初めての大腸検査
大腸からのメッセージ受信
2024年3月、突然腸が全ての仕事を放棄した。
言葉では表現しにくいんだけども、腸が長年黙々と仕事をさせられて溜まった鬱憤を一気に晴らした!みたいな感じ。
それは数日で治ったんだけど「こんな激しい状態は何かのアレルギー反応かもしれない」と思った私は、健康診断でいつも行っている病院の内科をすぐに予約した。
症状を先生に説明して血液検査で39項目のアレルギー検査をした結果…
クラス3:スギ、クラス2:ヒノキ、クラス1:ガ (※ クラスレベルは最大6)
え?花粉症と蛾?蛾ってなによ?とは思いましたが、食物アレルギーは皆無。
となると先日の症状は「季節の変わり目で免疫力が低下したことによる一過性の…」と納得しかけたところ、先生が『最近は女性の大腸がんが増えていますし、年齢も年齢なので、一度大腸検査を受けてみたらいかがですか?』と背中を押してくださった。
「あぁこれはきっと大腸からのメッセージに違いない!」と思い、その場で大腸検査を予約。
大腸検査のハードル
無知な私はそれまで、大腸検査はハードルが高いと勝手に思い込んでいた。
私はここ数年、便秘も下痢も全くなく、日々の適度(過度?)な運動と良質な睡眠と規則正しい食事のおかげで快腸快便なのだが、若かりし頃はそれなりに生活が荒れていた。ゆえに腸も荒れていた。
20歳くらいの頃、消化器科で「一度大腸検査受けた方がいいですかね?」と先生に聞いたところ、「まだ若いので大腸検査はキツイと思う」というようなニュアンスのことを言われて、まぁ確かに恥ずかしいし、若い女性にはキツイのかなぁという印象をずっと引きずっていた。
が、しかし、それからすでに30年、「若い女性」だった私はそれなりに年齢を重ねてるし、検査方法も格段に進歩しているはず。
それでもやはり大腸検査にはそれなりに高い精神的なハードルがある。
そんなハードルを思わぬ形で低くしてくれたのは、友人の父の大腸検査の話だった。
彼女は奄美大島に住んでいるのだが、父親の大腸ポリープ摘出手術の付き添いで東京に来ている時に久しぶりに会った。自然とお父さんの大腸検査の話になってそこで私は驚愕の事実を知った。「大腸ポリープ手術はお腹を切らずに内視鏡で出来て、入院せずに日帰りで大丈夫」らしい。
え?今ってそんなことになってるの?
80歳過ぎた方でも日帰りできるくらい負担の少ない手術なの?
そう思った途端、私の中の「大腸検査のハードル」が崩れていきました。
大腸検査への不安
大腸検査への精神的なハードルは下がったものの、初体験となる大腸検査にはやはり大いなる不安がある。
・下剤でお腹痛くならないの?・下剤(腸管洗浄液)飲んだ後病院まで1人で行けるの?・行く途中にお腹痛くなったら?・紙おむつ履いた方がいいの?・検査自体は痛くないの?・鎮静剤は打った方がいいの?・リスクはないの?
いただいた説明書には、食べてはいけないものや飲んではいけない薬、当日の運転や飲酒の禁止等の注意事項の記載はあれど、私が知りたいこれらのことは特に何も書かれていない。
そこで、すでに3回大腸検査を受けている姉に検査の様子をLINEで聞いてみたところ、「(腸管洗浄液は)2リットル飲むのが大変だったが味は悪くない。だんだん下痢が綺麗な水になっていく。腸が綺麗になっているようで嬉しい。下痢の合間に病院に移動するのでハラハラしたけど紙パンツを履いたらもう怖いものなし!」というやけに軽快な返信が来た。
さすが我が姉!欲しかった情報はそれだよ。痛みに敏感過ぎるほど敏感な姉が下剤や腸管洗浄液でお腹が痛くなったとは書いていない。それどころか味と効果に言及している。
下剤や腸管洗浄液がそれほどツラくないことを私は確信したよ。ありがとう。姉。
大腸検査の前日
大腸検査の準備は前日から始まった。そう!食事制限。
前日は朝・昼・晩「クリアスルー」という名のレトルト食品を摂る。
私は普段から食事の量は少ない方だと思う。
朝はBASE BREADのレーズンパン、昼は抜き、小腹が空いたらミックスナッツやドライフルーツを食べて凌ぎ、夜はお肉と野菜と汁物。
だから3食で750kcalくらいの前日食でも空腹を感じることなく余裕で過ごせる!と思っていた。
が、しかし!私の考えが甘かった。腸に優しい「クリアスルー」には圧倒的に「歯応え」がなかった。私の満腹中枢は「食事の量」ではなく「歯応え」で満たされてることをその日初めて知った。
