「ビジネスを買う」という発想 — シリコンバレー流マインドセット
「だから、お金を稼ぐためにビジネスをひとつ買おうと思うの」
この一言を聞いた瞬間、私は思わず飲みかけの紅茶を吹き出しそうになりました。だって、彼女はまるでスーパーでりんごを1つカゴに入れるような軽いノリで、そんな大胆な発言をしてきたのです。
ビジネスを「買う」?
その発想、私の人生のどこにもなかった!
ビジネスを買うという衝撃の赤字解決法
この「ビジネスを買う」発言をしたのは、私がシリコンバレーに来てからできた友人のペルー人女性。
彼女は10年以上前からカリフォルニアへの移住計画を練り、1年前に夫が米国テック企業に採用されたことで、その夢を叶えた人です。元々ペルーでは弁護士をしていて、知的で行動力にあふれる彼女と、私は外国人向けのESL(英語クラス)で出会いました。
授業後に何気なく話し始めたのがきっかけで、毎週スターバックスでお茶をする仲になり、今では朝にふらっと連絡を取り合い、一緒にピックルボールをプレイする間柄です。
そんな彼女と先日、ピックルボールでひと汗かいた後、コート横のベンチで小休憩しながらお金の話になりました。
「ここ、本当に生活費が高いよね。子どもの教育費もこれからどんどんかかるし、お金がいくらあっても足りない気がする」と彼女がつぶやきます。
私も思わずうなずき、「そうだよね、私もパートの仕事を見つけて少しでも収入を得るのが現実的かなって」と共感を示そうとしたその時です。
「だから、お金を稼ぐためにビジネスをひとつ買おうと思うの」
彼女のその言葉に、私は絶句してしまいました。
「だって、自分でゼロからビジネスを立ち上げるより、既存のものを買ったほうが成功率も高いし簡単でしょ?」と、彼女は当然のように話を続けます。「失敗したら、また別のことをすればいいだけ。周りのみんなだって失敗してる。それがアメリカのいいところだよね」
日本的な思考とその限界
その瞬間、大袈裟ですが雷に打たれたような衝撃が走りました。
ここシリコンバレーでは、思考そのものが違うんだと。
私は日本で培った「失敗しないための準備や計画」にこだわり、失敗そのものを当然避けるべきものだと思ってきました。でも彼女は、失敗を「次に進むための通過点」として捉えているのです。
私は日本人的な発想の中で、まず真っ先に
「支出を抑える」
「時給の良い仕事を探す」
「副業でお小遣い稼ぎをする」
といったリスクを最小限に抑える選択肢を考えました。
でも、彼女は全く違う視点を持っています。
成功に不足しているのは語学力ではない
英語が私と同じレベルであっても、挑戦を恐れないその姿勢。
私が「英語力が足りないから現地の仕事は難しい」と勝手にハードルを上げ、挑戦しない言い訳を作っていたことが、恥ずかしく思えてきました。
本当に大事なのは、語学力じゃない。おそらく、物事にどう立ち向かうかという「マインドセット」なのです。
この経験を通して私は、自分の思考の枠を少しずつ広げていこうと思いました。現状を嘆くだけでなく、新しい可能性を探り、一歩を踏み出してみる。
その小さな変化が、未来を大きく動かすきっかけになるのかもしれません。
さて、これからどんな挑戦をしてみようか――
皆さんは、今年挑戦したいことはありますか?