良い座談会って何?調べてみました!
いつからかわかんないですけど、評論集の最初って座談会やりがちですよね。『ユリイカ』とか『現代思想』はそんなイメージがありますが、最近の批評同人誌もだいたい最初に座談会やってます。実際今回の文フリでわたくしが買った評論集は、ほとんどすべて冒頭で座談会をやっていました。
しかし調べてみると、座談会とひとくちに言ってもやってることは多種多様で、色々な座談会があることがわかりました。そこで今回は、座談会にはどんな種類があるのか、そして座談会をするにあたって気をつけるべき点はなんなのかを考えてみます。
①仲間内でワチャワチャするやつ
座談会といえば、まず仲間内でワチャワチャするやつですね。同人誌の主テーマについて、緩めのくくりでざっくばらんに話すやつです。自分が買ったやつだと『もえけん‼︎』とかはこれですかね。これのいいところは、深夜のかたらい感です。オタクが友達と好きなことを喋ってるのをラジオを聴くように読者は読むのですね。
これは座談会を読んで知識を習得するというよりは、ほんとにラジオ感覚で垂れ流しって感じですよね。知識の習得は中身の評論・エッセイでやればいいわけであって、わざわざ座談会でそれをやる理由ある?(おっと『ブルーピリオド』のセンセーが出てきたようだ)ってなりますから。(とはいえ勿論身につく知識がないわけではなく、普通に参考になる話も多いですが、知識の伝達はあくまで副次的だという話です)
冒頭にわざわざ内輪座談会をやるのは通過儀礼みたいなもんでしょうね。これからイカしたメンバーを紹介するぜ!って意味もありますし、オレら執筆陣はこのノリでやるけど、ぽまえらついてこられるかな?ってふるいにもなっているのです。これは同人誌って内向きなメディアの特性を活かしているともいえます。
気をつけるべきこと
だからこそ、気をつけるべきは内輪感がでなくなるような人選でしょうな。知識や熱量が浮いている人がいると輪に入れてない感じで胸がキュッとしてしまうこともあります。
下手に知識人をお招きしても全然喋りたいことを喋れないとか普通にありますからね。この形式を取るなら初対面の人や語れる話のレベルに差がある人は呼ばない方が無難でしょう。
②界隈の年長者に昔話を聞くやつ
界隈の年長者にちょっと昔の話を実体験ベースで話してもらうやつもあります。年長者の経験は伝承されるためにありますからね。こういうのは普通にためになります。自分が買ったやつだと『ブラインド』とかですかね。
座談会として良いところは、あくまで経験ベースで話すので、若手も話に乗れるってところです。知識よりも経験、ということで哲学対話とかに近い形式でしょうか。経験ベースで話が進行するけど、ところどころで対話が深まると良い座談会といえそうです。
気をつけるべきこと
テーマ設定とか前準備をすればそんなに失敗しなさそうですが、強いて言うなら徒弟感が出るのには気をつけた方がよさそうです。
それを避けるためには、年長者側が「知識」の伝達ではなく「経験」の伝達だという意識を持つことかなと思います。知識の伝達となるとどうしても文壇ごっこ感がでちゃいますから。
とはいえ知識と経験はそう簡単に割り切れるものではありません。経験だって知識ですからね。そこはやっぱり年長者の振る舞い方(あるいは司会による振る舞わせ方)によるんじゃないでしょうか。ペニスを押し付けるように知識を押し付けるのではなく、あくまで「経験の伝授」なんですよ〜というポーズをすることは、意外と重要かもしれません。
それで、若手側も議論に加わることができたら熱いです。そのためにも年長者は「知識ではなく経験」というポーズを取ることを意識しましょう。
③界隈の年長者に好き勝手喋ってもらうやつ
とはいえ、年長者(この呼称が適切かは分かりません)が知識を楽しそうに喋っている座談会も需要はあります。若手もそういう姿を見て自分が目指すべき水準を測ったりしますから。座談会という形式を取ることで、読み手も「ナチュラルにこういう話できるレベルになればいいんだな」と実感できますからね。自分が買ったやつだと『外伝もにも〜ど』とかですかね。
先ほどの例が「経験」の伝達なら、こちらは「知識」の伝達という感じでしょうか。それが内輪の座談会の形式を取ることで、押し付けがましくなくなるし、若手も素直に憧れることができまからね。知識は押し付けたらいいってものでもないのです。
気をつけるべきこと
気をつけるべきことはそんなにないですが、やはりこちらも知識水準の差には気をつけた方がいいでしょう。最初の例の場合は、知識がある人を上手く扱えないことに注意しろと言いましたが、この場合だと知識水準が低めな人を聞き手に置くと、途端にペニスを押し付ける座談会になってしまうので、注意が必要です。
年長者の自覚が出てきたなら、若手に知識を押し付けるのではなく、知識を内輪で楽しそうに喋っている姿を若手に見せつけてやりましょう。
◯まとめーーそもそも、なんで冒頭で座談会するの?
いかがでしたか?今回は読んだ本を良い座談会の例として紹介しましたが、逆に言うとこれに則ってない座談会は気をつけた方がいいかもしれません。調べてみたところ、知識ある人がうまく喋れてない座談会とかたまにありますしね。
若手だけなら①、若手が年長者を呼んで②、年長者は③というのが王道の3パターンといえそうです。マァあえて分類するのもどうかと思いますが、破るにしてもまずはこの型を意識するのがいいでしょう。
とはいえ好きなことを楽しそうに語り合ってる姿を見るだけで読者は楽しいですから、あまりナイーブになっても仕方ありませんね。ただし、座談会の形式や人選で「好きなことを語れない」あるいは「語ったけど押し付けがましい」になってしまうこともあるので、そこには多少気を遣いましょう。
そもそも同人誌のページ数増加が問題になっている中で、どこもかしこもそれなりのページ数(それこそ座談会だけで十分「薄い本」になりうる)をかけて座談会をやることの意味は考えても考えすぎることはないでしょう。文字起こしも大変(?)でしょうしね。
座談会ではなく著名な方へのインタビューを冒頭に載せる(『もえけん‼︎』はどっちも載せていますが)同人誌も増えてきましたし、座談会のこれからに目が離せませんね!