ぼざろファンは何をおいても公式ガイドブックを買え
ぼっちざろっく公式ガイドブック出てた。なんか長い名前のやつ。買った。よかった、とても。アニメ好きならとりあえずこれ買っとけばよさそう、これだけは買っといたほうがよさそう。内容的に初出のもんがどんだけあるんかはわからんけど、かなり濃密、満足。
特に監督の全話解説がよかった。あと、今さらやけど、構成のひとが脚本も全話やってたんやなーって。どうりで隙も破綻もまったくないはずや。監督・けろりらと川上雄介・吉田恵里香の功績が特に大きかったんかなーとなんとなく思った。でも何よりすごいのは声優含め「みんなだいたいおんなじようなことを言ってる」ことなんやってな。これはすごい、ほんとに。
アニメとしての『ぼっち・ざ・ろっく!』の軸っていうのは、陰キャとかロックとかそういうのを剥いていくと、「まいにち」・「とくべつ」の繋がり・繋がらなさなんかな、と思う。昔ながらのあれで言うとケとハレというか。
第一話がすごいわかりやすいけど、たとえば、後藤ひとりが「あ、登録者数3万こえてる」とつぶやいた矢先に伊地知虹夏がやってくる。虹夏ちゃんっていうのはその3万の登録者のうちのひとりなんやってな。でも、虹夏ちゃんと出会うこの日まで、ぼっちちゃんにとっては登録者数3万人っていうのはいわばかたまりでしかない。ぼっちちゃんが一番かがやいてたのは(居心地よくいたのは)いわば顔のない3万人のかたまりの場やった、この日までは。
で、虹夏ちゃんが他ならぬギターヒーローについて語るわけや。それも、上手さ・到達点だけじゃない。「わたしたちが見てないところで、たくさんたっくさん、ギターを弾いてきたんだろうな、って」。って、いうところを、語る。
ここで後藤ひとりは気づく。自分にとっての「とくべつ」を見せられる場が自分の「ふつうのまいにち」に支えられてるということ、そんで、そのことに気づいてくれてるひとがいるということ。かつまた、そういうひととの出会いが(たとえ登録者が3万いようが)とんでもなく有難いかけがえのないものであるということ。
でも他方で、そういう有難さにどっぷりでがんばるのはやっぱり疲れる。こわい・気が重い。「とくべつ」を「あたりまえ」にするにはすごいギャップを乗り越えなあかんくて、後藤ひとりはある意味そこのギャップにいつまでもつまづき続ける。
どこのインタビューみても、そのぼっちちゃんのままならなさをみんながわかってる。そのままならなさをひとごとでなく受けとめてる、つくってる。それがほんとにすごい。
あと、絵でいうと、メインの被写体が何かの奥にある、っていうのもぼっちざろっく的雰囲気にとって大きいなと感じた。視線が動くぶん飽きさせんし(構図として誘導がうまいのが前提やけど)、メインのものが画面中央にでっかくどーん!じゃないおかげで勝手に「そこに至るまでの背景」に目が行って想像力が働かせられるんやってな。
きららアニメの王道的な「足だけのショット」もそうやけど、それとはまたちょっと違う意味での、なんというか、匂わせというか、そういうのの新境地を感じた、見返してて。いやもちろんそういう構図じたいはずっと前からあったやろけど、使いかたとそのうまさという意味で。
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コンテ・演出を実際やったひとの解説みたいなのがみれるの、ほんとありがたい・面白い。個人的にややだるく感じてた9話・10話のあたりのこともわかって非常によかった。
でもやっぱり白眉は監督本人による「今日もバイトかー」の解説じゃないすかね。すべてがつまってる。わたしの「今日もバイトかー」論もどうぞ。
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最後に。
わたしはぼ虹派なんですが、以前にようやくぼ喜多の意味に気がついて、今回またみかえしてたら新たなぼ虹に気づきました。
第8話、台風ライブの回、虹夏ちゃんがぼっちがギターヒーローやと気づいたことを告げるシーン。
「この性格を直してから話したかったんです、特に、虹夏ちゃんには」って言ったあとの、虹夏ちゃんの一瞬みせるちょっとさびしげな顔。どういうことなんかなと思いつつそのままにしてたんやけど、やっと腑に落ちた。
このあとの虹夏ちゃんは気をつかってるんやってな、おそらく。自分の夢を語り終えて、ぼっちに話を振るまでは。「前に言ってたあたしの夢をここで教えるよ、ぼっちちゃんはヒーローだよ、だからぼっちちゃんももっと心を開いてくれていいよ」みたいな。
で、そのあとぼっちちゃんが語る「何のためにバンドをやってるか」のなかみが、虹夏の心を動かしてる。意地とか、見栄とか、恥ずかしいとか、そういうのだけじゃなくて、バンドを、4人をおもってるということ。そういう強さがありつつ、でも中退したいとか言ってしまう弱さもやっぱり当たり前にあること(そんで、どっちにしろ人生かけてるということ)。そのぼっちちゃんのさまに、虹夏は安心してる、気が抜けて、いっしょにいられる・やっていけるのを感じてる。おそらく。
ともすれば「ぼっちちゃんがいれば夢を叶えられるって確信したこと」は(5話から引っ張ってきた「本当の夢」をこの8話でようやく語ったみたいに)後になって語ってもおかしくないやろう。もしかしたら虹夏もそのつもりやったんかもしれん。
でも、ここで語った。ライブでぼっちのすごさを確信して、それだけじゃなくて、ぼっちの思いをここで聞いて、その胸の内を知って、「ぼっちちゃんとなら」って思えた。だからこそここで(あの笑顔で)それを語ったんやろうな、と思う。
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そういうわけで公式ガイドブックとてもよかった。さいきん買った本のなかでもすごいよかった。絵も文章も、なんか、たっぷりで。こんだけのもんが出たのはやっぱり売れてこそっていうのもあるんやろなと思う。いろんな意味でありがたい、ほんとに。
そもそも、解説・ガイド的なものがここまでのクオリティで出るってことが珍しいと思う。だから、これは、なんというか、ほんとファンにとって有難いもんやと思う。恩寵。好きなものについてのいいものは本当に得がたい。アニメ好きなら他の何をおいてもこれ買っていいと思う。それくらいよい、これは。
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