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嗅覚の哀愁

すこーしずつ、
戻ってきてくれたよ、嗅覚が。

気管支を痛めてからしばらく、
どういう因果関係か、鼻がまったく効かなかったのだ。

その日々の味気ないこと、味気ないこと。


匂いがしない、ということは
いつもなら不快を覚える場面でも平常心で過ごすことができてノンストレス。

だけどそれと引き換えに、
香り、風味、味全般、
何も感じられない無味乾燥気分も強いられる
ほんとに味気のない、ものだった。


だからいつもの電車の中で
ふいに匂いを感知した帰り道。
駆け足で駅から家に帰宅した。


娘の髪に鼻をうずめる。
乳幼児特有の、やわらかく甘い香りがする...!

夫が鼻先でウイスキーの栓を開けてくれる。
うんうん、分かるわかる!


喜び勇んで食卓につき
ゴハンの姿かたち、匂い、食感、味のすべてが
全方位一致するミラクルを存分に味わった。

そしてあらためて実感したのは
嗅覚の哀愁。

目を休めるためのアイマスク、
音をやわらげる耳栓はあれど
鼻を休ませてくれる製品は、ない。(よね?)
 

鼻はいつだって無防備で
ふいに出くわす匂いは選びとれないから
いとも簡単に
人の顔をほころばせも、しかめさせもする。


悲喜こもごもな日々を生き抜く鼻さん達、
今日もほんとに、おつかれさま。

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