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リハビリスタート

リハビリ病院での初めてのリハビリは理学だった。Iさんが病室まで迎えにきた時、テレビカードもないのでテレビも見れない、スマホもないので暇つぶしもできない、話し相手もいないからお話しして過ごすこともできないと言う状況でお昼寝をして過ごすしかなかった。

「kaoさん…リハビリの時間ですよ。」

そう声をかけられびっくりして目を覚ました。
寝てた!?
寝るつもりなかったんやけどなぁ…
何もすることないし寝ちゃうよねぇ

「目覚めました?」

『うん』

ベッドから車椅子に移りエレベーターで1階まで降りる。
リハビリって何するんやろ。
急性期でもリハビリしていたはずだけど、私の記憶ではリハビリではなく遊んでたのでリハビリ認識はされてなく初めてのリハビリと勝手に思い込んでいた。

リハビリ室にはたくさんの患者さんがいてそれぞれのリハビリをしている。
へぇ、結構人いるなぁ。
杖で歩いている人、抱き抱えられて歩いている人、輪っかを移動させている人、とにかくいろんな事をしていた。
私はリハビリ室の真ん中くらいにあるベッドに腰掛け、前にはL字になってる手すりを置かれる。

「手すりにつかまりまって立てますか?」

『できる〜』

やったこともない癖にできると自信満々に答える。右足は確かにうまく動かない。だけど、左足で支えれば立てる気がした。
手すりにつかまり立ち上がる。
そんなに役に立ってる感じはなかったけど右手も手すりに添えていた。
力は入らないので添えてるだけだけど、私の頭の中には支えるなら両手使うのが当たり前でしょって言う思い込みから無意識のうちに右手も参加させていた。

この日はただひたすら立ったり座ったりを繰り返した。思ったより疲れる。このたち座りができる事でベッドから車椅子の移乗が楽になった気がする。

「あっ、これできるようになっても1人でやったらダメだからね」

釘を刺され病室へ戻された。
次のリハビリはお昼ご飯食べた後。
お昼ご飯を持ってきてくれる。

「夜ご飯から食堂で食べよっか。」

持ってきてくれた看護師さんが思い出したように言った。
食堂とはどこやろか。
どこで食べても一緒だけど1人で食べるより大勢で食べたほうが楽しいよね。
お話できる人いるかなぁ…
とにかくひとりぼっちのご飯は嫌だった。

午後からはこの後退院まで恒例になる午後イチの作業のリハビリだった。
お昼を食べた後、ベッドに戻ると朝のリハビリの疲れもあっていつの間にか眠っていた。

「おはようございます。リハビリの時間ですよー」

『ふぁっ、おきてますー』

寝てた癖にどの口が言った?と言う返事を返した。

「まぁ、午前中疲れてお昼ご飯食べたら眠くなりますよね〜。車椅子乗ってリハビリ行きますか。」

午前中に移乗の仕方は教えてもらったのでベッドについている柵につかまりベッドへと移る。
手を貸しながらその様子を見ていたTさんは何かを思いついたらしく、あったかなぁ…?と呟いていた。

彼とのリハビリはまず肩の様子のチェックから始まる。自分では何の自覚もなかったが右の肩の関節は間が開き気味になっていた。ベッドの上で右手を頭の上まで持っていくとコクンという感じでひっくり返っていた。

その後、机の上にタオルを置きワイパーのように動かすという練習をした。
ただタオルに乗っけただけの手では思うように動かすことはできなかったが、全く動かない状態ではなく、そのうち元のようには動かなくてもある程度は右でもできるんじゃないかなぁと思えた。
Tさんは少し早めにリハビリを切り上げると病室に戻り、ちょっと待っとってと私を車椅子に乗せたまま部屋を出て行った。
戻った手には柵。
それに付け替えると柵についた扉部分を開けた。

「コレで立ち上がりやすくなるやろ。」

付けたのはL字バー。
車椅子からの移乗時も正面にバーが来るのでつかまりやすかった。
コレはコレでオッケー。
L字バーの反対側の柵にはタオルを巻きつけてテープで止めた。

「ベッドにただ寝てても暇でしょ?肘を脇につけてお腹とタオルの間をワイパーみたいに行ったり来たりさせておいて。」

とにかく暇になったらお腹とタオルの間を行ったり来たりさせろということだった。

1日目にして暇つぶしという名前の自主練がスタートした。

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