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12.魂のカタルシス〜渡辺さんとまなみ編〜③

若い男性が祭壇の横に座っている。

旦那さんか。

彼女はゆっくりと彼に近寄り抱きしめた。

「優くん、ごめんね、、、。

ごめんなさい、、、。」

その時きっと彼にも伝わったのだろう。

彼は手をギュッと拳を握ると涙が溢れてた。

「まなみ、、、」

存在はみえないが、声は聞こえたかもしれない。

奥の部屋で小さい子供とご両親が面倒を見てくれているのだろう、あやしている声がきこえる。

彼女は彼から離れると奥の部屋へ向かった。

【お母さん、、、。】

彼女のお母さんが子供を抱っこしてくれている。

そのまま母と子供を抱きしめた。

【とわくん、ごめんね、、、。

お母さん、ごめんなさい、、、。】

その時、子供が言った。

「ママ、、、大丈夫?」

その場にいた大人が一斉に子供を見た。

「ママ、、、泣いてる。」

抱っこしていたお母さんも涙が溢れた。


子供には見えている。

無事で元気そうでよかった。

「あなたは子供を守ったんだね。

無事でよかったね。でも、育てたかったよね。

あなたも苦しくて、辛いね。

だから、赤ちゃんを連れて浄仏しよう。

旦那さんと子供を見守るんだよ。

そして、あなたも、また幸せな家庭に生まれ変わろう。」

彼女はうなずいた。

その場から離れて私に頭を下げた。

その時、彼女は赤ちゃんを抱いていた。

あぁ。よかった。赤ちゃんも一緒だ。

彼女が赤ちゃんを見つめる。

【ごめんね、、、。また一緒に家族になって
生まれ変わろう。
その時はちゃんと産んで育てるから。
ごめんね、、、。】

赤ちゃんはスヤスヤ寝ている。

きっと大丈夫。

そう思った瞬間、先ほど浄仏した渡辺さんが現れた。

「え?!どうしました?」

私はビックリしすぎて恐怖だった。

【その事故の相手は僕です。】

私と彼女は目を見開いた。

【あの、申し訳ありません!私がよそ見をしていたから!!
本当に申し訳ありません!!】

彼女が頭を下げる。

渡辺さんは手を差し伸べた。

【いや、いや、死んでしまったのはその事故が原因ではないから。気にしないで。

それよりも、僕もこれから浄仏するところだから、
あなたのおかげで私も浄仏できる。

COTOMIさん、
3人で一緒に行ってもいいですか?】

「あ、彼女がよければ、、、。」

私は急な展開に戸惑った。

【ありがとうございます、是非。】

彼女はどこか安心したような顔をした。

渡辺さんは優しい方だったから、
若くして亡くなった彼女と赤ちゃんを心配して
声をかけてくれたのだろう。

しかも、その事故の相手。

お互い、浄仏できていない念をこの世に残していたご縁。

色んな事があるが、やっぱり不思議な世界だ。

【ありがとうございました】

彼女が頭を下げる。

渡辺さんとまなみさんと赤ちゃんは

ゆっくり消えていった。

浄霊終了


妹に電話して内容を伝える。

まなみさんの話しに共感し、泣いていた。

「そうよね、今の幸せが当たり前じゃない。

私も改めてそう思った。
姉ちゃん、ありがとう!」

「どう?体は楽になった?」

「うん、終わったのわかったよ。

体が楽になって、
穏やかな気持ちになったから、
あ、終わったんだろうなーって思った!」

「きっと何かお礼が来ると思うよ。

見えない世界からいつもサポートしてもらってるから、感謝するのが大事。

困った時もお願いして、感謝するといいよ!」


普段は目に見えていないだけで、

誰にでもご先祖様や守護してくださっている方がいて、

目に見えないサポートや、目に見えるサポートを受けています。

日々、場所はお墓や仏壇の前じゃないとダメだとか決まっていないので
ふと思い出したり、感謝したりするのが
大事です。

いつでも、どこでも、思い出せば
大切な人と繋がれます。





魂のカタルシス〜渡辺さんとまなみ編〜完

つづく


#創作大賞2024 #ホラー小説部門

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