「不思議な薬箱が開く時」
こんにちは!
「不思議な薬箱が開く時」です。
摩訶不思議なお薬は、いかがですか?
効果は、保証付きです。
正しい薬剤と、正しい調剤を守れば、
世界に二つとない、不思議な薬を手にできます。
では、薬箱を開けてみましょう。
お薬番号・⑲
「人から見えなくなる薬」
透明人間になるわけではありません。
人から見えなくなるというだけです。
透明人間のように、
人にぶつかったり、
見えないだけで感触があったりもしません。
ここいらへんが、不思議ですね。
不可視であり、物理的存在感もなくなる。
まるで、幽霊のようにです。
実は、このお薬の歴史は古く、
アレクサンドロス三世の時代なのです。
かの若き大王が、連戦連勝を繰り返し、
はるか地平の彼方まで進撃できたのは、
不思議と神秘の理由もあるということなのです。
アレクサンドロス三世は、
その家庭教師であったアリストテレスから、
古文書に残されたさまざまな薬剤の資料を見せてもらい、
その中の一つが、この見えなくなる薬でした。
アレクサンドロス三世の初陣であった、
カイロネイアの戦いで、輝かしい戦績を挙げた際に、
この薬の功績もあったからとか。
では、調剤料をご紹介しましょう。
「人から見えなくなる薬」処方
ツバメの肝臓・・・・・・・・・・・・1個
ガデット・・・・・・・・・・・・・・30g
月長石の微粉末・・・・・・・・・・・20g
アブシント酒・・・・・・・・・・・・20㏄
バラニテス油・・・・・・・・・・・・30㏄
ベセジェ・・・・・・・・・・・・・・20g
セウネの実・・・・・・・・・・・・・3個
コロハマメ・・・・・・・・・・・・・20粒
注意要項
ガデットは、夜に採集すること。
アブシント酒と月長石の微粉末は、
玉にならないように、しっかりと混ぜ合わせましょう。
バラニテス油は、品質が落ちやすいので、
冷暗所に保存し、日光に当てないように気をつけてください。
セウネの実は、種が大変多いので、
採集して、影干しし、
保存しておくと便利です。
備考欄
このお薬の使い様は、
どう考えても、悪いことか、各国のスパイ活動用ですね。
もちろん、通常のカメラにも、
赤外線カメラにも、レーダーにも感知されません。
隠密裏に動くなら、まず間違いなく成功します。
証拠も残さない、何が起こったのかも、謎です。
まあ、しかし、調剤法を知るためなら、
当局から狙われてしまうことは必至ですね。
あなたがこっそり、
欲しい物を手に入れるために使用するにしても、
調剤料の入手は、けっこうな苦労です。
こうなりますと、国家的パワーに頼るのもありですかね。
手を尽くして、世界中の秘境に分け入ってくれるのは、
特殊部隊のみなさんにお任せするとして、
採集された調剤料は、最高の研究機関によって、
製薬されることになります。
あなたが、命懸けで、多大なる犠牲を祓い、
最高の幸運を使い尽して調剤を行い、
古の賢者を信じて飲み干す相当な勇気を絞り出さずとも、
危険性が、ある程度少ない服用が可能かもしれません。
そのための被検体も、しっかり用意してくれるでしょう。
まず、世界平和のために尽力されることはありませんから、
割り切る必要がありますが。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?