⒈魂のカタルシス〜薩之綉偏〜
登場する人物や団体は架空のものであり、実際の個人や集団を指すものではありません。
「職場の子が何か憑いてるっぽいんだよね。
見てもらっていい?」
親友からのLINEだった。
「オッケー。その子の写メ送ってー」
私はいつも通りに送られてきた写メを見て、
霊が憑いてることを伝える。
まさに今、仕事中に撮ったのだろう、
看護師の制服だった。
背後に黒い影。
憑いている場合は、浄霊するかしないかを
本人にお任せるがその場合はお代を頂くことを文章で返す。
「女性の霊だね。
どうやら飲み屋さんで憑いてきたみたい。
BARみたいなところのカウンターにいた霊っぽい、心当たりあるかな?」
「最近、毎晩のように行ってるBARがあるから
そこだと思うって。そこに行きだしてから
体調がおかしいって思ってたらしくて、、、。
浄霊お願いしたいって。」
「了解、今回はこっちでやれるから終わったらまた連絡するね!」
私は写メに写っている霊と対話して
浄霊することができる。
わざわざ対面したり、現地に行ったりしなくてもいいので、依頼者からは遠隔ですか?とか言われるけど、わかりやすくゆうとzoomみたいなもの。
浄霊開始
目を瞑り、もう一つの見えない世界へ入る。
BARらしき場所のカウンターテーブルの椅子に座っている。
視線を感じて
足元を見ると、女性の霊がこちらをみている。
さっきの霊だ。
「どうして、あの子に憑いてたの?」
霊に話しかける。
【あいつ、嘘つきだから】
「嘘つき?」
【本人に言ったらわかる】
そっけなく、女性特有の嫌らしさを含んだ口調だ。
「あなたは本当はどう生きたかったの?」
この私の質問で、目が曇り、うつむく。
【私は、、、正直に生きたかった】
こちらの世界では、その人のみせたい映像の世界がコロコロかわる。
人間が夢の中で見る世界と似ている。
そして、その霊が自分の人生をみせてくれた。
生前の彼女は、愛され方がわからなかった。
どうすれば大事にされるのか、
自分だけを見てくれるのか、自信がなかった。
出会いはよくあったけど、長くはいつも続かなかった。
別れて1人になるたびにBARで飲んでいた。
私の浄化法は、叶えたかった理想の世界を体験すること。
彼女が正直に素直な気持ちで生きて
パートナーに大事に愛され
結婚して、子供ができて、幸せに暮らす。
イメージの中でその世界を味わってもらう。
【本当は素直になってもちゃんと愛されるのよね】
彼女は優しい笑みで言った。
私は微笑んで頷いた。
【ありがとう、次に生まれ変わったら素直に生きる。
本当はそれが大事ってわかってたけど、それが怖かった。本当の自分に自信がなかったから。
嫌われたくなかったから。
でも、だからうまくいかなかったのよね。
私が本当の私じゃなかったから】
本来はすごく綺麗な人。
「憑いてた子にメッセージはある?」
【素直になること。そうすれば、嘘はつかなくてよくなる、そう伝えて】
「わかりました。」
私は笑顔で挨拶した。
彼女も頭を下げて、消えた。
浄霊終了
浄霊のメッセージの内容的にも直接本人に伝えたほうが良さそうだと判断したので、
LINEを繋いでもらった。
依頼主はメッセージを聞いて、濁したような返事をした。
「嘘?ですか??なんでしょうねー?なんだろー。」
しかし、心当たりがあったからそれ以上はあえて話さないようにしたんだろうと感じた。
翌日、その子の彼氏も見て欲しいと連絡があり
その彼の写メをもらった。
そしてそれは、突然やってきた。
つづく
#創作大賞2024 #ホラー小説部門
続きはこちら↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?