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ユーザーが欲しいと思うものと、本当に欲しいものとのギャップの正体

こんにちは。note株式会社CDO(Chief Design Officer)の宇野です。

突然ですがみなさんはこんな会話したことありませんか?


Aさん「ランチなに食べたい?」
Bさん「なんでもいいよ」
Aさん「じゃあラーメンどう?」
Bさん「いや、ラーメンは気分じゃない」
Aさん「😫」


なんでもいいって言ったじゃん!って思うわけですが、Bさんウソをついてたわけではありません。ここで大事なのはBさんの感情変化が起こっているということ。

Aさん「ランチなに食べたい?」Bさん「(和食もいいしイタリアンもいいな)なんでもいいよ」

この時点ではBさんは本当に「なんでもいい」と思っています。ただ、その「なんでも」は自分が想像できた範囲でのなんでもを指しています。

Aさん「じゃあラーメンどう?」Bさん「(ラーメンは想像してなかった)
いや、ラーメンは気分じゃない」

そしてBさんはラーメンという選択肢を用意されて初めて「今日はラーメンの気分じゃない」と気がついたのです。

しかし、なぜこんなことが起こるのでしょうか?

極論ですが人間はあまり合理的な思考をしていません。一方で合理的に判断をしたいとも考えており、そこに今回のような行動の矛盾が表れます。

この記事ではそんな合理/不合理を利用して、どんな提供価値をユーザーに届けると良いのかという話をしていきます。

欲しい機能No.1はなぜ使われないのか

以前担当していたとあるサービスで、ユーザー数千人に「どんな機能が欲しいか」というアンケートをとったところ「UIのカスタマイズ機能」が一番でした。対面でインタビューをしてみても欲しいと多数の方が答えられます。

そこで簡易的な機能を実装しテストリリースしてみたところ、数%の人にしか使われませんでした。

まさしくこの罠です。

こちらのツイートの根本は「ユーザーは自分が本当に欲しい物を知らない」なのですが、今回特に掘り下げてお話をしたいのは近い場所にある疑問で「欲しいと思っているのはなぜか」です。

欲しいのは「できた結果」ではなく「できる状態」である

ここで出てくるキーワードが「自律性」。人には勝手に与えられたものではなく、自分で選択したものに強い満足感や幸福感を得ます。

自律性とは,自分の行動は自分自身が自発的に行なっていると感じられることを意味し,自分が自分の行動を律していて他からの強制や指示・命令で行なっているのではないと感じられることである。

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つまりは「自分で選んだのだ」という実感を得たいだけで、選んだ結果を求めているわけではない場合もあるということ。

話がつながって来ましたね。前述の「カスタマイズ機能」はまさしくこの典型です。「カスタマイズした結果」が欲しいのではなく「カスタマイズができるという状態」が欲しいのです。

なのでカスタマイズ機能自体の満足感は高く、使っていない人までもがこの機能を歓迎するというちょっと変わったことが起こります。逆に使われてないからと機能を無くそうとすると、使っていない人からも不満の声があがります😅

これはまさしく「自分がカスタマイズできる」状態を取り上げられたからです。自分の制御下にあるという実感が心理的安全性につながっていたため、それを奪われると不安になるのです。

なので僕はカスタマイズ機能を付けるときには巻き戻しが難しいため細心の注意を払いますし、追加するときは使われるためではなく満足度を上げるための機能として割り切ってしまうことが多く、使われなかったとしても訴求をムリには行いません。

オススメ記事はなぜ満足ができないのか

これもニュースサイトなど記事を掲載するサービスでより多くの記事を読んでもらうための施策としてとてもよく起こる議論です。

パーソナライズ

ニュースサイトなどではAIがユーザーに合わせたおすすめ記事を勝手に表示してくれます。過去の閲覧傾向などから予測しています。

カテゴリ選択

事前にどんなカテゴリの記事が好きかを選択してもらい、それに沿って記事を表示します

普通に考えるとカテゴリ選択をするのは手間ですし、目的のカテゴリを見つけられるとは限りません。そして昨今のレコメンド技術はだいぶ賢くなかなか良い記事をすすめてくれます。

しかしパーソナライズにはちょっとでも意にそぐわない記事が出れば不満のお問い合わせをいただき、任意のカテゴリではあまりそういったことは起こりません。

これはなぜでしょう?これも先に説明した自律性が関連します。

パーソナライズは「勝手にサービス側が進めてきた」ものであり、自分の制御下にありません。ですからそこにちょっとでも違和感があるものが出てくると不満が起こります。

この記事読もう→なんでこの記事がオススメされるの?

一方でカテゴリ選択の場合は、「自らが選んだカテゴリの記事がでる」ので多少意にそぐわない記事が出ても「自分が選んだカテゴリのせいだ」と納得してしまうのです。

このカテゴリが好き→選んだカテゴリの記事が出てるな

とはいえユーザー任意のカテゴリ選択に頼っていては、なかなかその興味関心を広げることができません。自身で正しく自分の興味があるものを理解できていなかったりその時思い浮かべられない人が多くいるのも事実で、結局はこの組み合わせをしていくサービスが多いことでしょう。

初心者あつかいしないで!

さて、ちょっと違う話をしましょう。みなさんはゲームをしますか?最近のゲームはより広い層に遊んでもらえるようにするため、開始時に難易度を選べるようになっています。そこにも自律性を利用した工夫が見られます。

  • 普通モード

  • 簡単モード

操作になれていない人向けに「簡単モード」は用意されています。さて、そこですんなりと皆さんは簡単モードを選択しますか?僕はちょっと抵抗があります。「普通」をできないことが悔しく感じてしまうのです。あからさまな初心者扱いは人間の心理的に敬遠されます。しかし初めてのゲームで「普通」が難しいのは当たり前でこちらを選んでもうまく操作できません。そうなると自分は普通以下なのかと思いそこで挫折してしまうこともあります。

そこで最近発売された星のカービィ ディスカバリーでは非常にうまい工夫がされていました。

ワイルドモード はるかぜモード
星のカービィ ディスカバリー

こういったゲームに苦手意識がない人には、実はワイルドモードもそこまで難しくはありません。でも「ワイルドモード」と言われたらもしうまくプレイできなかったとしてもワイルドからしょうがないと思えませんか?

このちょっとした伝え方の工夫で、適切な選択をできなかったときもゲームのせいではなく自分がその選択をしたためだと思い、気持ちよくはるかぜモードに切り替えることができます。(きちんとプレイ中でも切り替えができるようになっています)

ゲームではこういう心理をうまく利用した工夫があちこちにされています。こういった考え方はいろいろな表現で応用が効くので、関連書籍を読んでみるのもおすすめです。


このように様々な場面で人は自分が納得した状態にありたいという心理が働くため、時として不合理な行動をとってしまうことがあります。ただ、これをうまく利用することで期待値をうまくコントロールし気持ちよく利用することができるようになります。

合理的な判断が常に受け入れられるとは限りません。人間の不合理な部分をきちんと理解してい気持ちよく納得して使ってもらえる工夫をすることが大事です。


もっと話を聞いてみたくなりましたか?

noteではこれからこういったデザインの考え方をより強めていくために、絶賛デザイナーを採用中です。

もしちょっとでも興味を持ってくれた方は👇こちらから!ざっくばらんにお話しましょう。


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