詩『風とともしび』
ともしびが消えた……
細くて白い煙が一本
まっすぐ空に向かって昇っていく
ともしびが、消えてしまった……
そんなつもりじゃなかった
少し強く吹いたけど
消すつもりなんてなかった でも
ともしびは、白い煙になってしまった……
こんなに辺りは暗かったのか
こんなに寂しい場所だったのか
ともしびはぼくに
光と温かさを届けてくれていたのか
こんなにも優しかったのか……
ともしびがいてくれたから
ぼくは自由に空を飛べた
見たり聞いたりしてきたことを
みんなに話せたんだ
ぼくは風
なのにもう空を飛べない
悲しい音しか出なくなったし
一人で飛ぶなんていやなんだ
「まだ消えてないから……」
途切れそうになりながら
ともしびは、ぽっ、ぽっと
小さな丸い煙の粒を上げていた
待ってて!
ぼくは今までで一番速く吹いた
街路樹の落葉を拾い
たき火の火を少し分けてもらい
ともしびの元へ戻った
お願い!
もう一度灯って!
大切な、大切なともしびなんだ
お願い……
ぽっ……
辺りが明るく浮かび上がり
ぼくの心にも明かりが灯った
温かい気持ちが広がっていくよ
空を風が吹き渡り
心に灯りがともり続ける
ねぇ、ぼくたちの話の続き
書いていこうよ
聞いてほしいことを
たくさん集めてくるからさ