『 物語を纏うような衣 』
6月26日
あきる野市にある「真木テキスタイルスタジオ」さんを初めて訪ねた。
西表島の石垣昭子さん、葉山の真砂三千代さん、そしてこちらのスタジオを主宰される真木千秋さんの御三方が共に作られる「真南風(マーパイ)」の衣にじかに触れたくて。
5月から始めた舞の稽古で、師がこちらの展示会を紹介してくださってはいたのだけど、 6月に入り、魂からの思いもよらぬ呼びかけで「お蚕さん」を手渡され、 にわかに生絹や染織への扉が開いてしまってから、 自分でも情報を集める中で、ふたたびこの展示会にたどり着いた。
都内にありながら、鬱蒼とした竹林や木々に囲まれたスタジオは、かつては養蚕農家だったらしい、いまのわたしには惹かれてやまないような環境。
マーパイの衣は、西表島やヒマラヤの麓で糸の原料となる植物を植えるところから始まり、それらから糸を紡ぎ、機にかけられ、藍や紅露や福木、ガジュマルや夜香木で染めたものを西表島の海にさらしてつくられた。
途方もない手間暇がかけられた、本物の衣。
どれもずっと見ていたいほど美しい。
わたしは、舞の稽古に使えればと、藍で染められたタッサーシルクの巻きスカートを買い求めた。
タッサーシルクは、野生の蚕が吐いた繭から採れた絹糸で織られている。
色や太さが不揃いだから、一枚の布になった時のゆらぎが美しい。
一生ものの買い物だ。
日曜までの滞在だったはずの石垣昭子さんにも思いがけず挨拶ができ、真砂さんにもお目にかかれて、わたしの密やかなお蚕さんの扉がまた少しだけ開かれた気持ち。
帰宅すると、我が家の黄金繭のお蚕様が、糸を吐き上蔟を始めていました。
いよいよ、繭が作られていきます。 真南風は30日まで。 http://www.itoito.jp/Exhibitions/06/06.html