ちなみにクリアスルーの3食は、朝:たまごがゆ、昼:鮭がゆと肉じゃが、夜:シチューとクラッカー、というメニュー。
唯一クラッカーだけが私の「歯応え」に対する想いを満たしてくれた。
まぁ食事制限は普段の健康診断の時もあるし、翌日の検査が終われば好きなものを好きなだけ食べられるので、空腹には耐えました。
しかし問題は、前日夜に飲む下剤[センノシド]2錠です。
私は下剤に超敏感で、胃のレントゲンの後の下剤なんて1錠でも秒殺です。したがってこの[センノシド]とやらが強力だった場合、朝までぐっすり眠ることが出来ず、何度もトイレを行ったり来たりする可能性がある。いや。その可能性が大きい。と不安な気持ちを抱えたまま2錠飲んだのですが、結果、翌朝までぐっすり眠れました。
大腸検査当日
当日はもちろん朝から検査終了まで、水以外何も口に出来ません。
そして昨夜飲んだ下剤[センノシド]2錠の成果は、朝起きてすぐ、痛みも伴わずに普段通り、スッキリでございました! 下剤は恐るるなかれ。
さて、検査の時間は14時50分。それまでに腸管洗浄液[ニフレック]を2時間かけて2リットル服用することになります。
これが検査前の最後の難関です。お腹痛くならないか心配。
まずはそれを飲み始める30分前に、吐き気予防のために[プリンペラン]を2錠飲みます。
そして腸管洗浄液[ニフレック]の袋にまずは1リットル水を入れてシャカシャカと粉末を混ぜて溶かし、その後また1リットル水を入れて混ぜたら完成!
匂いはスポーツドリンクみたいでちょっと安心。常温で飲みにくい人は前の晩に溶かした液体を冷蔵庫に入れておいてもいいと先生が言っていました。
(冷水では溶けにくいので常温で溶かしてから冷やしましょう)
まぁ私は(お酒以外の)冷たい飲み物が苦手なので、常温の水、それも水道水で十分。
さて、準備が整ったところで、検査開始の5時間前、9時50分からいよいよ腸管洗浄液[ニフレック]内服スタート!
2リットル(2,000ml)を2時間かけて15分おき(8回)に飲むので、2,000ml ÷ 8回 = 1回250ml
幸いなことに、プロテインシェイカーが自宅にあり、それにはメモリがついているので、コップ1杯という曖昧な量ではなく、正確に250mlずつ、さらに15分置きにしっかりタイマーをかけて、いつお腹が痛くなるかドキドキしながら少しずつ飲んでいきました。
姉の言っていた通り味は悪くない。うっすーいスポーツドリンクみたいな感じ。ただ、ビール以外の飲み物を2時間で2リットルもグビグビと飲むのはちょっとキツかった。まぁでも飲めなくは、ない。
例によってすぐにお腹がギュルギュルするかと思いきや、飲み始めて1時間経っても反応がなくさすがに不安になってきた。
注意書きには1時間経っても反応がない場合は、腹痛・吐き気・嘔吐・冷や汗などの症状がないか注意してください。と書いてある。
1時間経っても反応がない私はちょっとやばいんじゃないか。と。無駄に室内をウロウロと歩いたりしてみる。1時間15分経過。まだだ。まだなんの反応もない。とその時!第一波がやってきた!ほっとした。そしてそれからは立て続けに第二波・第三波がやってきて私を安心させた。
ちなみにお腹は全然痛くなかった。こんなに痛くないなら「痛くないよ」って書いておいてほしいくらい痛くなかった。無駄に心配してしまった。
家を出る1時間前、つまり飲み始めてから4時間、飲み終えてから2時間後には、お腹の中の嵐はほぼほぼ去り、腸内は綺麗な状態で、平穏を取り戻していました。
あとは無事!?病院に辿り着けるかどうかのみ!
家から病院まではタクシーで15分。万全の準備をして家を出ました。
いざ!大腸検査!
家を出る1時間前には、もう身体中の水分が外に出てしまったみたいで、特にお腹がギュルギュルすることもなく、無事病院に到着。
受付を済ませ、待合室で待っていると、個室の更衣室に案内されました。
一応、念の為、先生に見られるかもしれないと思い、ヨレてないパンツを履いてきたのですが、早速渡されました「紙パンツ」
そりゃそうですよね。うん。そりゃそうだ。と妙に納得している私に向かって、病院のスタッフさんが『この紙パンツは穴が空いている方を後ろにしてお履きください』と笑顔で言い放った。
「あぁ、私はこれから大腸検査を受けるんだなぁ」と実感した瞬間でした。
膝くらいまであるゆったりした紙パンツ、その穴の位置を確認しながら履き、その上に検査着を着て、スマホとKindleだけ持って、いざ内視鏡検査スペースへ!
