新トラッキングソフト「Animaze」はトラッキングソフトの覇者となれるのか
こんにちは。
普段私はトラッキングソフトについての記事の制作やしているので、今回話題になっているトラッキングソフトの「Animaze」についても語っておく。
まず結論から言うが、「以前のような一強にはならないんじゃないか」というのが率直の感想としてある。
・トラッキングソフトで一強になることの難しさ
Facerigが出た当時、Webカメ一本で顔認識を気軽にできるソフトは少なかった。今回はインターネットでの歴史を探る記事ではないので詳しくは探らないけれども、少なくとも現在ほど選択肢が沢山あったわけではない。でも今はfacerigの他にVTubeStudioだったりprprLiveだったり3teneだったりLuppetだったりVUPだったり、色々ある。その中でVの人達は自分のやりたいことであったりから選択肢を絞っていって、今使っているソフトを決めている。この強豪たちの中で一位になるのは本当に難しい。
・facerigの強みは「膨大なドキュメント」
それでもfacerigは様々なVTuber、特に2D勢に人気がある。それは2015年からリリース故の膨大なドキュメントの量にあると考えている。
基本的にFacerigでエラーが出たとき、不具合があった時はGoogleに聞けば日本語で対策方法が出てくるだろう。うまく動かない、エラーが出てソフトが固まった、○○をしたいといった漠然とした要望まで出てくるかもしれない。
一方で他のソフトはその症状が出ても日本語で対策が書いてあるかはわからない。もしかしたら自分が初めての例の可能性だって当り前にある。
例として自分がマニュアルを書いた「VUP」というソフトがある。これは顔認識が凄い良い精度のソフトだけれど、日本語での情報は皆無に近かった。
※上記はセッティングの画面。
この点でfacerigは大きい利点がある。普段VTuber立ち上げのアドバイザーとしても活動しているが、「あまりソフトに詳しくないが、安定して動くソフトが良い」と言われるケースは少なくない。
そういった時に自分はfacerigをお勧めしている。仮に自分がわからないエラーだったとしても、その後調べて解決できる可能性が高いからだ。
・Animazeというソフトでfacerig運営が失うもの
ではAnimazeを新しくリリースすることででfacerigの運営が失うものは何か。それは膨大にあったドキュメントである。Animazeはfacerig運営が作っているとはいえ、facerigの使い勝手とはまた変わってくるだろう。
また、AnimazeではFacerigと互換性がないことが事前に発表されている。これはfacerigに最適化されたモデルはfacerigからの移行に難航するであろうことを示唆している。Animazeを使用するためにモデルファイルを修正し、AnimazeEditorにインポートできるVTuberはどれだけおり、そしてそれをしようとするVTuberはどれだけいるだろうか?
前述した通りfacerigの強みは「膨大なドキュメント」にある。2020年現在、iPhoneを用いた顔認識等でfacerigの顔認識が一強なわけではない。それでもfacerigを使う人が少なくない理由は「安定性がある」、そして「facerigで事足りてしまう」からだと考えている。その人達が安定しているfacerigからまだドキュメントが少ないAnimazeにわざわざ移行するだろうか?facerigと互換性がないということはfacerigが競合だということでもあるのだ。
・Animazeでfacerig運営が得るもの
逆にAnimazeの強みは何か。それはfbx形式での3Dモデルインポートにある。
facerigは3Dモデルでの分野では相当苦戦したと言える。ニコニコという土壌で培われてきたMMDや、VRoid等で一斉に広まったVRMは相当数の工数で変換する必要があった。AnimazeではMMDやVRMの直接なサポートは行われていないものの、fbxでの対応(Editorにて確認済み)があるため、多少の工数はあるものの導入しやすくなるだろう。
また、VTuberではないもののカジュアルに顔認識を楽しみたい人はfacerig以上に楽しめるだろう。トレイラーを見る限りではAnimaze自身に簡易的なモデルカスタマイズ機能があるため、詳しく弄る必要がなく、プリセットでも良い場合はfacerig以上に楽しめる。
・総括
トラッキングソフト戦国時代になっている今、facerig運営が新しく出したAnimazeが容易に覇権をとれるか。これは大分厳しい道のりである。facerigとの互換性を切ってしまったため、Animazeはfacerigと戦う必要が出てきてしまった。facerigや他のソフトからわざわざ乗り換える価値をうまくアピールできるか、そこが大きいポイントになっていくだろう。
Animazeのホームページにある断片的な情報、そして既にリリースされているAnimazeEditorを触ってみた所感から書いているため推測が多くなってしまったが、かなり厳しい戦いになるのは間違いないと感じている。2DではprprLive、VtubeStudioといったfacerigリリース時にはいなかった競合と戦う必要があり、3DではLeapmotionとの相性がいいLuppetや顔認識が良いVUP、バストアップ配信に最適なVMagicMirror、そしてなんでもできるUnityやUnrealEngineと強敵がそろっている。これらの猛追を受け流し、Animazeが生き残るのは簡単ではない。続報を心して待ちたいと思う。
・参考URL
・自分の宣伝
トラッキングソフト使用感まとめ
顔認識トラッキングソフトVUP非公式日本語マニュアル