noteらしさを支えるデザインの力と、 その先にあるサービスの価値
これはSpectrum Tokyo Festival 2024の発表資料です。当日はゆったりと見てもらうために、メモや撮影などしないで良いよう記録として残しています。
-------👇ここから発表内容👇-------
こんにちは。note株式会社 執行役員CDO(Chief Design Officer)の宇野です。
このSpectrum Tokyo Festivalではご縁あって、一昨年から3年連続で協賛をさせていただいています。よろしくお願いします。
今日のテーマは「noteらしさを支えるデザインの力と、その先にあるサービスの価値」というお話。
雑にまとめると「デザインめちゃ頑張るとサービス価値が上げられるよ」っていう話です。これを具体事例含めてお話したいと思います。
改めて自己紹介。note株式会社の宇野です。noteには一昨年の2月に入社をしました。そろそろ3年になるところ。
デザイナーとしては20年くらいのキャリアなんですが、そのうちの半分くらいが事業会社でマネジメントをしています。
ただ、僕自信はめちゃくちゃプレイヤー気質つよめで、noteでも普通に僕がデザインをしているプロジェクトがありますし、友だちと作った会社ではアプリのデザインやコーディングもごりごりやってます。
結局はデザイン大好きおじさん。
さて、僕の話はこのへんにしてnoteの話をさせてください。
みなさんnoteって知ってますか?
意外とたくさんの人に使ってもらっていますね。日本のインターネット人口が1億強なので、だいたい半分くらいの人が毎月使っている計算。すごい。
逆に言うとまだ半分。倍にできる伸びしろだらけ。
さて、そんな中で今日はnoteというサービスにおいデザインがどんな役割をもっているのかをお話するために、まずnote「らしさ」の分解します。
これはnote社のミッションです。ミッションは「こうありたい姿、存在価値」なので。すべてはここから始まります。noteはミッションドリブンの会社なので、全社員がこれを意識し行動をしています。
これからもわかるように、僕らは明確なペインを感じている人のための会社じゃないんですね。あらゆる創作を通じてみんなが幸せになるんだと願っている会社。
そしてこれはnoteのボイスアンドトーン。「もしnoteが人だったらどんな人?」というnoteというサービスを擬人化したものです。
こんな性格を表すものから
身なりに関することまで。noteさんにならって僕も今日は少し遊んだ靴下を履いています。僕はこのフレーズがお気に入り。
noteはこれらから「noteらしさ」を導き出しています。その他にもミッションやブランドメッセージ、更には僕らが作り上げているデザインも、こういった要素から作り上げているものです。
今日はさまざまなnoteらしさの中から「スキ」という機能を紹介します。
これのことです
はい、すでにネタバレしちゃってますが、これはnoteだと「スキ」という機能です。
英語にするとlikeなんですが、日本語で「スキ」って言われるとちょっと趣がありませんか?
これはXで見つけたポスト。みんなドキドキしてるんですって。
とはいえこれってSNSではよく見かける表現ですよね。この機能を使って僕らが実現したいことはなんなのか?
まず読者、noteを読んだ人は記事にスキをつけます。
そうすると、通知やメールなどでこれを書いた人(僕たちはクリエイターと呼んでいます)にスキが届く。
つまり読者からは記事へのスキを送ったつもりが、間接的にクリエイターへとそのスキが届くんです。
スキを押すとこのようにメッセージがポップアップで表示されるようになっています。
つまり…これは間接的にさらにスキを返しているような状態になるんですね。相思相愛。
僕たちはクリエイターをエンパワーするためのプラットフォームなので、すべてはクリエイターあってこそ。読者とクリエイターを結ぶ場でありたいわけです。
読んでもらえるだけでも嬉しいんですけどね。スキをしてもらえると更にうれしいわけです。
でも、さすがにスキしてもらうたびにお礼メッセージを書くのは大変ですよね。返したい気持ちはあるけど……。
調べたところ、16万くらいのスキが集まっている記事もありました。さすがに返せない………
ここはプラットフォーとしてとても微妙な立ち位置なんです。
繰り返しですがそこは僕らのミッションに立ち戻ります。noteらしさの構成要素。「続けられるようにする」という部分に着目しましょう。
仮にたくさんのスキをもらって嬉しかったとしても、常に返事のコメントを返すことが義務化されていたら、返せなかったときに罪悪感がありますよね。でも返さないでもいいと言っても他の人は返してるし……となるとあまりそこの罪悪感は変わりません。
そこであらかじめメッセージを複数用意できるようになっています。画像なども利用可能。この中からランダムに表示されるようになっています。
これであればクリエイターの負担を最小限にしつつ、これによって読者とクリエイターの相互コミュニケーションを擬似的に再現しています。
やさしい。
さて、こんな素敵な循環を生んでいる「スキ」ですが、そうなるともっと増やしたくなってくるわけです。
はい、なのでユーザーIDを持っていない人でもスキができるようになっています。
これは正直リスクもあります。連続で押せないようにはなっていますが、それらを回避する方法を探す人もいるでしょう。
でも、そのリスクを追ってでも僕らにはやる意味がありました。
僕たちはクリエイターのためのプラットフォームなので、リスクを解消し安心安全な場所を提供するのは僕たちの責務だからです。そのうえで創作を続けられる環境を作るのが使命です。
さて、これが「嬉しい」という体験につながるのはおわかり頂けたと思いますが、それだけでは残念ながら事業は成立しません。それならばなぜこんな仕組みを作り大事にしているのかというキモの部分のお話にいきましょう。
このミッションを分解して考えてみます。
これは僕たちがグロースサイクルと呼んでいるものです。サービスの成長構造を簡易的に表したものですね。
クリエイターが集まり、コンテンツが増え、そうすると読者が集まる。その先でコンテンツが売れる or シェアされ認知が増える。そうなると盛り上がっている場所にはさらにクリエイターが集まる仕組みです。
これをミッションに合わせてみると、このように大きく2つに分かれます。「だれもが創作をはじめ、」と「続けられるようにする」
特に今回はこの「続けられるようにする」に着目します。
コンテンツが売れたりシェアされたりするのはどういう状態なのでしょう?
