ミスを逆手にとって顧客に愛されるサービスを作る秘密の方法_サービス・リカバリ・パラドックス
「顧客に損失を与えてしまったことが顧客満足度を高めるのにつながる」
一見矛盾しているこの真実に気付けるかどうかで"愛されるサービス"を作れるかが変わってきます。
「は?完全なサービスで顧客に損失を感じさせないほうがどう考えても良いんだが?」と思う人の方が多いでしょう。しかしこのnoteを最後まで読み終わったときあなたはこう思っているはずです。
「ミスしか勝たん!」と。
サービスを提供している限りミスからは逃れられない
経営者の皆様が昼夜完璧なサービスを提供しようとしているのは重々存じ上げております。おりますが、ミスが発生する確率をゼロにするのは不可能です。
大勢の命を預かる飛行機ですら墜落してしまうのです。少なくとも善良な企業であれば、ミスをわざと起こして、お客様に損失を与えようなんて考えていません。
しかし、現実問題としてミスは発生してお客様に不快な思いを感じさせてしまうのです。
サービスにおけるミスの例
例えば、飛行機オーバーブッキング(過剰予約)してしまい、乗りたかった便に乗れなくなってしまう。注文した料理が提供がされなかった。給仕のミスで服が汚れてしまった。などのミスはよくあることだと思います。
フリーランスの方であれば、納期が遅れてしまう、見積もりより請求額が高くなる、運用手順をミスってクライアントに損をさせてしまう、契約時に伝えていた売り上げ目標が達成できない、など。
このようなミスが発生してしまったとき、多くの方は顧客満足度が下がることにおびえてしまうのですが、真逆です。
ミスが発生したほうが完全なサービスの時よりも顧客満足度は高くなるのです。
なんでもかんでもミスをすればいいってもんじゃない(当たり前)
「そうか。ほな、バンバンミスして顧客に損失を与えまくるわ!おおきに。」という愚か者は居ないと思いますが、一応説明します。
何でもかんでもミスをすれば顧客満足度が高くなるわけではありません。
ミスをしたのに顧客満足度を高めるためにはいくつか満たすべき条件があります。その条件を説明する前に、具体例を提示して、ミスにより評価が上がることが事実である。と認識してもらいましょう。
ミスにより評価が上がる例:プロジェクト型の仕事
プロジェクト形式の仕事をしている人なら分かってくれると思いますが、「プロジェクトを炎上させない人」よりも「炎上を鎮火させる人」の方が社内での評価高くないですか?
前者は、事前にリスクを特定して、対処法を準備していたからプロジェクトが円満に進んでいきます。実際には難易度が高い案件だったとしても、進捗が順調であれば「良い案件だったね」と言われるのが世の常です。
しかし、炎上プロジェクトに投入されて鎮火するのが得意な通称ファイヤーマンは、「流石○○さんだね。」とプロジェクトを飛び越えて評価されたりするもんです。
どちらも凄いのですが、人間はミスをしない事よりもミスをうまくリカバリできる人に目が向きがちです。
ミスにより評価が上がる例: 高級ホテルのサービス
家族4人で高級ホテルに旅行したとある社長さん。大人はゆったりとした時間を楽しんでいるのですが、子どもたちは少し退屈そう。
子どもが好きなボードゲームでもして気を紛らわせるかとおもい、フロントに電話をします。
「もしもし、すみませんが、子供と遊べるようなボードゲームはありますか?」
「申し訳ございません。当ホテルではボードゲームのご用意をしておらず…。もしよろしければ、どのようなボードゲームをご希望でしたか?」
「あー、そうですか、最近子どもたちがハマっている、人生ゲームでもあればと思ったんですが。ありがとうございます。」
ダメ元で電話をしたので、特に不満を覚えることはありませんでしたが30分後、部屋にスタッフがやってきました。
「○○様、先ほどお電話いただいたボードゲームをお持ちしました。」
そう、先ほど電話を受けたスタッフがわざわざ購入して持ってきてくれたのです。もちろん、サービスなのでお金を払う必要はありませんでした。このサービスに感動した社長さんは、それ以降、旅行をするときはその系列グループがないか?をまずチェックしてからホテルを探すようになりました。
最初からボードゲームが準備されていた場合、今回のような感動を与えることはできなかったでしょう。ミスにより損失を与えていたわけではありませんが、リカバリによって顧客満足度を高めることに成功した例です。
いくら高級ホテルであろうと、あらゆる可能性を考えて、準備をしておくことはコスト的に不可能です。しかし、要望が来たときに対応すれば、コストは必要最小限で抑えられますし、リターンは準備していた場合より大きくなるのです。
どうですか?ミスを愛せてきましたか?
