プライシング大全#5_先進的プライシング企業に生まれ変わるための実践プライシングステップ講座
はじめに
前提知識
プライシング大全#1~4で説明した内容が使えることが前提です(過去記事を見直しながら実践してください)。
値ごろ感の正体
顧客が商品を購入するとき、そこには必ず「値ごろ感」があります。
この値ごろ感、相場感と言い換えてもいいでしょう。相場感(値ごろ感)はその名の通り「この商品は大体このくらいの価格だろうな」という感覚のことです。
たとえば、牛丼ならこのくらい、焼肉ならこのくらい、居酒屋ならこのくらい。といった市場感覚は皆さんの中にもあると思います。
この値ごろ感からかけ離れた価格を設定してしまうと、購買のために大変苦労することになります。
めちゃくちゃ高付加価値なサービスを開発したとしても値ごろ感の10倍以上のプライシングをしてしまえば、「私には関係ない」といった顧客が増えてしまうでしょう。
ソニー創業者も口癖にしていた値ごろ感
ソニー創業者の盛田昭夫さんの口癖も「大事なのは値ごろ感」だったと言われています。
1979年に発売したウォークマン、定価は33,000円でした。年次統計.comによると当時の大卒初任給が109,500円(現在換算145,952円)というから決して安くはありませんでした。
しかし、当初の原価見積もりは48,000円、33,000円で販売しても赤字だったのです。当時、33,000円でウォークマンを売ることを決めたときの言葉が「ソニー 盛田昭夫」の中で紹介されています。
「いいけど高い」と「高いけど、さすがだな」この似たようで全く違うニュアンス、これこそが重要です。当時、ソニーの工場で原型を組み立てていた若者が「これ、いいね」、「いくらで売り出すんだろう」と話していたのを聞いた開発責任者が「いくらだったら買うか?」と尋ねたところ「3万円ならすぐ買いたい」と答えが返ってきたそう。
そのことを盛田昭夫に伝えると3万円なら売れると確信し、「3万3千円」で売り出すことを決めました。当時秋葉原ではソニー商品が1割引で売られていたので実質3万円弱になります。
コストにプラスするのでもなく、「顧客が買いたくなる価格」から逆算してプライシングをしました。
「え?売るたびに赤字なのでは?」と思うかもしれませんが、生産台数が増えるにつれて原価は下がり、莫大な利益をソニーにもたらしました。
ウォークマンのプライシングが優れているわけではありませんし、現代ではあまりにも博打の要素が強すぎるので受け入れてもらえないと思いますが、「値ごろ感」の重要性が分かっていたことは間違いありません。
顧客から聞いた値ごろ感を信頼してもよいのか?
「スタディサプリ」も値ごろ感を追求したサービスです。
確かに、月額5,000円という価格は家庭教師や塾に通わせることを考えると全く悪くなさそうです。しかし、一向にユーザー数は増えません。
顧客から聞いた値ごろ感は5,000円だったにもかかわらず、実際の値ごろ感は全く違ったのです。
それもそのはず、当時世の中に月額5,000円のアプリはありませんでした。つまり顧客は頭の中で「家庭教師や塾に通わせる必要がないなら5,000円くらいは払っていいかも」と思っていたのですが、現実ではアプリに5,000円課金する習慣などなく購入をしなかったのです。
そこで、記事にもあるように動画配信サービスの相場観である980円にしたあとに広告宣伝をすると、会員数が急激に伸びました。
このように、顧客から値ごろ感を聞くにしても「正しい質問」というものが存在するのです。この値ごろ感を聞き出す「正しい質問」についても後程説明していきます。
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