キリンジ「君の胸に抱かれたい」各論B
概論だの各論だのとうるさいですよね。いかにも法学部卒っぽい。法律系の科目は概論から各論3コマ分の計4期に渡り授業展開されていくことが多い。つまり2年かけて専門科目を詰めていくわけですよねー。一体何のお話を?各論Bと題して、すっぽかした2番Aメロの歌詞2行分から主観全開で解説してまいります。
「旅の途中で僕らはみんな迷子になって/''夢の島''まであとどのくらい?」
まずキーになるのは「みんな」です。人類全体の問題として迷子になるのだと歌ったところに妙アリ。おそらくは恋愛模様だけに留まりません。人生は旅であると申します。わざわざ二重引用符を付けて「夢の島」だなんて超超超意味深です。アップテンポに踊らされ素通りしがちですが、こうした細かな仕組みが盛りだくさんの楽曲。ゆえの各論B。
「ネオンの屋根から/君の名を大きく叫びたいんだ」
急に下世話な話になりますけど。主宰は官能小説とかそういう類のものに手を出したことがないのですが「ネオン」というのは歓楽街いや風俗街を表す比喩表現として多く用いられるようです。「水をかぶろう 裸になるよ」と続く裏サビとも整合性が取れてきますよね。純愛ソングに影が。「牡牛座ラプソディ」も思い返せば嬢をイメージして書かれた楽曲との噂もある。
「身に憶えのない思い出にしがみついていても/虚しくなるばかり」
どんどん雲行きが怪しくなってきました、いわゆる裏サビと呼ばれるパートに差し掛かります。堀込高樹氏の他に誰も真似できない類稀な才能、そんなメロディにそんな歌詞が乗っかっちゃうの?!という驚きがあります。足早に瞬く間に終わってしまう裏サビ、何事もなかったかのように始まる間奏。「掠めた星の数を競うのかい?」こんなフレーズ聞いたことありません。
完結編・各論C
残り2ブロックなんだから一気にやっちゃえばいいのに。残念ながらお時間です。各論Cはおそらく本編短め感想戦長めでお茶を濁す作戦の模様です。とはいえ「身に憶えのない思い出」というのはやにそっけなく響くフレーズですよね。それまでの雰囲気とは打って変わり、関係の終焉を予感させる。明暗を分けたのは「ネオンの屋根」すなわち歓楽街の誘惑でしょうか。
官能小説ではありませんから子細に記すことは控えますが、動物的本能的な感情に逆らい生き続けることはできません。これだから人生は難しい。男女関係のもつれはこうした部分が発端で起こるもの、写実主義を貫いた高樹氏ならではの視点/感性が表れているとも言い換えられそうです。「君の名を大きく叫びたい」というのはなるほどそういう意味だったか。
2020年9月12日
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