ミスにより評価が上がる例: クライアントのサービス障害を起こしてしまったフリーランス
フリーランスの田中さんは知育玩具をメインに扱うECサイトを運営しているクライアントのもとで働いています。
そこで、ECサイトの更新を担当していた田中さんですが、運用中のミスによりサイトが落ちてしまいました。
状況を確認した田中さんは責任を認め、すぐさま事情を説明し、必ず復旧することをクライアントに伝え、丁寧に謝罪しました。
田中さんは家に帰ることなくサイトの復旧のために尽力しました。無事にサイトを復旧した田中さんはもう一度、クライアントのもとを訪れて再発防止のためのマニュアルを作ったこと、二度と起こさないことを明言し謝罪しました。
最初は怒っていたクライアントですが、ミスが発生してから謝罪に来るまでの速さ、責任を認め真摯に対応したことを認め、田中さんの事をより重宝するようになりました。
ミスをしたのに顧客満足度を高めるための条件
まだまだ具体例は尽きませんが、ミスが起きた後の「リカバリ」にこそ顧客満足度を高める秘密が眠っていることは分かっていただけると思います。
問題が一切起きなかった時よりも、問題を美しく解決した時の方が高く評価される傾向があることは、サービス・リカバリ・パラドックスと呼ばれています。
BtoC事業においてサービス・リカバリ・パラドックスが存在することは広く知られていましたが、2018年にBtoB事業においても有効であるという論文が発表されました。
つまり、ミスをして評価を上げるためにはこのサービス・リカバリ・パラドックスを発生させる必要があるということです。
サービス・リカバリ・パラドックスを発生させる4つの要因
上で紹介した論文内ではB2B事業でサービス・リカバリ・パラドックスを発生させるための主要な要素は4つあると述べられています。
率先した行動
反応の速さ
補償
謝罪
これら4つの要素が一つでも欠けているとサービス・リカバリ・パラドックスの効果は期待できません。あなたが努力していようとクライアントの評価を取り戻すことはできないのです。
サービス・リカバリ・パラドックスの要因1. 率先した行動
たとえ問題の直接的な原因があなたになくても、仮に下請け業者や第三者が原因であっても進んで直そうとする姿勢が大事です。
障害対応は大変なので自分に原因が無ければ「しーらね」となってしまう気持ちは凄く分かります。しかし、自分に原因が無い時こそ大事です。
他人の障害に対して、自分ごとのように取り組み解決する姿勢を見せることで顧客は必ずあなたに対して報いようとします。
そして、障害の原因となった人に貸しを作ることができます。ビジネスライクなやり取りに貸し借りなんてあるのかよ?と思う方もいますが、紛れもなく”貸し借り”の精神は存在してます。
会社で上に行く人ほど、事業を成功させた人ほどこの感覚を持っています。
なので、問題が発生した時は自分に責任がなくとも進んで解決のために行動してください。
サービス・リカバリ・パラドックスの要因2. 反応の速さ
不具合が発生した時にちんたらしていると取り返しがつかないほど顧客評価が下がります。当然でしょう。障害が発生してるのに、「残業できないんで―帰りまーす。」なんて言っているフリーランスを誰が使いたいと思いますか?
問題を察知したらすぐに修復するように取り組んでください。
サービス・リカバリ・パラドックスの要因3. 補償
BtoBであればクライアント側が不具合発生時のコストをサプライヤーに請求できない場合も多いです。
商品の不具合等であれば返品・交換で対応することができますが、サービスの場合それも難しいです。クライアントは”何らかの補償”を求めています。
問題が発生したからと言って、全額返金したり過剰な追加サービスを提供する必要はありません。
しかし、サービス復旧のための無料で追加リソースを投入して解決にあたることをクライアントが望んでいることは多いです。後になって金銭的補償をしてもサービス・リカバリ・パラドックスの効果は期待できないことが多く、顧客の信頼を回復することはできません。
クライアントは”事後の”埋め合わせではなく”即時かつ無償の”問題解決を期待しています。
サービス・リカバリ・パラドックスの要因4. 謝罪
当然の事ではありますが、誠心誠意クライアントへの謝罪を行いましょう。礼儀が正しいのはもちろんのことクライアントへの気配りを忘れず、あなたがどれだけ後悔しているか伝わる謝罪をするのです。
不具合の発生原因と根本原因の解消のために尽力していること、再発防止に取り組んでいることを丁寧に伝えられればサービス・リカバリ・パラドックスの効果によってクライアントの好感度を上げることができます。
ある意味最も重要な要素が謝罪であり、効果的な謝罪メッセージについて知っていればミスを過剰に恐れる必要はなくなります。
効果的な謝罪メッセージでサービス・リカバリ・パラドックスを意図的に作り出す
とはいえ、私だけの経験から「これこそが効果的な謝罪メッセージだ!」というよりも、より一般的な根拠があったほうが信頼できますよね。
サポートしたつもりで身近な人にプレゼントして上げてください.