「不思議な薬箱を開く時」
こんにちは、
「不思議な薬箱を開く時」です。
病の帝王と呼ばれている病気があります。
癌という、不思議な腫瘍です。
普通の細胞が、ある日突然、
とんでもない悪者になってしまう。
大昔は、なかなかなかった病気なのに、
現代になって、とても増えた病気もあります。
昔は難病、不治の病でも、現代では治癒可能。
病気と人間は、いつまで戦い続けるのでしょうね。
では、今日もお薬箱を開けてみましょうか。
「巨人になれる薬」
よくお伽話に登場する巨人は、
ただ、昔からそこにいた、という設定ですが、
このお薬を服用すれば、
普通の人間が、巨人になれます。
一夜にして橋を架けたり、
要塞を築いたり、城を建てたり。
そんなお話もありますよね。
魔法か巨人の手でも借りない限りありえません。
戦争の只中、勝利の鍵を握るのは、
最強の戦士ですが、
巨人がいきなり現れて、
押し寄せる軍隊を撃退するとしたら?
実は、このお薬。
聖書に登場するゴリアテも、
服用した結果、巨人になったのだと伝えられています。
まあ、若きダビデが投げた石の当たり所が悪くて、
あっけなく死亡しましたが。
それこそ、普通の人間が巨人になっていた証とも言えますね。
聖書と言いますのは、いくつもの章が、
それぞればらばらの時代に記されたもので、
編集によって一冊の教典になったわけですが、
あまり公表するわけにはいかない章もあり、
その中でも、薬や医療についての章は、
ほとんどがまとめられなかったそうです。
しかし、死海文書のように、
ふとしたことから発見され、
断章として保管される場合もあります。
このお薬の調剤法も、そういう経緯で発見されました。
あまり公にされてはいませんが、
エジプトで発掘されたコプト教の寺院跡から、
素焼の壷に入れられて保管されていた物が、
発掘されたのです。
アラム語で書かれたいくつもの調剤法は、
壺と共に、政府が回収し、学会に発表されましたが、
あまりに荒唐無稽な薬剤ばかりであったためか、
大きく取り沙汰にはされなかったようです。
その中のひとつである、巨人になれる薬を
紹介しましょう。
「巨人になれる薬」処方
シェメシェメト精油・・・・・・・・・小杓子1杯
白いマナ・・・・・・・・・・・・・・大5個
砂棗の実・・・・・・・・・・・・・・5個
聖餐の羊の血・・・・・・・・・・・・小杓子1杯
蜂蜜・・・・・・・・・・・・・・・・小杓子1杯
ビール・・・・・・・・・・・・・・・小碗1杯
ツバメの肝臓・・・・・・・・・・・・2羽分
ラタス・ニロティカ魚・・・・・・・・1匹
ウズラの胎卵・・・・・・・・・・・・5個
シェペネの種・・・・・・・・・・・・20粒
シェペネ精油・・・・・・・・・・・・小杓子1杯
諸注意
白いマナは、土に汚されない新鮮なうちに採集します。
甘い香りの強いものほど上質とされています。
ラタス・ニロティカ魚は、釣り上げるよりは、
魚網による捕獲をお勧めします。
かなりの凶暴性があり、大きさも子供大ですので、
釣り道具では、無理があります。
元来、肉食の魚ですから、
ラタス・ニロティカ魚にとって、
人間は、食事にしか見えませんので要注意です。
シェペネ精油を精製する際、
強い幻覚に襲われる湯気を出しますから、
マスクを忘れないように。
備考欄
どうして、巨人になれるのか?
今のところ、予測でしかありませんが、
猛烈な勢いで、細胞が増殖し、
骨、筋肉、筋、神経節が、
成長期のお子様顔負けの速度で発達するようです。
大昔であれば、多少の人数の巨人が、
人様に迷惑をかけることなく、
生きられるスペースはありましたでしょうが、
現代においては、それはかなり難しいでしょう。
想像を絶する辺境でさえ、
原住民が生きていることもありますから。
お薬を服用する前に、
その後の人生設計をしっかりとやっておいてください。
巨人のサイズは、かなり嵩張るものですから、
人里を遠く離れた秘境、僻地、辺境などで、
余生を送ることになります。
もちろん、薬を服用した仲間と共に、
それなりの楽園を築くと言うのも、
悪くないアイデアかもしれませんが、
年々増えつつある人口と、
精力的な開発の手は、巨人たちを放っては置かないでしょう。
普通サイズの人間たちの好奇な目に晒されながら、
社会の中で生きていくとすれば、
けっこうなストレスを抱え込むことになりそうです。
下手をすると、駆逐してしまおうとする者たちも出てくるかも。
昔と違って、建設重機も進化し、
粗方の力仕事は、機械が終わらせてくれるので、
就職先もままならないでしょうね。
あとは、巨人フェチの方々から、
保護動物のように守られつつ、
身体のサイズに似合わない細々とした生活を
送っていくしかありません。
戦争に参加したとしたら、
素晴らしく進んだ科学力の兵器で、
コテンパンにされる可能性大ですから、
戦場の働き口は、お勧めしません。
元々は、ただの人間ですから。
それが、大きくなっただけですので。
ええ、ただ、それだけなのです。