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クックパッドが目指す、これからのデザインとプロダクトのあり方

これはCookpad TechConf 2019で発表した資料です。映像アーカイブなども公開される予定ですが、せっかくなのでこちらでも公開をしたいと思います。

-------👇ここから発表内容👇-------

こんにちは。デザイナーの宇野です。こんにちは。

「クックパッドのデザイナーの宇野」なんて知らないぞという方が多いかと思いますので簡単に自己紹介をさせてください。

CEO室所属 デザイナー統括マネージャーをしております。

ずっとUIデザイナーです。受託制作会社やソーシャルゲームの会社を経てヤフー株式会社に入社。ヤフーではYahoo!ニュース、Yahoo!知恵袋、Yahoo!乗換案内、Yahoo!検索などのデザイン責任者/デザイン部長をしていました。

このプロフィールのハイライトはここ。「2019年2月」、つまり今月です。

この数字なんだと思いますか?17営業日、僕が正社員としてクックパッドに出社をした営業日数です。みなさんとの差分はこの17日間だけです。

そういった意味で非常に純粋な目線でのクックパッドに対するお話と、いっぽうでCEO室所属のマネージャー職ということで事業目線の話と、色々なグラデーションのお話をさせてもらえればと思います。

まず、簡単に会社の話を。クックパッドって聞いて何の会社だと思い浮かべますか?

この三択。僕もレシピの会社と考えていたのですが、クックパッドのコーポレートミッションとして掲げているのは「毎日の料理を楽しみにする」です。

それらを実現するために国内ではこんな事業を展開しています。OicyというIoTプロダクトやAlexaスキル、Cookpadの冠を付けていないプロダクトもあります。

また国外に目を向けてみますと、4,000万人の方にご利用いただき、71カ国/26言語での展開をしています。入社するまでこんなにちゃんと国際展開をしていることを知りませんでした。

この背景画像は僕が夜な夜な71カ国をマッピングしたんですが、知らない国もたくさんありました。地図の一番左側にあるのは「モーリタリア」。名前は聞いたことあるけどどこにあるのか全く知りませんでした。。学びたくさん。

さて、なぜこんなにも多くの事業をやっているのか。

それは、先程ご紹介した「毎日の料理を楽しみにする」というコーポレットミッションを叶えるためです。

現在のクックパッドというサービスの成果はこんな感じ。非常に多くのユーザーの方、世帯にご利用を頂いています。レシピサービスとしては日本一。すごいことです。

しかし「料理の会社」としてみたらどうでしょう?

料理ってレシピを見ている時間だけですべて完結しているものでは無いはずです。

これは簡単に一日の料理に関する体験を書き上げてみました。簡単に上げてもこんなにあります。「作る」「買い物」などはレシピとの親和性は高いですが、実際に食べているときや片付けをしているときはどうでしょう?これも一連の料理の体験のはずです。

また、ライフステージの中での視点でも色々なものがあります。出産を期に離乳食を作るようになったり、お子さんの食育を考えてみたり、近所のスーパーで売っていないいい食材を買いたくなったり、インスタ映えする写真の撮り方や健康に気を使った食事作り、こだわりの料理器具や、自信の料理のレベルアップ。更に広く世界に目を向けると廃棄食材の問題なども料理の体験として考えられるかもしれません。

そう考えると一回のご馳走を作る体験も良いのですが、せっかくならば毎日のワクワクと楽しみをちょっとずつ積み重ねてもらいたい。毎日の料理を楽しみにするというのはそういうことだと考えています。

そんな体験を提供するために、今クックパッドに足りないと感じていることを考えてみました。

これは決して「できないこと」ではなく「あえてやっていないもの」もあるのですが、あくまでここは入社後間もない空気を読まない視点での発言です。

まずプロダクトを通した横断設計。やはり新しいサービスがどんどんできている状態ですので、結果としてどうしてもバラバラになっていってしまうので非常に悩ましく思っています。

次はプロダクトとしての意思がデザインに現れていないこと。どうしても今いるユーザーさんと一緒に成長をしてきたプロダクトなので、その分いろいろな要望に答えていき、サービスとしての意思がなかなか見えなくなってしまう。

アプリの体験がWeb的、これは若干直接的なdisではありますが歴史あるサービスにはありがちな話です。Web的な体験というのが悪いという意味ではありませんが、チャレンジできるところはしていきたい。

そして最後に会社としてやるべきことと、サービスとしてやることがあやふやな部分がある。「会社としてのクックパッド」と「サービスとしてのCookpad」は別物ですが、どうしてもそのあたりのメッセージが混同されてしまいます。今新しいサービスがたくさん出てきている中では、これが障害となってきます。

