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3.逮捕〜取り調べ 留置所

逮捕の目的と検察への送致、その後の勾留期間

刑事事件における逮捕は、証拠などから刑事事件の犯人である可能性が高いと判断された場合と、逃走や証拠隠滅を図る可能性がある場合の身柄確保を主な目的として行われます。逮捕されると警察署へ連行され、簡易的な取り調べがあり48時間以内に釈放か検察への送致かが判断されます。この間に家族などが面談を希望しても、弁護士などの弁護人となるもの以外は会うことができません。できれば逮捕前に弁護士に相談しておくと、突然の逮捕に戸惑うことなく対応できるでしょう。
48時間以内に検察へ送致されると、検察は24時間以内に勾留か釈放かを判断します。ここでの釈放は無実ということではなく、犯行を認め証拠が揃っており、身元がはっきりしていて逃亡の可能性がないなどと判断された場合です。起訴するかどうかは、釈放後に検察で検討され続けます。一方で勾留となれば本格的な取り調べが始まります。勾留場所は警察署内の留置場または拘置所で、期間は10日間です。更に10日間の期間延長が認められた場合は最大20日間になります。


検察へ送致されまずは10日間の勾留が決定された。
私は目標を決めた。
取り調べでは話せる部分は正直に話し1日でも早く取り調べを終わらせることだ。
最大20日間の勾留後の保釈を狙うためだ。
起訴は免れない。
彼らの知っていることは全て話し、知らないことは黙秘することに決めた。

その日の夜、私選弁護人が私に会いにきてくれた。
予め弁護士にも連絡しておいたからだ。
弁護士には全てを話しており今後の対策、取り調べでの話し方や不利にならないやり方を聞いた。
聞かれてもないことをペラペラ喋れば当然不利になるからだ。

忙しい1日が終わり留置所に戻り、冷えた少量の夕食を食べ終えヤンとゆっくり話しをすることができた。

彼はオーバーステイ(不法残留罪)で逮捕され中国に帰ることになるみたいだ。
それまでに窃盗とかの容疑もあるから、長い期間この留置所にいるらしい。
彼の取り調べはほぼ終わってるから、毎日来る日も来る日も暇ですることがないとのこと。
筋トレをしても本を読んでも、時計を見れば針は進んでないとのことだ。
むしろ時間が戻ってるまであるという無茶苦茶なことも言ってた。
それ程にも留置所は暇な場所なのだ。

"差し入れ"

衣服、現金、書籍、手紙等を差し入れることができます。 ただし、警察署の留置場や拘置所といった留置施設での事故防止の観点から、さまざまな制限が設けられています。 衣服では、ひも付きの物、フード付きパーカー、ハイソックス等は差し入れできません。
その他、内容や冊数などに制限がありますが本や写真も差し入れることができ、手紙を書くための便箋、家族からの手紙、現金なども可能とされています。 反面、靴やタオル、シャンプーや歯ブラシなどは、いくら自分のものを使いたいと言っても差し入れることができません。

そんな可哀想なヤンに僕は少し難しい小説を貸してやった。
彼は漢字があまり読めないと言って返してきたが、感謝されたのでよしとしよう。

そしてヤンは僕に賭博の事やカジノのこといろいろ聞いてきた。

どうやって儲けてたの?いくら稼いだ?カジノ経営してたの?罪は重いの?すぐにはここを出られないの?彼女はいるの?中国には遊びに行ったことある?でたらまたカジノやるの?雇ってよ!そういえば日本人は中国人が嫌いって言うけど本当にそうなの?僕は日本人好きだよ!
諸々永遠に話してきたので、私は全ての質問に対して丁寧に答えてやった。

彼は言いたい事を言いたいだけ言って、最後の質問の答えを聞く前に満足して眠りについた。
私もまた明日からの取り調べもあるので眠りについた。

取り調べ

取調室は正方形の小さな部屋にコンクリートで覆われて鉄格子のついた小窓がある部屋だった。
そこに机が1つ。目の前には事件を担当する刑事。
その右斜め後ろにはメモを取ってる部下が座ってる。

さっそく取り調べが始まった。
1日の利益はいくらだ?稼いだ金はどこにやった?他にも開催してる場所があるのか?ケツモチ(暴力団)との関与はあるのか?客の名前を全員教えろ。等いろいろ聞かれた。
もちろん私はやんわりと
1日の利益?
自ら開催してないので分かりません
稼いだ金は?
買い物や旅行に使ってしまいました」本当は仮想通貨に変えてる
暴力団との関与はあるのか?
一切ありません」本当にない
客の名前を教えろ
開催してた訳じゃないのでわかりません
全ての質問にうまく答えたつもりでした。

弁護士と打ち合わせした通り話すことは話し話さなくてもいいことは話さない。
そのスタイルでいきました。

ある日、看守から裁判所からの手紙を受け取りました。
10日間の期間延長通知を。

「でしょうね!」
私はそう思いながら、同室のヤンにそれを伝えた。
ヤンは喜んでた。私がいなくなったら話し相手がいないからでしょう。
相当自分勝手の彼ですが、私も気が合い話しもできたのでよしとしました。

そんな日が続き、取り調べでの調書も終わり、左手の人差し指で指印を押し、検察との取り調べも終わり、そこから待ってるのは地獄と言っていいほど保釈までの暇な時間だ。

留置所の1日の流れ
1日の流れは、午前6時起床、午後0時昼食、午後5時夕食、午後9時就寝となっており、特別な事情がない限りは、これらの食事時間内や就寝時間後には取調べは行われません。 入浴は、1週間のうち夏場で概ね2回、冬場で1回あり、洗濯は週1回程度留置担当者が行い、留置人みずからが行う必要はありません。

ちなみに彼らは私を
1.賭博開帳図利幇助
2.組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
この2つで起訴にもっていく流れだ。

そして起訴された。

「でしょうね!」
そう思いながらも弁護士に保釈申請を頼みました。
あとは残り6日間というこの永遠とも思われる地獄の時間をどう過ごすかだ。
ソワソワしながらもヤンに保釈を気付かれないようにするために平常心で臨んだ。
(私がいなくなるまでの寂しさカウントダウンが始まるからだ)

とりあえずヤンには相変わらず難しい小説を読ませている。
彼もゆっくりだが着々とページが進んでいる。
私は保釈された後の今後の流れや動きを考えながら日々過ごしていた。

保釈申請も無事通り多額の保釈金も支払い、いざ房の中でソワソワしながら待ってると
看守が「ソワソワ!保釈だ。準備して出てきなさい。
と。

そーっとヤンの方を見た。
彼の顔は笑顔だった。
寂しさを隠した偽りのない笑顔だった。
薄々気付いてたらしい。彼は寂しそうにも笑顔でこの20日間は楽しかったよ。外に出ても元気でね。
と言ってくれた。
私のソワソワ感が彼にも伝わってたと思う。
私もヤンに、身体に気をつけて元気でね。と。

そしてその日のお昼過ぎに私は無事保釈されたのだった。

保釈までの流れ

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