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ジブリの森のえいが『毛虫のボロ』を1歳8ヶ月の娘と観てきました
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・作品レビューを始めたきっかけ
小さい頃からジブリが好きで、大人になってからもずっと好きです。
初めて東京にきた頃、ジブリのスタジオを見てみたくて、最寄り駅だという東小金井駅へ降り立ち、本当に蔦が生えていた外壁をじっと見つめていました。そんなに暑くない夏の日で、午後に着いたのを覚えています。
わたしもスタジオジブリから溢れる緑のひとつになりたいな、と思ったものです。
いつかスタジオジブリとお仕事をする人になるのよって、あいみょんさんの歌みたいな夢をみたり、誰か出てきてくれないかなーなんて、期待しつつ。
それから10年以上経って結婚をし、子供が産まれました。
もうすぐ2歳になるその子は、テレビは見ていないけれど、リトミックのお歌や、絵本やおもちゃでトトロを覚えました。
テレビを見せることは普段ほとんど無いのだけれど、娘は絵本が好きだし、キャラクターのお名前を覚えるのも大好き。
ちょっと親の趣味に付き合ってもらっている感もあるけれど、月に1回くらい、10分程度、映画館でアニメを観る贅沢を体験してほしい。
わたしは娘と一緒に、土星座のアニメを全部見ることを目標にしました。
そして、せっかくなら、見たときの様子を記事にまとめていこうと思いました。
たとえば、遠くから三鷹の森ジブリ美術館へ行こうと思っていて、かつ、小さいお子さんといっしょに土星座で映画を見ようとしている方。あまりにも前情報が少なくて、子どもにどの作品を見せようか、と考えたい方の参考になればうれしいです。
また、イラストやジブリを好きな方が、気楽に楽しんでいただける記事を描くことができれば、それもうれしいことです。
みなさん、どうぞよろしくお願いします。
・「毛虫のボロ」とは
草むらのなか、夜が明ける前に卵からかえった毛虫のボロ。
初めて見る朝陽はとてもまぶしくて、世界はおいしそうな空気にあふれていました。ボロは、ボロギクの根元に降り立ち、毛虫の先輩や外敵が行き来する世界へと踏み出します。
2018年公開
上映時間 約14分
原作・脚本・監督 宮崎 駿
音楽 久石譲
https://www.ghibli-museum.jp/cinema/works/#kemusshinoboro
毛虫のボロは2018年公開の作品です。
2025年1月現在、土星座では最も新しい作品です。
・観た日の娘の調子:ふつう
*腹減り度:朝食で白ごはんを結構残していたので、少しお腹が空いていた
*眠たさ:ちょっと眠そう
*体調:良い
*環境:若干人が多かったですが、ストレスに感じるほどではない
気温も室内ということで、暑すぎず寒すぎず、ちょうど良い環境だった
子どもって、その日の気分によって、目の前の物事に対する姿勢がガラリと変わりませんか。仮に上映中に泣きまくったとして、作品の所為ではなくて、うちの子の調子によるものだった場合、作品レビューにならないと思ったので、念の為、この日の娘のことを書き留めておきます。
土星座に入場するのを待っている間は、電車の先頭車両のようになっている映写室(らしきもの)を窓から覗き、待ち合い場で坂道になっている壁を登って遊び、作品紹介のイラストを眺めて、ごきげんに過ごしていました。
土星座の席に着いてからは、天井の月を見上げて「バナナ」と呼び、星の「きらきら」、鳥の「トリー」など、見つけたものを名前を口に出して喜んでいました。
「毛虫のボロ」を観るのは今回がわたしも初めてで、どんな内容かわからないので、ドキドキしていました。
なるべく通路側に座り、娘が泣いたらいっしょにお外に逃げられるように準備していました。
・娘(1歳8ヶ月)の反応
夢中度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5/5)
よく映像を見ていました。映画が終わったら「もっと見たいー」(実際にそう言ったわけではないですが)と泣いていました。
キャラクターへのお気に入り度:⭐️⭐️⭐️(3/5)
作品を観る前に、お土産や展示で「ボロだよ」と伝えても、あまり興味を示さなかったのですが、観終わった後はボロを好きになったみたいです。
お土産でボロのぬいぐるみを買って、娘に渡すと「ボロー」と呼んで抱きしめていました。ネコバスやトトロほどのお気に入りではないようだったので、3にさせていただきました。
怖がり度:⭐️⭐️(2/5)
もう少し親の対応がズレていたら、泣いちゃってたかもしれません。
おおむね楽しく観られたので、星を2にさせていただきました。
⚠️以下ネタバレ注意⚠️
冒頭、ボロが卵から孵るとき、とても嬉しそうに見ていました。ただ、ボロの周りを動く生き物にちょっとギョッとしてしまったようです。
「なんだろう」と固まった表情をしていたので、そばで小声で、
「お魚さんかなー、いっぱいいるんだねー」
安心してもらうために親から囁きボイスを聴かせていました。
お話の中盤で、虫界の魔王みたいなやつが出てくるのですが、その魔王が相当怖かったらしく「えっえっ・・・・・・」と声を出して泣きそうに。
「大丈夫よ。毛虫さん大丈夫よ」(実際は大丈夫じゃない)と囁き、さらに娘の目を軽く覆って、体を横に向けてスクリーンを直視できないようにしましたが、娘はスクリーンで起こっていることが気になっていました。会場の笑い声で、「なーんだ。これは怖いやつじゃないんだ」と思ったらしく、その後泣くことはありませんでしたし、続く可愛いシーンでは笑みも溢れていました。
・親の感想「世界ってこんなにおいしそうなんだ」
土星座の映画では2018年公開ということで、2025年1月現在では最新作。
最新作というだけでも、たいへん気になっていました。
見た目もとてもかわいい毛虫のボロ。思わず、ボロちゃんと呼びたくなっちゃう。
タイプど真中のキャラクターでした。
「世界ってこんなにおいしそうなんだ」
とても柔らかいくて脆い、キラキラの寒天が空中を浮かんでいて、それを口にするとボロがうんめー!という顔をするんですね。初めて浴びる朝日も、体に当たってみると栄養たっぷりの溶かしバターみたい。
生まれて、息をして、周りの大人の真似をしてみて、自分もうんちができて、なんか嬉しくて!というのが、まるで生まれたての娘を見ているよう。
生まれたての娘は、初めて肺呼吸をするので体もびっくりして、一生懸命泣いていたわけですが、その点ボロは世界はみんな面白くて楽しくて、1人でどんどん歩いていっちゃいます。
怖くて震えることはあっても、泣くことはない。いや、泣くという行動がない。心では泣いていたかもしれません。
大人のみんながいなくなってひとりぼっちになったときは、どこか寂しく見える瞬間もありました。ボロがひとりになったとき、感情がどう動いたかは観客の想像によるものとして置いておくとして、ボロ自身は、どうしようかと、冷静に自分の次の動きを考えているようにも見えました。
自分より大きい虫からは身を潜めなければならないんだと、ボロはしっかり身を隠すようにもなりました。
「喰われてたまるか!」って、「生きてやるんだ!」って、そんな姿を見せてくれて。
生き物の健康な心を見せてくれて。
「ボロ、かっこいいとこ見せてくれてありがとう」って気持ちです。
嫌だよね、怖かったら逃げたり隠れたりしていいよね、と。
立ち向かうかっこよさを否定するわけじゃないけど、勝てない怖い相手との付き合い方は作戦を立てて出直そう、と。
ボロちゃんは、可愛いだけじゃない。たくましくて、のびやかな毛虫でした。