している」とペンタクルの3のカードを占い師は言った。

王は占い師の言う事に従い自分で重大な決断をしていなかった。

そして
こうなった今、占い師のせいでこうなったと責任転換している。

大事なのは、聞いた上で

それをどう選んでジャッジするか、選択するのか
自分の責任の元、行う事だ。

王は側近の意見や占い師の意見ばかりを当てにして、自分で考えた決断を決めることはなかった。

女は言った。

「あなたのこの経験から、私の魂には
占うことの恐怖がありました。

しかし、私を許す、とあなたが言ってくれたおかげで、私は、
これからも安心して誰かの占いをする事ができます。

過去世のカルマの解消です。

どうぞ、自分のために、これからのたくさんの方のお役に立てるよう、ご自分のことを
愛してください。」

未来からきた女はゆっくりと消えた。


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