まずは前日からの状況をヒアリングされ、これまで繰り返し聞かれた注意事項(・ポリープが見つかったらその場で切除するが、大き過ぎたり多過ぎたりした場合は何もせず、後日入院施設のある病院を紹介すること・ポリープを切除した場合は1週間長距離移動や飲酒、運動が禁止となり、食事制限が続くこと・鎮静剤を使う場合は翌朝まで運転等はできないこと等)を受けます。
そして『何か気になることはないですか?』と聞かれたのですが、気になることが恥ずかしくて聞けずに、苦笑いをしていると、スタッフさんがツタツタとこう話し始めました。
『検査中はお腹に空気を入れるのでお腹が張った状態になります。苦しかったら無理をせず空気を外に出してください。鎮静剤でぼーっとしている状況なので、その時に空気以外のものも出てしまうと心配して我慢される方がいらっしゃるのですが、腸の中に残っているものは吸い取りながら検査を行なっていますのでその心配はありません。』
あぁ、なんて素敵な方なんだ。私が聞きたかったのはまさにそれ!それですよ!と両手を握って力強く感謝したい気持ちをなんとか抑えて、精一杯の気持ちを込めて言いました。
『ありがとうございます。もう何も気になることはありません』と。
さて、いよいよ検査に移ります!
私は鎮静剤を使うことを選んだので、検査中はウトウト状態でした。麻酔とは異なるので意識がないわけではないのですが、感触や痛みは全くなく、ただ横になって寝ているだけといった感じです。
なので、私の大腸にポリープが2個あって、それを内視鏡で切除して、大きめの方にはクリップをして、といった状況は、終わって先生から聞かされて初めて分かりました。
なんというか、検査を受けているという感覚も、手術をした実感もなく、自分のポリープの写真を後で見て、「おぉ」と思ったくらいで、非常にあっけなく大腸検査の幕は下りました。
大腸ポリープ切除手術の後
「綺麗な大腸でしたよ」と言われることを想定していたので、「ポリープが2個あって、1個は結構大きくて、2つとも切除しましたが、大きい方は止血のためにクリップで止めてます」と言われ、『あぁそうですか。2個も。ええ。クリップで。はい。』とボーッとした頭で説明を聞き、言われたことを何度か頭で反芻するうちに徐々にわかってきた感じでした。
1時間ほど病院のベッドで休憩し、頭がクリアになったところで、これからの注意事項の説明を受けます。
まず、食べたいものは食べれません。
大好きなナッツ類はそのカケラが腸に引っかかって傷口を広げる恐れがあるのでNG。納豆などの豆類も同様の理由でNG。食物繊維豊富な野菜や海藻もNG。大好きなコーヒーも飲めません。お酒ももちろんNG。
お酒は最近全然飲んでいないので、飲まなくても辛くないけど、コーヒーが飲めないのはキツイ!ということで食い下がって聞いてみたところ、カフェインレスならOKとのこと。家にはカフェインレスのコーヒーがないので早速買って帰りました。
食事で許されるのは「おかゆ・良く煮たうどん・プリン・豆腐・鶏のささみ」とのこと。切ない。
とりあえず、検査・手術を終えた日の夜は、固形物で腸を傷付けるのが怖くて、カフェインレスのコーヒーとプリンだけにしました。
そして運動は禁止です。ヨガやストレッチなどの一見激しくない運動も、お腹を捻ったりするとその刺激が傷口を広げる恐れがあるのでNG.
大好きなポールダンスも1週間は我慢です!
まぁ、手術直後から痛みは全然ないし、腸内は目に見えないし、自分の感覚なんて全く当てにならないから、今回ばっかりは言われた禁止事項を1週間守って安静に過ごします。
それに、食事や運動といった普段変えることのない生活習慣が、強制的に変わることで、新しい気付きもきっとあるから。
変化は常に楽しまないと♡
終わりに
自分だけは大丈夫だと。なぜか人は思う。
最新がん統計で、男女合わせた罹患者数も、女性のがん死亡数も「大腸がん」が1番なのに、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男女ともに2人に1人以上なのに。自分だけは大丈夫だと。なぜか人は思う。
早期発見・早期治療が大事だとわかっていても、「恥ずかしいから」「まだ早いから」「症状がないから」「忙しいから」と理由をつけてその日を伸ばす。
今回切除したポリープが良性か悪性かの病理検査の結果は1ヶ月経たないとわからないので現時点ではなんとも言えないけど、検査は先延ばししちゃダメ。気になった時がその時だと思うよ。
大腸検査なんてたいしたことない!毎日お尻見てる人にお尻見せることなんて全然恥ずかしくない!50歳過ぎたらもう先延ばししないで、とにかく1回大腸検査受けてみよう!ほんとたいしたことないから!
今年3月の私の中の腸の反乱が大腸検査のきっかけだったように、友の父の話が私に安心を与えたように、坂本龍一さんの自伝が私に勇気を与えてくれたように、大腸検査3回のベテランの姉が私の不安を払拭してくれたように、この報告であなたの大腸検査へのハードルが下がったら嬉しいです♡