10.魂のカタルシス〜渡辺さんとまなみ編〜①
※登場する人物や団体は架空のものであり、実際の個人や集団を指すものではありません。
今回の依頼主は私の妹だった。
霊感のある妹は、体が重く、旦那さんに無性にイライラするから何か絶対憑いてる、と
私に連絡してきた。
私も持っている症状の一つで、
霊に憑かれている時に、パートナーに
普段だったら何も思わないのに、
無性にイライラしたり、モヤモヤしたり
生理前のような感情になる事がある。
妹もそのパターンだった。
写メを送ってもらい霊視。
妹の後ろに二つ影があった。
浄霊開始
目を瞑って霊に意識を向ける。
1体目。
イメージは亡くなり方から見えた。
首を吊って自殺したおじさんだった。
山笠の人だったみたい。
優しく明るく人当たりの良いご主人だったが
妻と娘とはうまくいかなかった。
妻はいつもイライラしていてヒステリック。
おじさんを何かにつけて、罵倒し怒っていた。
「邪魔!何もしないならどっか行ってて!こっちはやることいっぱいあるんだから!
あんたはいーよ、休みがあるんだから。
仕事行って山笠いって、暇だったら釣り行ってさ!それ以外、何にもやらなくていんだから。
ご飯が座ったら勝手に出てくるんだもんね!」
社会人になった娘も父親を邪魔扱い。
「え?休みで家にいるの?うざっ」
虚しく寂しい日々。家に居場所はない。
安らぎもない。
家族のために建てた大きな一軒家。
毎日奥さんの罵倒とイライラが
自分の存在価値も否定されて、なぜ、
この生活をしているのか、と自分に問いた。
でも、家族が好きだったから
いつか普通野家族みたいに過ごせる時が来ると思っていた。
山笠が好き
仕事も好き
あとは、家族が、奥さんがいつもニコニコしてくれていて娘も普通に接してくれてくれたら。
そんな時、事故にあった。
「渡辺さん、大丈夫ですか?」目が覚めると病院だった。
看護師さんが、家族を呼んでくると言う。
病室に入ってきた妻が言った。
「どうせならあんたが
死んでくれたらもっと大きな保険金が入ったのに。
相手の方は亡くなってしまって、まだ小さいお子さんもいるのに、気の毒に。」
衝突事故で相手の車がぶつかってきたのだが、
運転していた女性が亡くなったという。
おじさんは、まだ頭もボーとしている中で状況を把握していった。
おじさん、渡辺さんはその後、事故のショックも重なり、うつ病になった。
益々、妻の罵倒がひどくなり、その後自ら命を絶った。
私は渡辺さんに聞いた。
「本当はどう生きたかったの?」
【本当は、幸せな家庭が欲しかった。】
つづく
#創作大賞2024#ホラー小説部門
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