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「先生の授業受けて面白かったんで、大学で日本史やりたくなりました」
なんて、言っていただけることが私にもたまにある。
しかし、ここで注意が必要なのは、大学受験日本史が「面白かった」としても、直ちに「史学科に向いている」というわけではないことである。
(それを了解した上で史学科に進んだ卒業生もたくさんいる)
そもそも、大学受験日本史というのは、大学で受ける高度な教育・講義についてこられる能力があるかを図る一つの要素(=受験科目)でしかないのであって、ガクモンとしての歴史学とはまた違ったおもむきがある。
*無論、その教授内容は「歴史学」というガクモンの成果であるから、上で述べたことは大学受験日本史が面白かったから歴史学に興味を持つ可能性を排除するものではない*
で、私は、その「違ったおもむき」とは、(他の教科・科目もそういう要素があるように)いろいろなガクモンの入り口を覗き見ることができるバリューセットのようなものである点にあるのだと思う。
私が私のうけもつ学生によく言うのは、この授業の「どこがおもしろかったか」によって興味のある分野は違うのだから、進路に迷っている人はそのヒントにしてね、ということである。
例えば、この記事に書いたようなことが面白いなと思えば考古学に適性があるかもしれない。
藤原道長の「望月のうた」の解釈の話が面白ければ日本文学が向いているかもしれない。
今日たまたま現役生の授業で扱った「永仁の徳政令」でいえば、その仕組みや条文に興味をもてば民法学や法制史が向いているかもしれない。
以前、この記事のような話を(もちろんフルスケールではないが)したら、刑(罰)法に興味をもったという学生もいた。
レキシは人が創ってきたものである。
各時代各地域の「人」たちがその苦悩した結果として、制度や文物や事件などがあるのだから、現代のわれわれが学ぶべきことは必ずある。
このような立場で、上にあげた以外にも、天武・持統朝の話で杉田敦『境界線の政治学』を紹介したり、室町時代の税制のところで岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』を紹介したり、江戸時代の遊女の話でジェンダー論の話をしたり、いろいろとしゃべらせてもらっている。
どこか一つでも学生に「引っかかる」ところがあれば、その学生にとって意味のあるものであれたのかな、と思う。
18歳の私が、そうであったように。