もっと「クックパッドっぽさ」が欲しいというのが今の僕の思いです。

それでは「クックパッドっぽさ」をどのように作っていくのか。これは簡単にできるようなものではありません。

これはTHE ILLUSION OF LIFEというサイトからの引用したアニメーションです。これのアニメーション何に見えますか?これはディズニーが生み出した「キャラクターに命を吹き込む12の法則」の一部です。ただの立方体や直方体が動いているだけのに、ディズニーっぽさが見えますよね。

そういった意味で大切なのは見た目だけではないだろうと考えています。オレンジページdancyu、どちらもレシピを掲載していますが全く違う見た目です。これは当然ターゲットの違いであり、それを最適化していった結果のものです。レシピという切り口でも色んな見せ方がある。

クックパッドの例を見ていきましょう。左側はCookpadアプリ、右側はKomercoのアプリ。デザインテイストは異なりますがどちらもクックパッドが提供しているサービスです。それぞれのストーリーがあり、それを実現するためにこういった違うテイストのUIになっています。

じゃあ何をもって横断体験を向上していくのか。まずは期待値に対するふるまいを共有するのが良いのではないかと考えています。

見た目は違っても、操作していて困った時のフォロー、共通の操作感、同じ機能の場合は同じモチーフを用いるなどちょっとしたことでも「クックパッドのアプリって安心するな」という体験はしてもらえます。

そして何よりもレシピの信頼性や料理に対するワクワク感、これが欠けてしまってはクックパッドのサービスとは言えないでしょう。言語化するのは非常に難しいものではありますが、僕らはこういったものを大切にする会社となっていきます。

それではこれらを実現するためのクリエイターのあり方はどのようなものになるでしょう?

まず僕のポリシーとして「デザインはデザイナーだけでやるものではない」というものがあります。これは広義の意味での「経営のデザイン」のようなものは当然として、狭義の意味でのUIデザインのようなものもこれに含まれます。

まず前提として、テクノロジーやデザインは課題解決のための手段であり武器です。この武器の強さや種類が多ければ多いほど、その解決する手段が増えていきます。逆にこれが足りないと良いソリューションがあったとしても解決できない。そのためには日々の鍛錬が必要になるわけです。

そしてそれはいちばん大切な、安心安全なサービスにつながっていくことでしょう。

この図、もう最近はあちこちで見られるようになりました。5,000回くらい見てる気がしますが大切な話なので5,001回目のご紹介です。

Business・Technology・Creativeの頭文字を取ってBTCモデルなどと呼ばれるものです。この三要素の視点をもった人材が今求められているというモデルです。

個人的にはこういう線でつないだものよりも、実態としてあまり境界の無いものなのでこういう図の方が好きですね。

そのうえで更に矢印を追加してみます。BusinessとTechnologyの様々な要件を、Creativeというスキルを使ってユーザーさんに伝えるということをしています。

ここで大事なのはデザイナーが最後頑張っているということではなく、様々な人たちのアウトプット、出口をCreativeという形で伝えているということです。ここは非常に大事。会社としてはデザインを出口として考えているが、ユーザーにとってはこれが入り口です。

この入り口が悪いと、その先にどんな良い体験を提供しても体感してもらえない。だからこそそのデザインはきちんと正しくその裏側までの魅力を伝えるものでなくてはならない。デザイナーが考えたものではなく、そのプロダクトに関わる全ての人たちの代表としてアウトプットをデザイナーがしているだけです。

会社中のあらゆる人たちの思いと情熱をデザインという形で伝えているといえるでしょう。僕はこの人たち全員と一緒になってデザインを作っていきたい。むしろそうしないとデザインというのはできないものだと考えています。

これを達成するための社内での取り組みを紹介します。

Design Sprint、これはGoogle Venturesが開発した手法です。5日間でプロトタイプを作り上げユーザーテストまでしてしまう。

このSprintの中では役割はあっても職種は関係ありません。全員で話し合って議論してコミットをしていくわけです。

Figma、これは僕は入社してから初めて使いましたが、ここにあるようにデザインツールというよりもコラボレーションツールとしての色が非常に濃く出ています。非デザイナー職の人にも作る過程から見てもらってどんどんコメントをもらえる。そのコメントはSlackに通知がきて気軽に確認することができる。結果としてデザインとして完成するまでに様々な検討が済んだ状態となります。そうすればあとは実際にユーザーさんに見てもらうことに注力ができる。

こういった色々な手法やツールが生まれ、既にデザインは全員で作り上げる時代になってきていることを感じます。少なくともクックパッドはそういう会社でありたいというのが僕の強い思いです。

どんどんデザインに関わることを増やしてい行きたい、デザインを作り上げるという意識をみんなに伝えていきたい。

毎日の料理を楽しみにする。これをデザインの力で支えていく。これが僕のクックパッドで成していくことの意思表明であり、締めの言葉とさせて頂きます。

ご清聴ありがとうございました。



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宇野雄 / note inc. CDO
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