僕たちは「報酬がある」ことであると定義します。
報酬というと単純にお金のことをさしそうですが、僕たちは3種類を定義しています。金銭報酬/社会報酬/達成報酬です。
金銭報酬はその名の通りお金です。有料の記事が売れたりしたときにその対価が支払われます。
社会報酬は「社会に認められた」という証。読んで欲しい人に届けられた、シェアされたなどが上がります。先ほどから紹介しているスキもこの一つ。
クリエイター/読者/そしてnote、みんなが嬉しい仕組みとして循環が生まれているわけですね。
さて、ここで今までご紹介していない機能「チップ」がどのような報酬か考えてみましょう。これはいわゆる投げ銭のような機能。
記事の有料無料にかかわらず、クリエイターを応援するためにお金を送ることができます。
さて、3つの報酬のなかでどれに属すると思いますか?一見金銭報酬ですよね?
これはUXデザインではおなじみの「フックモデル」と呼ばれるサイクルです。より良い顧客体験から習慣化を生み出すプロセスとして、きっかけ→行動→報酬→投資という循環を描いたものです。
ここに「報酬」がありますね。ここでの報酬は「予測不能な報酬」であることが大切であるとされています。予測できないからこそ、その報酬を興味を持つことができるのです。
それではこれを、先ほどの「チップ」でも考えてみましょう。
「500円の記事が1つ売れた」場合と、「無料の記事で500円もらった」場合、どちらも収益は500円で等価です。一方で報酬の種類でいうと、無料の記事というのは収益に対する期待値は0円なので、予測不能な報酬が500円もらえた形です。
これは単純にもらった500円より数倍嬉しいと思いませんか?
つまりこれは無料で出したつもりがそれを読むだけでなく支持してくれる人がいたということの喜び。社会報酬にあたるわけです。
もちろん形式としては金銭報酬でもあるのですが、より社会報酬としての意味合いが強くなっています。
では最後に、デザインと事業がどのように融合していくかのお話
先ほどご紹介したグロースサイクルです。この図は循環図ですが、一番左に「クリエイターが集まる」というものがありますね。
僕らのようなUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)は、書く人が先か読む人が先かという鶏たまごのような話になりがちです。
しかし僕らはそこに明確に「クリエイターが集まる」ことが先であると定義しています。
そのため、note社のバリューの中にも「クリエイターファースト」というものがあります。
それを体現しているデザインの例をいくつかご紹介しましょう。
先ほどご紹介したスキを押したときに出てくるお礼メッセージ
これは読者の認識としては、記事に対するスキだということをお話しました。
でも僕らはクリエイターからすべてが始まると考えているので、この記事をどんな人が作り上げたのかを伝えたいという強い気持ちがあります。
そのためクリエイターメッセージとともに表示をしています。
記事のタイトルでも一緒ですね。
読者が知りたいことは、記事の内容とどれくらいスキされたかがメインでしょう。
でも、僕らはクリエイターが作り上げたものであることを伝えたいため、絶対にクリエイターの情報とセットで出すようにしています。
よく言われるユーザーファーストの考え方を、さらに特化させたものだと思ってください。だから僕たちはそれをデザインで体現できるようにプロダクトを作り上げています。
そこで売上とユーザー体験はどちらが大事かをCFOに聞いてみました。
ちょっとうちのCFOかっこよくありません?僕たちの強みはUXでありデザインだと言ったうえで、それを向上させながら儲けろ、と。
めちゃむずいんですが、やっぱりバランスではなく両方というのは本来のあるべき姿だと思うのです。
noteはよく「愛されている」サービスと言ってもらえるのですが、それは実は順序が逆なんですね。「愛されるように作っている」。
クリエイターの人が喜んで、読者の人が喜んで、さらにそこからクリエイターが生まれ創作が生まれる。
そこには「愛される」という感情が必須なんです。だから愛されるように作っている。
つまりは「愛される」という感情的価値自体は、noteの本質的価値につながっており、そこが源泉になっているからなんですね。
なのでnoteにおいてのデザインは愛されるための手法であり手段。そこを作り上げることが事業の土台であり価値であると考えているためです。
これってすごくないですか?
もちろんだからこそ大変なことはたくさんありますが、だからこそデザインの価値をみんなで考えることが求められている。PdMでもエンジニアでも、みんながそれを意識することで事業が成長できるモデルとなっています。
noteはデザインが大好きで、そんなデザインによって支えれているnoteが僕は大好きです。これからも皆さんに愛してもらえるサービスを作り続けていきますので、引き続きご愛顧よろしくお願いします。
最後にちょっとだけ宣伝
noteではnoteのデザイナーからの発信をまとめたnote.designというサイトを作っています。
noteで開催するイベントの紹介や、僕たちが公開しているイラストシステム[JOY]、そしてnoteデザイナーが厳選したおすすめマガジンなど、noteのデザインに関する様々な取り組みを紹介しています。ぜひご覧ください😉
本日はご清聴ありがとうございました。